幕間:村近くにて ~過去を思う性~
自分の中から遥か昔に失われた力を感じて、振り返る。
「動」の力。人を生かし、万物全てを進めるために必要な、命そのもの。
何かに引かれるように真っ直ぐに通り過ぎていくので、彼を追うのを一旦止め、力の行く先を共に目指してみた。
音もなく滑りゆく生命の根源を、同じように滑るように走って追いかける。
便利な体。空腹も、睡眠も、距離も、どんな現象も亡霊となった自分を留めることはできない。
私をただ、引き留めるのは――――
然程の距離を行くこともなく、彼のいる村から近い道で「動」の力は止まった。
道には、皺と爛れの酷い人間が倒れていた。
『あなたは……』
皺に埋もれた顔。目だけがぎらぎらと凄絶に輝き、時折苦しげにぱくぱくと口が動く。
声は出てこない。死にかけて、もうそうするだけの余力がないのだろう。
死に逝く人間から、出ていくのなら分かる。なぜ、「動」の力はこの人間の元へとやってきたのだろう。
『もう一度、逢いたい人はいる?』
「動」の力の最後の一片が、人間の中へ入っていく。
掠れて聞き取れるかどうか、そんな微かな声が空気を揺らす。
「とおく……はなれた……かれに」
『ええ』
「あいたい……」
深く刻まれた皺を埋める、大粒の涙が地に落ちた時、その人間の意識は何処かへと消えていった。
女はそれを見届けて、歪んだ笑みを浮かべる。
瞳には、優しさが湛えられているというのに。
『叶えてあげましょう、その望み。まぁ、あの村にその彼がいれば、という仮定はあるけれどね』
ねむねむ……奈々月です。
そろそろ、話を先に進めようと思いつつ、書き溜めたストックが完全になくなってしまったのでひやひやしております。
しばらくは別の話を更新しているかもしれません……遅筆なので。
できるだけ頑張って更新できるよう、気合い入れて励みます!
それでは、おやすみなさいませ……。