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幕間:山中にて ~仇を愛し~

その人は、驚愕と恐怖に目の玉が飛び出そうなほど見開かれた骸を、複雑な面持ちで見下ろしていた。

老いた今でも、奪われた悲しみをありありと思い出しては憎悪し。

だというのに、遺された身として長く生き、死に逝く悲しみを知り。

恨みと悲しみは、やるせなくこの老人の心を焼いているのだろう。


「おまえは野盗だった。財を奪うだけではなく、家族を殺した。どれほど酷い目に遭わせたかったか、きっとおまえには分かるまい」


女は、そんな老人を離れたところから見ていた。


「仙人だなんてなぁ……。おまえは、ただ罪から逃げて、山へ籠っただけだというのに。役人から、遺された家族から、逃れようとここにいただけだ」


ひとりぼっち、最後の家族の双眸から、ぼろぼろと涙が溢れ、骸を濡らしていく。


「一人で、死んだんだな。仲間からも離れて、こんなところで……。生きていたいと願ったところで、あの恐ろしい気配の流れ人からは、逃げられんかったろう」


孤独に死んだ骸に、自分を重ねたのか。

ただ一人、死に逝く孤独を思ったのか。

その想いの内は、もう長くない彼にしか、分かり得ない。

涙をぐ、と拭うと、老人は骸に背を向けた。


「ざまをみろ」


その声は震えていた。


老いた男はその場を去り、女はその一部始終を見届けて、目を閉じた。


「どんなにか憎くとも、ずっと心を占めていれば、それは愛情と一緒ね。想い続けることと、憎み続けることは、ただ方向性が違うだけ……」


女の脳裏に、亡霊の集まるあの村で出会った、男の姿が浮かび上がった。こちらを認識しているのに、ひどくつれないうえ、自分の肉を纏わぬ姿への恐怖すらなかった。

ここにいるのに、触れることはなくとも、存在しているのに、彼にはこちらへの興味や好奇心といったものがなかったのだろう。だからこそ、恐怖もない。


「貴方もいつか、孤独を理解してくれる?」


望みの薄い願いを口にする虚ろな表情は、その身にあまりに似つかわしく、儚かった。

ねむねむ……奈々月です。

ちょこちょこと更新を続けて、だいぶこちらも書き溜まってきました。

ただ……書けば書くほど、なんともなんともな主人公ですね。

もう2回ほど更新したら、過去話も織り込みつつ、話を前へと進めていけたらなぁと思っています。

幽霊ヒロインの過去は、幕間で少しずつ披露していこうと思ってますので、更新をご期待ください!

なぁんて、知りたい方はいらっしゃるのかなぁ……?


それでは、おやすみなさいませ……。

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