幕間:道中にて ~血よりも濃し~
「可哀相にね。あなたの母上は、殺されてしまったわ」
片方の手首から先が、粉になるほど容赦なく砕けた男の骨に、語りかける女が一人。
「血など繋がっていなくとも、実のご子息と瓜二つだと、戦場で拾い上げてくださったのに。あなたの母上は、遺し言を訊かれて、応えてしまった」
ざらり、と髪を揺らして女は悲しげに顔を伏せる。
「看取ってくださったのに、蘇らせようとしてくださったのに、いいえ、あの方はただそばにいてくださったのに……殺されてしまった」
母親と男、ふたつ、重なれど触れられぬ頭蓋骨を、慈しむような手付きで撫でていく。物言わぬ相手にも見えているのかと疑いたくなるほど、優しい微笑を浮かべて。
「母上はこのように撫でてくださったのですか?」
ひとつ、ふたつ。その手がピタリと止まり、砕かれた手指の骨に重ねて呟く。
「きっと悲しむでしょう……それは、あなたも」
絡め合うように指を曲げて、ふと女は立ち上がる。
唇に柔らかな、笑みが浮かんでいた。
だがそれも、嘲笑めいて細められた双眸が、全て裏切っていたのだが。
引き続き、ねむねむ……ではない、奈々月です。
実は、前回の更新に引き続きでこちらも書いてます。どうりでねむねむではないわけですね。
さて、またも幕間です。しかも短い。
元々、最初書いていたときは主人公のみで、しかも短編集といった形にしていたので、そこに幽霊ヒロインを加えて、幕間をつけたのが今作品です。
なので、注釈的な回になってしまっている……かも。はい、作者の力不足ですね。間違いないです。
幕間を読めば、遺し言がより面白く!なるように頑張りたいと思います。
それでは、おやすみなさいませ。