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こんな夢を観た

こんな夢を観た「弁当工場」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/09/03

 始業のベルが鳴り、わたし達従業員は持ち場に着く。先頭も最後も、霞んで見えないほど長いラインだった。

 各自、一斉に箸を持つ。カシャカシャと小気味のいい音が建屋に響いた。モーターがうなり、ベルト・コンベアーは滑らかに動き始める。

 ここは「弁当工場」だった。と言っても作る方ではない。わたし達が食べるのだ。

 コンベアーに載って、弁当が次から次へと流れてくる。それを片っ端からつまんでは、口に放った。

「今日はハンバーグ弁当からかぁ」どこかで誰かのつぶやく声がする。


 「ハンバーグ弁当」ではあるけれど、副菜に玉子焼きやウインナーも入っている。

 初めのうち、わたしは玉子焼きばかりを食べていた。大好きだったし、一口サイズに切ってあるので、取りやすいのだ。

 しばらくすると、前の席の親切な人が、ハンバーグを切り分けて流してくれるようになったので、玉子焼き、ハンバーグ、玉子焼き、ハンバーグ、と交互に食べることにした。


 弁当の中の何を食べようがかまわないのだが、一口は必ず手を付けなくてはならない。

 玉子焼きもハンバーグも飽きてくると、ご飯を取ったり、たくあんを1切れ囓ったりして、どうにか持たせる。

 備えつけのお茶もあるが、あまり飲みすぎると食が進まなくなるので控えた。

 休憩時間までは、席も立てず、ただひたすら食べるよりほかないので、みんな真剣だ。


 弁当は、「日替わり」ならぬ、「時替わり」だ。1時間毎に、違う弁当がやって来る。ピンポーンとチャイムが鳴って、新しい弁当に切り替わる。

 わたしは、最後のハンバーグ弁当からウインナーを抜き取り、ごくっと飲み込んだ。

 今度の弁当は「のり鮭弁当」だ。鮭は小骨が多いので、誰もが敬遠する。わたしの所までたどり着く頃には、のりばかりが剥がされ、ほとんど白飯にされていた。鮭はそっくり、残っている。

 班長がメガホンを口に添えながら回ってくる。

「みなさん、面倒がらずに、ちゃんと鮭も食べてくださいね。お願いします」

 功を奏したようで、鮭が少しずつ減ってきた。時々、きれいにほぐされ、小骨まで除いてある。魚嫌いのわたしでさえ、思わず箸が伸びた。


 〔ピンポーン、パンポーン〕

 

 最初の休憩時間だ。ベルト・コンベアーが停止する。

 わいわい、がやがやと賑やかに、休憩所へ向かう。

「むぅにぃちゃん、これ食べる?」持ち場の近いパートのおばさんが、手さげからカップ・ケーキを出す。

「あ、いただきます」わたしも、今朝、駅前で買ってきた栗蒸し羊羹をテーブルの上に載せる。「ここの店の羊羹、とってもおいしいんですよ。みんなで食べましょう」


 みんなで持ち寄ったお菓子は、たちまち山のように積み上がった。

「いつもながらすごいわね。これだけで、お菓子屋が開けちゃうんじゃない?」

「ほんと、大した量だわぁ。しかも、どれもみんなおいしそうっ!」

「でも、こんなの、あたしたちでペロッと平らげちゃうんだよねえっ」

「うんうん。さっき、あれだけお弁当食べまくったくせに、我ながらびっくりだわよ」

「でも、まあ、甘い物は別腹だしさ」

「そうそう、別腹、別腹っ」 

 

 〔ピンポーン、パンポーン〕


 休憩時間の終わりだ。

 さあ、昼ご飯まで、また頑張って食べくらなくっちゃ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぶっとんだ意外性!今までの中でもすごかったです。 [一言] 某バラエティ番組で、流れてくるお寿司を一瞬で食べなければならなかったのを思い出しました。それにしても強靱な胃袋の持ち主ばかりで羨…
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