でんぱ/赦されない
/ でんぱ
ぱぱぱぱ
でんぱ、ぱぱぱ
あなたにとどいてほしい
べつにあなたじゃなくてもいいけど
ぱぱぱ
でんぱ、ぱぱ
だれかを妨害したいの
それはあなたでもいい
ぱぱ
でんぱ、ぱ
いつでも手をあげてるから
ビルの谷間 蟻の群れの中からみつけてよ
ぱ
でんぱ
かまってちゃんとか、そんなんじゃない
わたし命削って立ってるから
ぱぱ
わたしよ
/ 赦されない
腹を撫でていた
まだ湿っててちいさいもみじの掌が
きみはよく腹をみせていた
水色のホース 壊れた蛇口の下がお気に入りだった
毎年帰ると きみはわたしを覚えてよく尾を振った
三角の耳も
ごわついた毛並も
すこし獣くさい足も
いつもとおなじだった
のに
*
わたしははりぼての青春を過ごした
*
なつかしい森を抜けて
数年ぶりにきみに会いに行った
しかし
きみはわたしを忘れたように
腹を撫でてもうれしそうにしなかった
焦った
もう掌はヒトデよりもはるかに大きくて
それがいけなかったのか
そのときはわからなくて
*
束の間の悦びと後悔の日々
*
やがてきみは土に還った
電話越しにきみの死を知って
わたしはぼんやりときみとの散歩をおもいだした
わたしはきみがすきだったということ
おもいだした
わすれたわたしを赦さない
つめたくてあたたかいきみ
森の陰を見つめるあの静かな瞳
たくましく聡明な横顔
きみはしぬまでわたしを忘れていただろう
きみの墓石
わたしの掌 影おとしても
腹はみえない
君は静かに
森を見ている