おきあがりこぼしちゃん
フリルのくつした
かわいらしいえくぼ
ママをよぶ したったらずのこえ
小指が欲しいのならあげましょう
ほら もうすぐお昼よ
あんまり遠くにいっちゃ帰れないわよ
りんごのアメだま
甘ったるい肌のにおい
その真珠の髪留め、パパにもらったの?
小指がほしい?
昨日あげたじゃあないの
お願いだからこれ以上近づかないで
ガラスのくつなら
王子様にもらえばいいじゃない
その細い指が包められる わたしの小指は
もうあなたのポケットの中ですよ
せっかくみつけたんだから 王子様に遊んでもらえば
そうしなさいな
今いそがしいの
手紙書かないといけないし
ああそうね
もちろんわたしとあなたはおともだち
森のクルミをはんぶんこしたんだものね
でも今忙しいのよ
あらちょっと 泣くのは困る
わたしが悪者みたいじゃないの
小指じゃだめなの?
目が欲しいの?
これ近眼よ?
わかった
じゃあかけっこしましょ
森まで一直線
勝ったら目玉も指もぜんぶあげる
はい
よーいどん
ばいばい おきあがりこぼしちゃん
たおされて おきあがって
そんな自分がすきなおひめさま
あなたがわたしのこと おもちゃって思っているように
わたしもあなたのこと どうでもいいの
崖をすべりおちてくあのこの頭
あの撫で心地だけは少し惜しいけれど
でも小指だってすぐはえるし
なにより 今
とってもさっぱりだわ