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ペア
ぼくはいさぎよくきみにくちづけする
鼓膜と
心臓の底が
ふるえる
ど(ど)ど(ど)ど(ど)
ぼくときみがつながって、はげしく息をするだけ
下がらない幕がないのを忘れて
だれかのくしゃみもきこえない
ふるえながらなぞる水玉
ぷうるぷる
きかきかき
とうとうと
糸が小指にからまるけれど
きみはおくびにもださないでいて
きみが幾重にもかさねた声の
さいごのうすい一枚をおいたとき
ああ、あのとき
なまぬるいかぼちゃの拍手が見えた
ぼくにはきこえなかった
つかれた足と、はげしい呼吸がぼくのすべてだった
きみもそうだったと言ってくれ
*
まだきみはあのベルベッドにくるまれている?
頭はあるか 指は欠けていないかな
メトロノームはいま、なに色?
ぼくは海の底だ
藍色が骨までしみてたまったもんじゃない
ゆびを踊らせたって、白い砂が霧になるだけ
はるか頭のうえ
おおきな船が通るたび
きみと
こえを
おもいだすよ
暗闇のなか
錆びついた耳をすませて
なつかしく
よくひびく
とお、とお、とお
とお、