エピローグ(その他、大勢の視点)
「えー、番組の途中ですが、速報が入りました。飼育員二名を殺害し、逃走していた元動物タレントの熊五郎が、県外の山林で地元の猟友会の手によって駆除されたことがわかりました。繰り返します。元動物タレントの熊五郎が、県外の山林で地元の猟友会の手によって駆除されたことがわかりました。飼育牛を食害していたクマの個体のDNAと、熊五郎のDNAを比較分析した結果、今回の新事実が明らかとなった模様です」
「やっとか。これで、ようやく安心して寝られるよ」
「ええ、まったくですね」
「酪農家たちも、さぞや安堵したことだろうな」
「それにしても、あんなに危険なクマが、どうしてこんなにも世間でもてはやされたのか謎ですね」
「まったくだ。どうも最初から胡散臭かった。いつかこうなるんじゃないかと思っていたよ。警察は、あの獣をさっさと殺処分すべきだったんだ」
「ええ、まったくですよ」
「確か、あのクマをのプロデュースした土橋とかいう元芸人も殺されたんじゃなかったかね?」
「ええ、それも犯人は元アイドルだそうですよ」
「ははっ、これだから若い奴らは。一体、何を考えているのやら。正直、こっちはついていけんよ」
「あれ? 容疑者が所属していたアイドルグループに、この間まで熱を上げていませんでしたか?」
「今の推しは違うんだよ。いずれにしたって、あんなイカれた女、最初からタイプじゃなかったね」
「またまた」
「失礼な奴だな、君は! 大体そっちこそ、この前まで希少な熊五郎グッズを手に入れたと喜んでいたじゃないか!」
「あんなの、とっくにメルカリで売りましたよ!」
「まあまあ、お二人ともその辺で。えー、それでは番組のコーナーに戻ります。全国のお取り寄せ商品を今人気の若手芸人に紹介してもらいましょう。『ゴールデンボール』のお二人です、どうぞ!」
司会者の合図で、スタジオの奥から若い二人組が現れた。彼らが繰り広げるコントは、大して面白くもない上に、商品の説明すらも舌足らずであったが、なぜか観客たちの間では笑いが巻き起こっていた。
稚拙な芸を披露する芸人も――。
バカ笑いをする観客たちも――。
それを壇上から眺める識者ヅラした面々も――。
熊五郎や彼に関わって身を滅ぼした人物のことなど、もはや誰一人として気に留める者はいなかった。




