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大令嬢峠~こんな私でも男たらしになれますか?とピンクブロンドの令嬢に弟子入りした令嬢の末路

作者: 山田 勝

私、アルメシア・ギトーは学園一の男たらしの令嬢に弟子入りを決心したわ。

ピンクブロンド、肩と胸元ぱっちりのドレスを着ている三年生のサリー先輩だわ。



「あ、あの、私、後一月で男たらしになりたいのですが、私でもなれますか?」


と問うたら、ピンクブロンドのサリー様はニッコリ笑って答えてくれた。


「もちろんだからねっ!なれるのだからねっ!」


「あの、私、苦しいのも辛いのも苦手でして・・・それでも私、男たらしになれますか?」


「なれるのだからねっ!」


「で、弟子にして下さい!すぐに、修行をさせて下さい!」


「分かったのだからねっ!」






☆☆☆


バチン!バチン!


「おら、おら、苦しいのも辛いのを避けて男たらしになれると思っていてはダメなのだからねっ!」


学園の裏庭で、バチン!バチン!と竹をまとめて作った刀で地面を叩きながら、サリー先輩はオーガのように叱咤するわ。


「おら、おら、おら~!報恩感謝のカーテシー、後、千回だからねっ!」


「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、ウグ!ゲホ!」


「あたし、苦しい辛い苦手で男たらしになれる?こういうふざけた奴が一番嫌いなのだからねっ!」



はあ、はあ、はあ、私は、婚約者に・・・ダサいと言われた。





☆回想



私の婚約者は領地が隣のダイル様、小鳥のようなキスをした関係だった。

1年先に王都貴族学園に入学していたわ。


私はダイル様との学園生活に期待に胸を膨らませて入学したら、ダイル様の隣に令嬢がいた。

純朴なダイル様はまるで男娼のように髪を伸し。服をだらしなく着こなしていた。


『あれ、アルメシアだっけ?うわ、ダサー』

『ダイル様、本当のことを言ってはいけませんわ。クスッ』

『お前さ、綺麗になろうという努力が足りない。一月後のパーティーでダサいままだったら婚約破棄な』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「ハアアアアアーーーーーー、998、999!はあ、はあ、はあ、1000!これは全然、苦しくも辛くもないですわ!」


「な、あんた、やるじゃない」



この言葉を最後に気絶したわ。


どうやら、学園で一番の男たらしと評判の男爵令嬢サリー様に弟子として認められたようだ。




☆☆☆



翌日から修行を再開した。足がパンパンだわ。



「ポケットに何が入っているか調べるからねっ!」

「はい!お小遣いは交際費込みで月銀貨5枚ですわ」

「そーじゃないのだからねっ!能力よ」


いろいろなことを試されたわ。


「女豹の型!」


サリー様が手本を見せてくれる。


四つん這いになって、お尻を高くあげる姿勢だわ。


「あ~ん。ブローチ落としたのだからねっ!」


すると、即、周り、いえ、かなり遠くから殿方たちがやってくるわ。


「探して差し上げます!」

「キャー!助かるけど、嘘だからねっ!」



「さあ、アルメシア様もやるのだからねっ!」

「はい。ブローチですね」



「あ、ブローチ、ブローチ・・」


と叫んでサリー様の姿勢をやったが誰も来ないわ。


「ワン!ワン!ワン!」(お前誰!お前誰!ここ俺の縄張り!)

犬がよってきた・・・



「次、投げキッスだからねっ!」

「はい、投げキッスですね」


サリー様が投げキッスをすると、100メートル先からでも殿方が駆け寄ってくる。


「けしからぬ!」と怒る人もいれば、「こ、困ります!」とか言う人もいる。


私が投げキッスをすると、


「ワン!ワン!ワン!」(お前、誰?お前、誰?)


また、ワンちゃんだわ。


あら、殿方は来たわ。学園騎士の方が・・・


「そこのご令嬢、呪いをかけていると聞いたが!」

「ち、違いますわ!」



また、次の修行はパンをくわえて・・・え、生徒会長の殿下に特攻ぶっこみしろと?


「手本見せるからね」


サリー様は、パンをくわえて、殿下に突入をする。

殿下は2年生よね・・・側近の方々が止めるわ。


「こら、またピンク先輩?」

「今日こそは捕まえる!って、壁を走っているぞ!」


「三角飛びだからねっ」


ドタンと殿下にぶつかって、

「ちょっと、ちょっと、よそ見しないで欲しいのだからねっ」


「はあ、サリー先輩、これは何かの術式ですか?」

「フン!だからねっ!」



私がやったら、同情されたわ。


「一年生か・・・ご令嬢、サリー先輩に弱みでも」

「悩み相談があったら、殿下の婚約者エリザベス様に取り次ぎましょうか?」


「ですよね。止めておきます」

とパンをくわえて、踵を返した・・・



私には何もない。


「恐ろしいほど、男たらし要素がないのだからねっ!」

「申訳ありません・・」


「メイクだからねっ!」


と顔をマッサージされた。


「あんた、本来は釣り目じゃない?」

「はい、ダイル様に怖いと言われて、婆やにマッサージしてもらって、メイクで誤魔化しました」

「これからは、釣り目全開だからねっ!」


「その黒髪は下げるからね!」

「は、はい」


「オホホホホと笑うのだからねっ!」

「は、はい。オホホホホホホ」


「扇はいつも持ち歩くのだからねっ!」

「はい」


「このドレスを着るのだからねっ」

「何ですか?この黒いドレスは・・」

「悪役令嬢仕様だからねっ!エリエリから借りてきたのだからねっ」


「悪役令嬢、私、男爵令嬢ですが・・」

「いいのだからねっ!これから、方言を話すのだからねっ!」



そ、そんな。ダイル様に田舎言葉はダサいと言われて・・・


「妾はいとおかし。サリー様、これでよう遊ばしますか?」


「いいじゃない!!他には」


我家の秘伝のダンスもサリー様に披露した。

曾お婆さまの代から続くダンスだ。


と言っても洗練されていない。酒が回り気分が高揚して、村祭りに乱入する領主夫人の様子だ。

片手でスカートの裾をあげて、クルクル回る。


これもダイル様に笑われたな。



そして、一月後。

私は婚約者同伴のパーティーにシングルで出席をしたわ。




☆王子視点



「殿下、大変でございます」

「どうした。また、婚約破棄でも起きたか?」


一年生は入学して王都の悪い影響を受ける令息、令嬢が毎年出る。

だから、一年生は入学後一月に婚約者と同伴パーティーに出席させて様子を見るのだが・・・



「外国の高貴な令嬢が参りました」

「何だって・・・」


と見に行ったら、パーティー会場で人だかりが起きている。


「妾は王国辺境、ギトー男爵家のアルメシアに候、婚約者とは不仲で候」


「待て!待て!何で王宮古語を話せる令嬢がいるのだ!」



王宮で調査をしたら、3代前に、無実の罪で辺境に追放された公女がいた。

その名をアルメシア様。名誉は復活している。


その地の男爵家に嫁入りしたらしいが・・・この領地は皆、王宮古語から変化した話し言葉を使うようになったそうだ。


つまり、曾祖母、アルメシア様は男爵家で大事にされ領民に慕われていた。と推測される。


「はい、曾お婆さまは、村の収穫祭に農民と交じってダンスをしたに候・・と申し伝えあります」


「そのダンスをしてくれ!」


そのダンスもダンス講師に見せたら、古いダンスの型だ。昔はいまよりも感情を大事にしたそうだ。


肖像画を調べたら、曾祖母アルメシア様と新入生のアルメシア嬢は顔がそっくりだ。

険しい高山に咲く野草のようだ。


「いいか。アルメシア嬢は王家預かりだ。我と親戚の可能性が高い!」

「はい、殿下!」

「父上に報告して調査だ!」



☆ダイル視点


「チィ、アルメシア来ないな。婚約破棄をしてやろうと思ったのにな」

「フフフフフ、ダイル、悪~い顔」


「おい、ダイル、パーティー中止だってよ」

「何でよ」

「何でも身分の高い家門が判明したそうだぜ。生徒会は大わらわだ」



それから、何故か父上が領地からやってきた。


「ダイル、今から、アルメシア嬢に謝罪に行くぞ」

「え、何で、王都で伯爵家のご令嬢と仲良くなったよ」

「馬鹿、その令嬢は庶子だ!何の力もない。お前は第2子だ。ギトー家に婿入りする話だったぞ」


何でも、王家が仲裁に入ってこちら有責で婚約解消で動いているそうだ。

何か気に食わない。


初めて王宮に入った。アルメシアがいるそうだ。生意気だな。


しかし・・・侍従に至るまで顔が良い。いや、不細工でも自信に満ちた顔をしている。

俺でどうにか・・・出仕出来るか?


「そこの者、公女殿下がお通りになる。速やかに道を空けたまえ」

「はい、分かりました」


何だ。アルメシアみたいな黒髪、どっかで見た事あるような・・


大勢の女官、メイドを引き連れているな。

公女、公爵家、大公家の姫か?頭を下げる。


ピタッと止った。


やった。俺の顔に見とれたか?


「ダイル様、婚約解消は覆りませんわ。私、目覚めましたの。ここで学んで高見に登りたい候にして」


はあ、その声は、アルメシア?!


俺は、学園を留年し、王宮の使用人試験も落ちた・・・・

今は領地で部屋住みだ。


「チィ、ギトー家の者に見つかったら厄介だから部屋から出るなよ」


兄上から謹慎を言い渡される身だ。



・・・後にアルメシアは女官になり。宰相家の男子と婚約を結んだ。厳しい顔だがニコッと笑うギャップに多くの人がたらされた。


ピンクブロンドのサリーが何故、『悪役令嬢』と言ってメイクを施したかは謎ではあるが、一説には転生者であるとの噂は絶えない。







最後までお読み頂き有難うございました。

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