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アグリニオン戦記 外伝 穀物戦争  作者: 田丸 彬禰


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単位騒動

 十セネジュ、百セネジュ。

 セネジュとは、もちろんこれはこの世界の重さの単位であり、十セネジュとは別の世界での百キログラム、百セネジュはその十倍となる。


 なぜそこまで簡単異世界の単位がきれいな数字に換算できるのか?

 もちろんそれは、この重さの単位は元日本人である魔族の十一代目の王が定めたものであるからである。

 いや。

 より正しく言えば、もともとあった単位に王が正確性を持たせたと言ったほうがいいのだろう。


 もちろん、その王の時代にはその単位はすでに存在していた。

 そして、その単位となるものが、セネジュ、スイエト、それから最小単位のイトとなり、百イトが一スイエト、百スイエトが一セネジュとなる。


 一見すれば、問題なさそうなのだが、実はそうではない。

 最小単位である一イトはこの世界でよく食される豆一粒と同じ重さとされ、その百個分となる一スイエトは卵二個分の重さ。

 そう。

 単位こそあるものの、その重さの統一した基準。

 それが存在していなかったのである。


 そこで、その元日本人の魔族の王は、一スイエトと同等とされる卵二個分に近いことから百グラムを一スイエトとし、それぞれ純金でセネジュ、スイエト、イトの基準をつくらせ、つづいて、同じ材料での数多くの複製品をつくってばら撒き、国内の重さを統一した。


 だが……。


 この基準は魔族の世界でこそ普及しているものの、人間界ではイマイチ普及していなかった。

 いうまでもない。

 その時期に人間が住む場所にも同じ複製品は渡されていたのだが、すぐに別の素材に置き換えられ、本物はすべて溶かされ材料に戻されていたのである。


 そのためセネジュ、スイエト、イトという単位こそ存在しているが、その基準は国ごとに、下手をすれば町ごとでさえ違い、市場などではいまだに豆や卵を基準に使うこともあるありさまだったのだ。


 そうなれば、当然取引の際、その差異が原因となってトラブルは起こる。

 そのような場合は両者の力関係で決まる。

 この世界に存在するいつものどおりの理で。


 もちろん今回は公的な取引であり、しかも基準の元締めで、契約にも数字にうるさい魔族が関わったものであるのだから問題などあるはずがないのだが、そのような事情から相手であるノルディアがそれを正しいものと判断するかはわからない。

 まあ、先ほどの説明どおり、現在の力関係によって公式に文句は言われることはないだろうが、こっそりと不正を疑われることはあるかもしれない。

 いや……。


 実を言えば、実際にそれは起こっていた。


 これは余談の部類に入る話なのだが、この交渉から半年ほど過ぎてから魔族の国から持ち込まれた小麦袋。

 それを計量すると、すべて十セネジュよりも重い。

 そう。

 正確な量の小麦を見て得をしたとノルディアの役人たちが大喜びをしていたという嘘のような本当の話。


 それがノルディアの記録として残っている。

 

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