表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

異世界恋愛(短編)シリーズ

落ちぶれ公爵令嬢、魔族と出会う

開幕婚約破棄から書いて行ったらこんな話になりました。






 王子の婚約者である私の誕生日、それを祝う夜会の最中にそれは起こった。


「ララエラ! お前との婚約を破棄する!」


 明朗と告げるエリック殿下が、私に指を突き付けて声を上げていた。


 その横には、マロンブラウンの髪色をした、男好きしそうな可憐な令嬢。


 彼女は勝ち誇ったように私に笑みを浮かべている。


 おっと、これは誕生日のサプライズプレゼントかな?


 幼い頃に、勝手に親が決めた婚約だ。


 元々殿下は生理的に受け付けない顔だし。それを向こうから破棄してくれるなら、願ってもないことだろう。


 遠くからお父様が声を上げて告げる。


「ララエラよ! お前が王子の婚約者の立場を利用し、国庫から資金を横領していた証拠が挙がっている!

 この公爵家の恥さらしめが! お前とはもう、親でも子でもない!」


 お父様? いったい何の話を……ああ、さては自分の横領が発覚しかけて、私に濡れ衣を着せようと?


 実の娘より宰相の地位を選んだ――いえ、お金を選んだのね。


 つくづく呆れる父親だ。公爵家の名が泣きますわ。


 かくして私は騎士たちに捕まり、拘束されて別室に連れていかれたのだった。





****


 ドレスを剥ぎ取られた後に下女の服を押し付けられ、私は一人で何とか服を着ていった。


 着替え終わった私を乗せた幌馬車が、見張りの騎士たちを乗せて夜闇を走っていく。


 騎士たちの視線は刺すように痛くて、横領犯を逃さないように見張っている感じだ。


 ……うーん、宰相であるお父様の言葉を信じちゃってるのかな。


 お父様って、外面だけはいいからなぁ。


 一見すると国を愛する宰相が、実はお金大好き汚職まみれだなんて、家族以外知らないよね。



 馬車は夜遅くまで走り続け、森の中で停車した。


 騎士たちが荒っぽい声で告げる。


「降りろ売国奴!」


 あらまぁ、随分と不名誉な呼び名だこと。


 私は騎士たちに引きずられるように幌馬車から降ろされ、突き飛ばされて地面に倒れ込んだ。


 騎士たちは「フン!」と鼻息を荒く吐き出すと、幌馬車に乗って王都へと戻っていった。


 ……ここはどこだろう?


 ランタンを掲げた馬車が居なくなって、辺りは月明かりだけ。真っ暗な森を突っ切る道が、まっすぐ伸びていた。


「仕方ない、歩くか!」


 私はよいこらしょっと立ち上がり、下女の靴で道を先に進んでいった。



 青白い月明かりを浴びながら、うっすらと浮かび上がる街道をてくてくと進んでいく。


 獣の気配は周囲にないみたいだけど、狼や熊が出てきたら一巻の終わりだなぁ。


 てくてく、てくてく――歩き疲れた私は、分かれ道の看板の前で腰を下ろした。


 月明かりでうっすらと浮かび上がる文字じゃ、どの道がどこに続くかもわかりはしない。


「あーもう! ここでいいわ!」


 私はそのままごろんと横になり、大の字になって夜空を見上げる。


 十七歳の誕生日と共に公爵家を追い出されるのは、さすがに予想してなかった。


 でもあのキモイ王子と結婚するくらいなら、こんな人生でもまぁいいかな。


 こうしてれば私はそのうち、獣か人に襲われて人生を終えるだろう。


 できれば綺麗な身体で死にたいから、盗賊の類に襲われるのはやめてほしいな。


 そんな私の儚い願いは、とある一声で破られた。


「――あんた、そんなとこで何してるんだ?」


 あーあ、人間の男性だ。私は最後まで運がないらしい。


「見てわからない? 歩き疲れたから休んでるのよ」


 声の主がクスリと笑った。


「こんなところで横になって居たら風邪をひく。

 あんたもしかして、馬鹿なのか?」


「失礼ね。風邪をひく前に死ぬだろうと思って身を投げ出してるのよ。

 私のことは放っておいてくれないかしら」


「いやいや、こんな上玉を放置なんてできないさ。

 それよりどうだ、復讐してみないか? あんた裏切られたばかりだろう?」


 なんで知ってるの?


 私は身体を持ち上げて声の主を見上げた。


 長い銀髪、色の黒い肌、瞳は赤く輝いていて、頭に角が生えている。


「……魔族なんて、初めて実物を見たわ」


 声の主が、綺麗な顔でニコリと微笑んだ。


「夜に俺を見て驚かない女にも、初めて会ったよ。

 お互い初めて同士だ、少し話をしないか」


「別に構わないけれど……何を話すというの?」


「それは俺の野営に移動してから話すよ。

 夜風は体に悪い。せめて火に当たった方が良い」


 私は魔族の青年の手を借りて立ち上がり、彼の案内するままに道を先に進んでいった。





****


 魔族の青年はアルフォンスと名乗った。


 私は彼の起こした焚火に当たり、倒木の上に座りながらお湯を飲んでいた。


 はぁ~、あったまる~。やっぱり夜は冷えるんだなぁ。


 私が小さくほっと息をついていると、アルフォンスがクスリと笑った。


「あんた、自殺志願者かと思ったが、どうやらそういう雰囲気でもないんだな」


「死にたくて死のうとしてたわけじゃないわ。

 他に選択肢がなかったから、なるだけ楽で綺麗に死にたかっただけよ。

 ――それより、さっきの復讐がどうとかって何?」


 アルフォンスが赤い目をギラリと輝かせて応える。


「そう、まずはそれからだ。

 あんたには悪意の匂いがまとわりついてる。

 今夜、酷い悪意にさらされてここまで来ただろう?

 こんな場所にそんな恰好で、悪意にまみれた女――十中八九、裏切りにあった。違うか?」


 否定するのも意味がない。私は素直に頷いた。


「そうよ。お父様に汚職の身代わりとして、濡れ衣を着せられて捨てられたの。

 婚約者だった王子にも捨てられたし、騎士たちも私を売国奴呼ばわり。

 きっと昨晩の夜会は、私のことを面白おかしく話していたのでしょうね」


 アルフォンスが目を細めながら語りかけてくる。


「酷い目にあったんだな、あんた。

 どうだ? 復讐したいだろう?

 奴らにも同じ屈辱、同じ絶望を味わわせたいと思うだろう?」


「いーえ? まったく?」


 私はきっぱりと否定した。


 アルフォンスが拍子抜けしたように、目を見開いて私に告げる。


「……嘘だろ? なんであんたの中から、憎悪の匂いがしないんだよ。

 実の親から裏切られたんだろう? 婚約者からも捨てられたんだろう?」


「お父様がそういう人だってことは前から知っているし、婚約者も嫌々やっていただけよ。

 むしろ両方と縁を切れて、それ自体はせいせいしているわ。

 ただ私は世間知らずで、これからどう生きていくのかは途方に暮れてるわね」


 アルフォンスが困惑したように眉をひそめた。


「あんた、死ぬつもりなのか生きるつもりなのか、ハッキリしてくれないないか」


「生きることも、死ぬことも、結局は一緒よ。

 どう生きていくかは、どんな死に方をするかを決めること。

 どんなに嫌でも死ぬときは死んでしまうもの。

 どれほど嫌でも、死んでいなければ生きていかなければならないわ。

 私は最後まで、自分に恥じることがないように命を全うするつもりよ」


「ほー、そいつは誰の受け売りだ?」


 私は小首を傾げて応える。


「受け売り? 自分で考えて、自分で辿り着いた答えよ。

 私はグリュンハイム公爵家の息女として、恥じることなく命を終える。

 ――まぁもう、親子の縁を切られて、ただのララエラになってしまったけれどね」


 アルフォンスがニヤリと微笑んだ。


「あんた、面白い感性をしてるな。

 ただのララエラになったなら、誇り高く生きる必要もないんじゃないか?」


「それとこれとは話が別よ。

 私が誇り高く在ろうとするのは、公爵家に生まれたのが理由じゃないわ。

 お父様を見ていて『ああはなりたくない』と思ったのが大きいわね。

 ……そう考えると、やっぱり公爵家に生まれたのが理由なのかしら」


 私が頭を悩ませて小首を傾げていると、アルフォンスが楽しそうに笑いだした。


「ハハハ! やっぱりあんたは面白い!

 今夜は気分がいいからサービスだ。

 本当なら代償に魂を頂くんだが、あんたは特別に寿命十年分で望みを叶えてやる。

 なんでもいい、望みを言ってみろ」


 私はきょとんとアルフォンスの楽しそうな笑顔を見つめた。


「望み? そうねぇ……お父様と王子に、この国がこれ以上滅茶苦茶にされないようにしてあげて。

 国王陛下は頼りにならないし、このままじゃ国民が可哀想だわ」


 アルフォンスの赤い瞳が、危険な色に輝いていた。


「それは『父親と王子を殺せ』と受け取っていいんだな?」


「え? 違うわよ? なにを聞いていたのかしら。

 あの人たちが悪さをしようとしたら、それを止めて、戒めてあげて欲しいと言っているの。

 そしてこの国が良くなるように、きちんと導いてあげて」


 アルフォンスがぽかんとした顔で私を見つめていた。


「……自分の寿命を十年差し出して、そんなくだらないことを願うのか?

 なんならお前自身のことでもいいんだぞ?

 隣国の王子に拾われたいとか、裕福な商人の青年に見初められたいとか、なんかないのか?!

 ここから人生を一発逆転させたいと思わないのか?!」


「あら、残念ね。私はそんなに逞しい生き方をするつもりはないの。

 蝶よ花よと育てられてきた私は、ただ流されるままに生きていくだけよ。

 ――ああでも、隣国に続く道を教えてくれるかしら? それも寿命を十年でいいかしら?」


 困惑した様子のアルフォンスが、私の目をまじまじと見つめてきた。


「……あんた、そんだけ図太い神経してて『逞しくない』と言い張るのか?」


 私は小首を傾げて応える。


「今のどこが、逞しい生き方なのか、教えてもらってもいいかしら?」


 しばらく私を見つめていたアルフォンスが、おかしそうにお腹を抱えて大笑いを始めた。


「ハハハ! 本当に面白い奴だな、あんた!

 ――よし決めた! あんた今夜はここで眠れ。

 明日の朝、あんたの前に運命の男が現れる。

 そいつについて行けば、あんたは救われるだろう」


「それも寿命を十年支払うのかしら? だとしたら私はいらないわ」


「ハハハ! そうじゃない、これは本当のサービスだ!

 いいから今日は、この毛布をかぶって寝ているといい。

 あんたが襲われないよう、俺がちゃんと見張っておいてやる」


「ほんと? じゃあ有難く毛布を借りるわね」


 私は早速毛布にくるまると、倒木を枕にして横になった。


 歩き疲れていた私は、ストンと意識を手放していた。





****


 朝の冷え込みで目が覚め、身体をゆっくりと起こす。


「おはようアルフォンス――」


 返事がない。周囲を見回したけど、近くには誰も居ないみたいだ。


 焚火はまだ火が残ってる。私は火に当たりながら、朝の寒さをしのいでいた。


 ……アルフォンスって、何者だったんだろう。


 話に聞いた魔族の外見、あんな姿は人間ではあり得ない。


 でも、悪い人じゃなさそうだったんだよねぇ――あ、悪い『魔族』か。


 きっとお父様やエリック殿下より、よっぽど仲良くできるんじゃないかな。


 ――遠くから、馬車が近づいてくる音が聞こえる? こんな朝早くに?


 音の方に振り向くと、朝もやの向こうから確かに馬車が近づいてきていた。


 しばらく見守っていると、馬車は私の目の前で止まり、綺麗なプラチナブロンドの長髪を垂らした青年が降りてきた。


 上質のサテンで仕立てられたチュニックとベルベットのコートを羽織っているところからすると、身分は良さそうね。


 青年が優し気な微笑みで私に告げる。


「レディ、こんなところでいかがしましたか」


 レディ? 私が?


 自分の服装を改めて見下ろして小首を傾げたあと、青年に微笑んで応える。


「家を追い出されてしまいましたの。

 昨晩は親切な方が焚火を起こしてくださったので、凍えずに済みましたわ」


 青年がニコリと微笑んだ。


「それは大変だ、私の家に是非来てください。

 丁重におもてなしをいたします。

 ――私はドミニクス王国の者、決して怪しい物ではありません」


「そう? 爵位とお名前を教えて頂けるかしら?

 私はララエラ、今はただの平民ですわ」


 青年が困ったように微笑んだ。


「名前は……アル、アル・ドミニクスです。

 爵位はありませんが、肩書は第一王子となります」


 私はびっくりして目を見開いた。


「……第一王子殿下が、護衛も無しでこんな場所を、こんな時間に?」


 青年――アルがチャーミングなウィンクを飛ばして応える。


「これでも腕には自信があります。盗賊程度にやられたりはしませんよ」


 アルが差し出してくれた手を取り、私は立ち上がった。


 そのままアルは焚火の後始末をすると、私を馬車に乗せ、馬車はそのまま走り出していった。





****


 アルが貸してくれたベルベットのコートを羽織り、私は馬車の外を眺める。


 どうやら馬車は、隣国ドミニクス王国へ向かっているようだ。


 窓にうっすら映るアルの姿を観察しても、彼の所作には気品がある。


 王族というのは、嘘ではないのだろう。


 アルが私を見て微笑んで告げる。


「運よくあなたを拾えてよかった。

 家を追い出されたとはいえ、あなたも元貴族なのでしょう?

 あのような場所に居て良い方ではありません」


 私はアルに振り向いて応える。


「今は平民ですわ、アル殿下。

 ところで――頭の角を隠し損ねてますわよ? アルフォンス」


 ハッとしたアル殿下が、両手を頭に持っていって角を確認していた。


 角がないのを確認し終わると、アル殿下が気恥ずかしそうに苦笑を浮かべた。


「……どこで気付いたんだ?」


「んー、最初から? いくら夜で暗かったとはいえ、顔を一度見てるのよ?

 髪の色や肌の色、瞳の色が違うからって、見間違えたりはしないわ。

 元公爵令嬢を甘く見ないで欲しいわね」


 これでも大勢の人間と社交界で挨拶を交わしてきたのだ。


 人の顔を覚えるのは、職業病みたいなものだと思う。


 私はクスリと笑って告げる。


「王子様を名乗って、私をどこへ連れていくつもりなの?」


 アルフォンスが所作を崩してくつろぎ、諦めたように微笑んだ。


「嘘は言ってねーよ。ドミニクスは魔族の国だ。

 人にまぎれて生きてきて、人の血も多く混じってきた。

 俺みたいに魔族の力を自在に使える個体は、かなりレアになったけどな」


「じゃあ、第一王子ってのも本当なの?」


 アルフォンスがこちらに目を向けてニヤリと微笑んだ。


「そういうこった。たまたま近くに公務で来ていてな。

 悪意の匂いがしたから、匂いの元を辿っていったらあんたに出会った。

 昨晩話をしていて、あんたとあれっきりで分かれるのは惜しいと思っちまった。

 だから国に連れ帰ろうとしている」


「私のお願いはどうなったの? お父様とエリック殿下を、見張ってくれるんじゃなかったの?」


 アルフォンスが嫌そうに顔を歪めて応える。


「俺だって暇じゃねーんだ、見張りなんてやってられっかよ。

 ドミニクスのために、やらなきゃいけない公務が山ほどある。

 馬鹿どものために使ってやる時間なんて、一時間が限度さ」


「そう……じゃあこの国の民は、あの二人に苦しめられてしまうのね」


 私は気分が落ち込んで、うつむいて応えた。


 アルフォンスの明るい声が、耳に入ってくる。


「そう心配すんな。きちんと昨晩、奴らは≪強制契約ギアス≫で魂を縛っておいた。

 今後は悪さをするたびに、想像を絶する苦痛を味わいながら寿命をすり減らすことになる。

 知能が少しでも残って居れば、死ぬ前に自分の行いを見直すだろう」


 私は驚いてアルフォンスの顔を見る――不敵に微笑むその瞳に、嘘は感じられない。


「……そう、それならよかった。

 でもこれで、私の寿命が十年減ってしまったのね」


 アルフォンスが大袈裟に手を振って否定してきた。


「あー、その話だがな、代償を変えることにした。

 あんた、俺の嫁になれ。

 十年間だけ俺の嫁になれば、それで解放してやる」


 私はきょとんとアルフォンスの目を見つめて応える。


「嫁? 王子に嫁げと、そう言ったの?」


 アルフォンスが私の目を見て、楽し気に笑みを浮かべる。


「ああそう言った。俺はあんたを気に入った。

 公爵令嬢なら、家格に問題もない。

 ドミニクスのうるさい爺共も、大人しくなるだろうさ」


「でも私、もう家を追い出されたのよ?

 王子に嫁ぐ資格なんてないわ」


 アルフォンスが疲れたようにうなだれた。


「だーかーらー、昨晩あんたの親父にも会ってきたんだよ。

 親子の縁切りも取り消させた。

 あんたは今も、ララエラ・グリュンハイム公爵令嬢だ。

 家臣にも親父にも、文句は言わせねーさ」


「……もしかして、そのためにお父様に会ってきたの?

 私と婚姻するために、除籍を取り消させたというの?」

 

 どこか恥ずかしそうに、アルフォンスは窓の外に目を向けていた。


 そのほんのりと赤く染まった頬を見て、私はクスリと笑みをこぼす。


「……ねぇアルフォンス、十年だけであなたは満足なのかしら?」


「……どういう意味だ?

 魔族の嫁なんて、十年やるのも苦痛だろう」


「そんなことはないわ。

 エリック殿下と婚姻することを思えば、比べ物にならないくらいよ。

 あなたの妻になら、なってあげていいわよ?」


 弾かれたようにアルフォンスがこちらに振り向いて、私の目を見つめた。


「……本気で言ってるのか?」


 私はニッコリと微笑んで応える。


「ええ、本気よ?

 アルフォンスとなら私、うまくやっていける気がするの。

 魔族とか人間の違いなんて、大した問題ではないわ。

 そもそも、もう人の血が混じっているのでしょう?

 あなたも純粋な魔族ではないのだし、気にする事はないわよ」


 アルフォンスが呆れたように笑っていた。


「ははは……あんた、本当に面白い感性をしているな。

 普通、魔族なんて忌み嫌うもんだ。

 正体を知って嫁いでくる人間は、あんたが初めてかもしれないな」


「婚姻なんて、フィーリングが合えばなんとかなるものよ。

 その点でエリック殿下は最悪だったわね。

 お父様が決めた婚約でなかったら、最初からお断りしていたところよ」


 大笑いを始めたアルフォンスと私は、ドミニクス王国に着いてからのこれからを話し合った。


 なぜ魔族が人間の世界で王族をやっているのか、ドミニクスがどんな国なのか、そんな話を聞きながら、私は微笑んで応えた。


 ――やっぱり、アルフォンスは悪い人じゃないわね。この人なら、きっと大丈夫!


 私は確信を胸に、温かい心をアルフォンスと通わせていった。


 馬車は朝もやの中を、静かにドミニクス王国へと走っていった。





 やがて、ドミニクス王国の第一王子が妃を娶った。


 とても美しい王子妃として、『美男美女の夫婦』と国民たちに愛された。


 彼らはドミニクス王国のために尽力し、国を豊かにし続けた。


 やがて第一王子が王位を受け継ぎ、彼らは国民の笑顔を守るために奔走した。


 子供にも多く恵まれた王と王妃は、晩年まで仲睦まじく寄り添っていたと伝えられる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ