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異世界恋愛(短編)シリーズ

落ちぶれ公爵令嬢、魔族と出会う

掲載日:2024/06/23

開幕婚約破棄から書いて行ったらこんな話になりました。






 王子の婚約者である私の誕生日、それを祝う夜会の最中にそれは起こった。


「ララエラ! お前との婚約を破棄する!」


 明朗と告げるエリック殿下が、私に指を突き付けて声を上げていた。


 その横には、マロンブラウンの髪色をした、男好きしそうな可憐な令嬢。


 彼女は勝ち誇ったように私に笑みを浮かべている。


 おっと、これは誕生日のサプライズプレゼントかな?


 幼い頃に、勝手に親が決めた婚約だ。


 元々殿下は生理的に受け付けない顔だし。それを向こうから破棄してくれるなら、願ってもないことだろう。


 遠くからお父様が声を上げて告げる。


「ララエラよ! お前が王子の婚約者の立場を利用し、国庫から資金を横領していた証拠が挙がっている!

 この公爵家の恥さらしめが! お前とはもう、親でも子でもない!」


 お父様? いったい何の話を……ああ、さては自分の横領が発覚しかけて、私に濡れ衣を着せようと?


 実の娘より宰相の地位を選んだ――いえ、お金を選んだのね。


 つくづく呆れる父親だ。公爵家の名が泣きますわ。


 かくして私は騎士たちに捕まり、拘束されて別室に連れていかれたのだった。





****


 ドレスを剥ぎ取られた後に下女の服を押し付けられ、私は一人で何とか服を着ていった。


 着替え終わった私を乗せた幌馬車が、見張りの騎士たちを乗せて夜闇を走っていく。


 騎士たちの視線は刺すように痛くて、横領犯を逃さないように見張っている感じだ。


 ……うーん、宰相であるお父様の言葉を信じちゃってるのかな。


 お父様って、外面だけはいいからなぁ。


 一見すると国を愛する宰相が、実はお金大好き汚職まみれだなんて、家族以外知らないよね。



 馬車は夜遅くまで走り続け、森の中で停車した。


 騎士たちが荒っぽい声で告げる。


「降りろ売国奴!」


 あらまぁ、随分と不名誉な呼び名だこと。


 私は騎士たちに引きずられるように幌馬車から降ろされ、突き飛ばされて地面に倒れ込んだ。


 騎士たちは「フン!」と鼻息を荒く吐き出すと、幌馬車に乗って王都へと戻っていった。


 ……ここはどこだろう?


 ランタンを掲げた馬車が居なくなって、辺りは月明かりだけ。真っ暗な森を突っ切る道が、まっすぐ伸びていた。


「仕方ない、歩くか!」


 私はよいこらしょっと立ち上がり、下女の靴で道を先に進んでいった。



 青白い月明かりを浴びながら、うっすらと浮かび上がる街道をてくてくと進んでいく。


 獣の気配は周囲にないみたいだけど、狼や熊が出てきたら一巻の終わりだなぁ。


 てくてく、てくてく――歩き疲れた私は、分かれ道の看板の前で腰を下ろした。


 月明かりでうっすらと浮かび上がる文字じゃ、どの道がどこに続くかもわかりはしない。


「あーもう! ここでいいわ!」


 私はそのままごろんと横になり、大の字になって夜空を見上げる。


 十七歳の誕生日と共に公爵家を追い出されるのは、さすがに予想してなかった。


 でもあのキモイ王子と結婚するくらいなら、こんな人生でもまぁいいかな。


 こうしてれば私はそのうち、獣か人に襲われて人生を終えるだろう。


 できれば綺麗な身体で死にたいから、盗賊の類に襲われるのはやめてほしいな。


 そんな私の儚い願いは、とある一声で破られた。


「――あんた、そんなとこで何してるんだ?」


 あーあ、人間の男性だ。私は最後まで運がないらしい。


「見てわからない? 歩き疲れたから休んでるのよ」


 声の主がクスリと笑った。


「こんなところで横になって居たら風邪をひく。

 あんたもしかして、馬鹿なのか?」


「失礼ね。風邪をひく前に死ぬだろうと思って身を投げ出してるのよ。

 私のことは放っておいてくれないかしら」


「いやいや、こんな上玉を放置なんてできないさ。

 それよりどうだ、復讐してみないか? あんた裏切られたばかりだろう?」


 なんで知ってるの?


 私は身体を持ち上げて声の主を見上げた。


 長い銀髪、色の黒い肌、瞳は赤く輝いていて、頭に角が生えている。


「……魔族なんて、初めて実物を見たわ」


 声の主が、綺麗な顔でニコリと微笑んだ。


「夜に俺を見て驚かない女にも、初めて会ったよ。

 お互い初めて同士だ、少し話をしないか」


「別に構わないけれど……何を話すというの?」


「それは俺の野営に移動してから話すよ。

 夜風は体に悪い。せめて火に当たった方が良い」


 私は魔族の青年の手を借りて立ち上がり、彼の案内するままに道を先に進んでいった。





****


 魔族の青年はアルフォンスと名乗った。


 私は彼の起こした焚火に当たり、倒木の上に座りながらお湯を飲んでいた。


 はぁ~、あったまる~。やっぱり夜は冷えるんだなぁ。


 私が小さくほっと息をついていると、アルフォンスがクスリと笑った。


「あんた、自殺志願者かと思ったが、どうやらそういう雰囲気でもないんだな」


「死にたくて死のうとしてたわけじゃないわ。

 他に選択肢がなかったから、なるだけ楽で綺麗に死にたかっただけよ。

 ――それより、さっきの復讐がどうとかって何?」


 アルフォンスが赤い目をギラリと輝かせて応える。


「そう、まずはそれからだ。

 あんたには悪意の匂いがまとわりついてる。

 今夜、酷い悪意にさらされてここまで来ただろう?

 こんな場所にそんな恰好で、悪意にまみれた女――十中八九、裏切りにあった。違うか?」


 否定するのも意味がない。私は素直に頷いた。


「そうよ。お父様に汚職の身代わりとして、濡れ衣を着せられて捨てられたの。

 婚約者だった王子にも捨てられたし、騎士たちも私を売国奴呼ばわり。

 きっと昨晩の夜会は、私のことを面白おかしく話していたのでしょうね」


 アルフォンスが目を細めながら語りかけてくる。


「酷い目にあったんだな、あんた。

 どうだ? 復讐したいだろう?

 奴らにも同じ屈辱、同じ絶望を味わわせたいと思うだろう?」


「いーえ? まったく?」


 私はきっぱりと否定した。


 アルフォンスが拍子抜けしたように、目を見開いて私に告げる。


「……嘘だろ? なんであんたの中から、憎悪の匂いがしないんだよ。

 実の親から裏切られたんだろう? 婚約者からも捨てられたんだろう?」


「お父様がそういう人だってことは前から知っているし、婚約者も嫌々やっていただけよ。

 むしろ両方と縁を切れて、それ自体はせいせいしているわ。

 ただ私は世間知らずで、これからどう生きていくのかは途方に暮れてるわね」


 アルフォンスが困惑したように眉をひそめた。


「あんた、死ぬつもりなのか生きるつもりなのか、ハッキリしてくれないないか」


「生きることも、死ぬことも、結局は一緒よ。

 どう生きていくかは、どんな死に方をするかを決めること。

 どんなに嫌でも死ぬときは死んでしまうもの。

 どれほど嫌でも、死んでいなければ生きていかなければならないわ。

 私は最後まで、自分に恥じることがないように命を全うするつもりよ」


「ほー、そいつは誰の受け売りだ?」


 私は小首を傾げて応える。


「受け売り? 自分で考えて、自分で辿り着いた答えよ。

 私はグリュンハイム公爵家の息女として、恥じることなく命を終える。

 ――まぁもう、親子の縁を切られて、ただのララエラになってしまったけれどね」


 アルフォンスがニヤリと微笑んだ。


「あんた、面白い感性をしてるな。

 ただのララエラになったなら、誇り高く生きる必要もないんじゃないか?」


「それとこれとは話が別よ。

 私が誇り高く在ろうとするのは、公爵家に生まれたのが理由じゃないわ。

 お父様を見ていて『ああはなりたくない』と思ったのが大きいわね。

 ……そう考えると、やっぱり公爵家に生まれたのが理由なのかしら」


 私が頭を悩ませて小首を傾げていると、アルフォンスが楽しそうに笑いだした。


「ハハハ! やっぱりあんたは面白い!

 今夜は気分がいいからサービスだ。

 本当なら代償に魂を頂くんだが、あんたは特別に寿命十年分で望みを叶えてやる。

 なんでもいい、望みを言ってみろ」


 私はきょとんとアルフォンスの楽しそうな笑顔を見つめた。


「望み? そうねぇ……お父様と王子に、この国がこれ以上滅茶苦茶にされないようにしてあげて。

 国王陛下は頼りにならないし、このままじゃ国民が可哀想だわ」


 アルフォンスの赤い瞳が、危険な色に輝いていた。


「それは『父親と王子を殺せ』と受け取っていいんだな?」


「え? 違うわよ? なにを聞いていたのかしら。

 あの人たちが悪さをしようとしたら、それを止めて、戒めてあげて欲しいと言っているの。

 そしてこの国が良くなるように、きちんと導いてあげて」


 アルフォンスがぽかんとした顔で私を見つめていた。


「……自分の寿命を十年差し出して、そんなくだらないことを願うのか?

 なんならお前自身のことでもいいんだぞ?

 隣国の王子に拾われたいとか、裕福な商人の青年に見初められたいとか、なんかないのか?!

 ここから人生を一発逆転させたいと思わないのか?!」


「あら、残念ね。私はそんなに逞しい生き方をするつもりはないの。

 蝶よ花よと育てられてきた私は、ただ流されるままに生きていくだけよ。

 ――ああでも、隣国に続く道を教えてくれるかしら? それも寿命を十年でいいかしら?」


 困惑した様子のアルフォンスが、私の目をまじまじと見つめてきた。


「……あんた、そんだけ図太い神経してて『逞しくない』と言い張るのか?」


 私は小首を傾げて応える。


「今のどこが、逞しい生き方なのか、教えてもらってもいいかしら?」


 しばらく私を見つめていたアルフォンスが、おかしそうにお腹を抱えて大笑いを始めた。


「ハハハ! 本当に面白い奴だな、あんた!

 ――よし決めた! あんた今夜はここで眠れ。

 明日の朝、あんたの前に運命の男が現れる。

 そいつについて行けば、あんたは救われるだろう」


「それも寿命を十年支払うのかしら? だとしたら私はいらないわ」


「ハハハ! そうじゃない、これは本当のサービスだ!

 いいから今日は、この毛布をかぶって寝ているといい。

 あんたが襲われないよう、俺がちゃんと見張っておいてやる」


「ほんと? じゃあ有難く毛布を借りるわね」


 私は早速毛布にくるまると、倒木を枕にして横になった。


 歩き疲れていた私は、ストンと意識を手放していた。





****


 朝の冷え込みで目が覚め、身体をゆっくりと起こす。


「おはようアルフォンス――」


 返事がない。周囲を見回したけど、近くには誰も居ないみたいだ。


 焚火はまだ火が残ってる。私は火に当たりながら、朝の寒さをしのいでいた。


 ……アルフォンスって、何者だったんだろう。


 話に聞いた魔族の外見、あんな姿は人間ではあり得ない。


 でも、悪い人じゃなさそうだったんだよねぇ――あ、悪い『魔族』か。


 きっとお父様やエリック殿下より、よっぽど仲良くできるんじゃないかな。


 ――遠くから、馬車が近づいてくる音が聞こえる? こんな朝早くに?


 音の方に振り向くと、朝もやの向こうから確かに馬車が近づいてきていた。


 しばらく見守っていると、馬車は私の目の前で止まり、綺麗なプラチナブロンドの長髪を垂らした青年が降りてきた。


 上質のサテンで仕立てられたチュニックとベルベットのコートを羽織っているところからすると、身分は良さそうね。


 青年が優し気な微笑みで私に告げる。


「レディ、こんなところでいかがしましたか」


 レディ? 私が?


 自分の服装を改めて見下ろして小首を傾げたあと、青年に微笑んで応える。


「家を追い出されてしまいましたの。

 昨晩は親切な方が焚火を起こしてくださったので、凍えずに済みましたわ」


 青年がニコリと微笑んだ。


「それは大変だ、私の家に是非来てください。

 丁重におもてなしをいたします。

 ――私はドミニクス王国の者、決して怪しい物ではありません」


「そう? 爵位とお名前を教えて頂けるかしら?

 私はララエラ、今はただの平民ですわ」


 青年が困ったように微笑んだ。


「名前は……アル、アル・ドミニクスです。

 爵位はありませんが、肩書は第一王子となります」


 私はびっくりして目を見開いた。


「……第一王子殿下が、護衛も無しでこんな場所を、こんな時間に?」


 青年――アルがチャーミングなウィンクを飛ばして応える。


「これでも腕には自信があります。盗賊程度にやられたりはしませんよ」


 アルが差し出してくれた手を取り、私は立ち上がった。


 そのままアルは焚火の後始末をすると、私を馬車に乗せ、馬車はそのまま走り出していった。





****


 アルが貸してくれたベルベットのコートを羽織り、私は馬車の外を眺める。


 どうやら馬車は、隣国ドミニクス王国へ向かっているようだ。


 窓にうっすら映るアルの姿を観察しても、彼の所作には気品がある。


 王族というのは、嘘ではないのだろう。


 アルが私を見て微笑んで告げる。


「運よくあなたを拾えてよかった。

 家を追い出されたとはいえ、あなたも元貴族なのでしょう?

 あのような場所に居て良い方ではありません」


 私はアルに振り向いて応える。


「今は平民ですわ、アル殿下。

 ところで――頭の角を隠し損ねてますわよ? アルフォンス」


 ハッとしたアル殿下が、両手を頭に持っていって角を確認していた。


 角がないのを確認し終わると、アル殿下が気恥ずかしそうに苦笑を浮かべた。


「……どこで気付いたんだ?」


「んー、最初から? いくら夜で暗かったとはいえ、顔を一度見てるのよ?

 髪の色や肌の色、瞳の色が違うからって、見間違えたりはしないわ。

 元公爵令嬢を甘く見ないで欲しいわね」


 これでも大勢の人間と社交界で挨拶を交わしてきたのだ。


 人の顔を覚えるのは、職業病みたいなものだと思う。


 私はクスリと笑って告げる。


「王子様を名乗って、私をどこへ連れていくつもりなの?」


 アルフォンスが所作を崩してくつろぎ、諦めたように微笑んだ。


「嘘は言ってねーよ。ドミニクスは魔族の国だ。

 人にまぎれて生きてきて、人の血も多く混じってきた。

 俺みたいに魔族の力を自在に使える個体は、かなりレアになったけどな」


「じゃあ、第一王子ってのも本当なの?」


 アルフォンスがこちらに目を向けてニヤリと微笑んだ。


「そういうこった。たまたま近くに公務で来ていてな。

 悪意の匂いがしたから、匂いの元を辿っていったらあんたに出会った。

 昨晩話をしていて、あんたとあれっきりで分かれるのは惜しいと思っちまった。

 だから国に連れ帰ろうとしている」


「私のお願いはどうなったの? お父様とエリック殿下を、見張ってくれるんじゃなかったの?」


 アルフォンスが嫌そうに顔を歪めて応える。


「俺だって暇じゃねーんだ、見張りなんてやってられっかよ。

 ドミニクスのために、やらなきゃいけない公務が山ほどある。

 馬鹿どものために使ってやる時間なんて、一時間が限度さ」


「そう……じゃあこの国の民は、あの二人に苦しめられてしまうのね」


 私は気分が落ち込んで、うつむいて応えた。


 アルフォンスの明るい声が、耳に入ってくる。


「そう心配すんな。きちんと昨晩、奴らは≪強制契約ギアス≫で魂を縛っておいた。

 今後は悪さをするたびに、想像を絶する苦痛を味わいながら寿命をすり減らすことになる。

 知能が少しでも残って居れば、死ぬ前に自分の行いを見直すだろう」


 私は驚いてアルフォンスの顔を見る――不敵に微笑むその瞳に、嘘は感じられない。


「……そう、それならよかった。

 でもこれで、私の寿命が十年減ってしまったのね」


 アルフォンスが大袈裟に手を振って否定してきた。


「あー、その話だがな、代償を変えることにした。

 あんた、俺の嫁になれ。

 十年間だけ俺の嫁になれば、それで解放してやる」


 私はきょとんとアルフォンスの目を見つめて応える。


「嫁? 王子に嫁げと、そう言ったの?」


 アルフォンスが私の目を見て、楽し気に笑みを浮かべる。


「ああそう言った。俺はあんたを気に入った。

 公爵令嬢なら、家格に問題もない。

 ドミニクスのうるさい爺共も、大人しくなるだろうさ」


「でも私、もう家を追い出されたのよ?

 王子に嫁ぐ資格なんてないわ」


 アルフォンスが疲れたようにうなだれた。


「だーかーらー、昨晩あんたの親父にも会ってきたんだよ。

 親子の縁切りも取り消させた。

 あんたは今も、ララエラ・グリュンハイム公爵令嬢だ。

 家臣にも親父にも、文句は言わせねーさ」


「……もしかして、そのためにお父様に会ってきたの?

 私と婚姻するために、除籍を取り消させたというの?」

 

 どこか恥ずかしそうに、アルフォンスは窓の外に目を向けていた。


 そのほんのりと赤く染まった頬を見て、私はクスリと笑みをこぼす。


「……ねぇアルフォンス、十年だけであなたは満足なのかしら?」


「……どういう意味だ?

 魔族の嫁なんて、十年やるのも苦痛だろう」


「そんなことはないわ。

 エリック殿下と婚姻することを思えば、比べ物にならないくらいよ。

 あなたの妻になら、なってあげていいわよ?」


 弾かれたようにアルフォンスがこちらに振り向いて、私の目を見つめた。


「……本気で言ってるのか?」


 私はニッコリと微笑んで応える。


「ええ、本気よ?

 アルフォンスとなら私、うまくやっていける気がするの。

 魔族とか人間の違いなんて、大した問題ではないわ。

 そもそも、もう人の血が混じっているのでしょう?

 あなたも純粋な魔族ではないのだし、気にする事はないわよ」


 アルフォンスが呆れたように笑っていた。


「ははは……あんた、本当に面白い感性をしているな。

 普通、魔族なんて忌み嫌うもんだ。

 正体を知って嫁いでくる人間は、あんたが初めてかもしれないな」


「婚姻なんて、フィーリングが合えばなんとかなるものよ。

 その点でエリック殿下は最悪だったわね。

 お父様が決めた婚約でなかったら、最初からお断りしていたところよ」


 大笑いを始めたアルフォンスと私は、ドミニクス王国に着いてからのこれからを話し合った。


 なぜ魔族が人間の世界で王族をやっているのか、ドミニクスがどんな国なのか、そんな話を聞きながら、私は微笑んで応えた。


 ――やっぱり、アルフォンスは悪い人じゃないわね。この人なら、きっと大丈夫!


 私は確信を胸に、温かい心をアルフォンスと通わせていった。


 馬車は朝もやの中を、静かにドミニクス王国へと走っていった。





 やがて、ドミニクス王国の第一王子が妃を娶った。


 とても美しい王子妃として、『美男美女の夫婦』と国民たちに愛された。


 彼らはドミニクス王国のために尽力し、国を豊かにし続けた。


 やがて第一王子が王位を受け継ぎ、彼らは国民の笑顔を守るために奔走した。


 子供にも多く恵まれた王と王妃は、晩年まで仲睦まじく寄り添っていたと伝えられる。


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