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俺は普通の高校生なので、  作者: 雨ノ千雨
3章 俺は普通の高校生なので、帰還勇者なんて知らない
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3章15 綺リ衆ヲ邪ニ濁シ五ツ頸並ブ夜ノ果テニ澄マス心、ハ害 ⑥

 屋上――


『世界』から隔離された其処は二人だけの世界。



 他には誰も居ない世界に金属を打ち付け合う音が響いている。


 黒いナイフと黒いナイフが奏でるそれは殺シノ調ベ――



「あんたが……ッ!」

「うるせぇ……ッ!」



 感情で叫んでナイフを叩きつけ、それを互いに受け止める。



「なんで……ッ!」

「知るか……ッ!」



 人を殺める行為。


 その恐ろしさに足が竦まないように希咲は怒りの熱量を使う。


 冷静さは保とうとしていたものの、刃を打ち付ける度にどんどんと感情的になっていく。


 意図せずとも、溜めていたものが外へ噴き出していった。



「ウソつき……ッ!」

「お前もだろッ!」



 弥堂も――


 彼には珍しく感情的になっている。



 弥堂には特段希咲へのわだかまりなどない。


 気に入らないという感情はあったものの、それは別に憎むというほどでもなかったはずだ。



 だが、過去の記憶を掘り起こされたことで、腹の底で燻っていた種火が火勢を上げている。


 その怨嗟の焔は矛先を求める。


 弥堂はその乱暴な気持ちをただ、目の前の女にぶつけた。



「ゼッタイ許さないッ!」

「くたばれッ!」



 剥き出しになる暴力性。


 最も原始的なモノの一つである互いのソレは絡みあい。


 そして混ざり合って、よりお互いを昂らせていく。



 刃と刃を押し付け合う。


 交差した黒刃。


 その黒十字越しに視線をぶつけあう。



「愛苗は……! 愛苗はあんたを……ッ!」

「知ったことか……ッ!」


「あんたのせいで!」

「黙れッ!」


「後から出てきたくせに!」

「知るか!」


「あたしの方が――ッ!」

「チッ――!」



 鍔迫り合いをしながら身体を傾けた希咲が回し蹴りを放つ。


 吹き飛ぶ方向を調整しながら弥堂は肩で受けた。


 ゴロゴロと地面を転がり、先程弾き飛ばされた拳銃を拾う。



「お前のせいだ――ッ!」



 即座に銃口を向けて引き金を引いた。



「うっさい――!」



 希咲は飛んでくる銃弾をナイフで弾きながら突っこむ。



 一瞬で距離は詰められた。


 弥堂は至近距離で銃口を彼女に押し当てるようにして引き金に指をかける。


 だが――



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【特殊スキル:盗賊】

«幸運を奪う手(ピックラック)»――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「なに――ッ⁉」



 弥堂の手から拳銃が消えた。



「――後なのに……ッ!」

「グッ……⁉」



 その拳銃は希咲の左手にあり、銃底で側頭部を殴られた。


 希咲はその勢いのまま拳銃を放り捨て、右手のナイフを振る。



「あたしの方が先だったのに……ッ!」

「知るか!」



 弥堂は自分のナイフでどうにかその斬撃を止めた。



「後から出てきて、メチャクチャにして!」

「だったらお前が付いていればよかった!」


「そうよ!」

「紅月たちと手を切って、お前が傍にいればよかったんだ!」


「わかってるわよ!」

「それでも彼女は救えなかっただろうがな!」


「黙れ!」

「お前は中途半端なんだよ!」


「うるさいうるさいうるさい……ッ!」



 希咲はさらに激昂する。


 弥堂も同様に。



「だったらなんであんたが!」

「あぁ⁉」


「なんで愛苗を救ってくれなかったの⁉ 勇者のくせに!」

「そんなものはクソだ!」


「プァナちゃんだって!」

「お前になにがわかる!」


「わかんないわよ! でも、あんたがわかんないことはわかってる!」



 感情のままに繰り出される希咲のナイフと蹴りの連続攻撃に押され、弥堂はたたらを踏んだ。


 少し空いた距離も、もう止まらなくなった彼女がすぐに詰めてくる。



「あの子……、あんたに嫌われてるかもって、泣いてた……ッ!」

「なんだと……?」



 憶えのないことを言われ、弥堂は戸惑う。



「そうじゃないでしょ! そんなことないのわかってる! でもあの子はそのまま――」

「なんのことだ!」


「ルビアさんだって!」

「あのクソ女がなんだってんだ!」


「クソはあんたよ! あんたと、あたしだけよ!」

「うるさい黙れッ!」



 何を言われているのかわからないが、弥堂は湧いてくる感情のままに打ち返す。


 その攻撃は全て躱されるか受け止められるかして、そのことに余計に苛立った。



 理由はないはずなのに。


 彼女への感情などないはずなのに。



 希咲の激情に引っ張られるように、引き摺りだされるように。


 怨嗟の焔が身体の中で暴れる。



「他の人だって!」

「お前が語るな!」



 希咲もまた自身の感情がよくわからなくなっていた。


 愛苗のことでの怨みはある。


 だけどそれだけでなく。


 目の前の男が“こう”であることがどうしても許せない。


 ただただ怒りが爆発を続ける。



「ヒドイことすんな!」

「お前が失敗したんだ!」


「ヒドイことしないで!」

「しつこい!」



 それは怨みではなく、哀しみだ。


 不足した言葉でそれを吐き出し、ぶつける。



「なんでそんななの!」

「関係ない!」


「そのまんまでいいわけないじゃん!」

「ほっておけ!」


「やだ!」

「死ね!」


「やだ! ずっとそのまんまじゃ……!」

「死ねば終わる!」


「ばかッ!」

「うるさい!」


「それじゃずっとみんな悲しいじゃん!」

「誰もいない!」


「あんただって!」

「ぐぅ……っ!」



 冷静さを欠いた弥堂は体捌きを誤りバランスを崩す。


 感情の圧しあいに勝ったのは希咲だ。



「愛苗をかえして――!」



 希咲の前蹴りが弥堂の腹に直撃した。



 弥堂は地面と平行に吹き飛ぶ。


 飛んでいく先にはコンクリで出来た水飲み場があった。



「――ちぃ……ッ!」



 舌打ちをして、弥堂は身を捩る。


 水飲み場に足の裏から着地し足首を捻った。


 仮の足場となったそれに零衝を叩きこみ、水飲み場を粉砕した。



「く……ッ!」



 破片に巻き込まれながら床を転がってすぐに立ち上がる。


 希咲は追ってこず、荒くなった息を整えるようにして弥堂を見ていた。



(こいつ……ッ)



 破壊された水道管から噴き上がる水が落ちてきて、弥堂は頭から被る。


 それによって少し熱が冷めた。



 弥堂はカッカする頭の中も冷ますために【領域解放(ゾーンブレイク)】を使う。


 いつものような効き目はないが、少しだけ冷静になった。



(厄介だな……)



 公平に希咲の戦闘能力を評価する。


 スピードが速いというのは単純に手に負えないと感じた。



 先日戦ったクルードにせよ、そしてジルも――


 自分より速い相手との戦闘経験はいくらでもあるが、希咲と決定的に違うところもあった。



 今名前を挙げた連中も速いのだが、彼らは基本的に目の前で足を止めて戦う。


 希咲の厄介なところは同じ位置に長居せずに、あの速度で間合いを出たり入ったりするところだ。



 彼女は悪魔と違って弥堂を侮っていない。


 見下して油断してくれないと、戦力の不利を引っ繰り返しづらいのだ。



 希咲も同様に、少し自分を落ち着けようとしていた。


 自分が彼に何を叫んでいたのか、わけがわからない。



 愛苗のことで彼を憎んでいるのに。


 それだけでいいのに。


 彼が“ああ”であることを何故か怨み、それを彼自身にぶつけようとしている。



 愛苗のことと弥堂のこと。


 それから夢で出会った人々。


 その全員への感情をごちゃ混ぜにしてしまっている。



 その熱は確実に彼女に戦う力を与えてくれているが、しかしそれだけでは勝てないとも思った。


 ちゃんと考えてきたとおりのプランにハメなければならない。


 それには――



(あの消えるやつ。思ったよりも厄介ね……)



 実際に目の前で自分に使われてみて、想定よりも危険なスキルだと感じていた。



(ただ消えるだけじゃない。消えた瞬間――ほんの一瞬だけ自分が何をしていたかわかんなくなる……)



 戦っていたはずの相手が『世界』から消える。


 姿が消えるだけでなく、その存在がなくなる。



 人々が愛苗を忘れてしまったように。


 ほんの僅かな一瞬だけ、自分が誰と戦っていて何をしようとしていたのかを忘れる。


 その隙間のような時間が出来てしまうのだ。


 それが非常に危険だと感じた。



(でも、タイミングはつかめた……)



 そこに注意をしておけば、どうにか出来るとも思えた。


 使われた後の対処も準備が出来ている。



(“緊急回避”のCTももう終わった――)



 希咲は勝負をキメにいくことを決意した。



「【舞踏剣・双極(ソードダンサー)】――」



 ナイフを双剣に変えて希咲は走り出す。


 弥堂は足元の破片を彼女目掛けて蹴りつけた。


 握り拳よりも大きいコンクリの塊が希咲の顔面に迫る。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【剣術スキル:LV6】

……

戦技(ストライクアーツ):剣術】――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「《バニッシングピアース》――」



 ほんの一瞬だけ生じる無敵判定。


 希咲の身体が破片を通り抜ける。



「なに――ッ⁉」



 気付いた時には間合いを詰められていて、弥堂の顏の数cm先に希咲の剣先がある。


 回避は間に合わない。



「【falso(ファルソ) héroe(エロエ)】――」



 それを使うしかなかった。


 弥堂は間一髪で希咲の刺突を避ける。



 だが、それは希咲の狙い通りで――



「【無尽の害意(ダガーハード)】――」



 希咲は双剣を消して高くジャンプした。



「“魔力装填(リローテッド)”……ッ!」



 2つの魔石を消費して黒い指輪に魔力を注ぎ込む。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【称号・アイテムマスター】

・対象【無尽の害意(ダガーハード)】(所有率:99%)


【魔剣士:LV4】

【EXスキル:魔剣覚醒】

・権能:鴉羽々斬(よみのはばきり)


【短剣スキル:LV8】

【投擲スキル:LV8】

【射撃スキル:LV7】

【マルチショット:LV6】

【鷹の目:LV9】

……


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 空に黒い羽が無数に生成される。


 希咲はそれを従えるようにして空中に立った。



「≪アド・カース≫……」



 口の中で呟きながら眼下にある屋上の一帯を見下ろし――



「«鴉羽々斬(よみのはばきり)»――ッ!」



 その命に呼応して彼女の背の黒い翼が大きく羽ばたく。


 地に向けて無数の黒いナイフが射出された。



「これは――ッ⁉」



 その現象に弥堂は驚く。


 これでは逃げ場がない。



 屋上というそう広くはないスペースに限定されているせいで、なおさら身の置き場がない。


 またここは結界の中でもある。


 聖剣で破壊しない限り、弥堂に結界を解く術はない。



 今はまだ『世界』から消えている最中だが、その時間もまた限られている。



 希咲は空中で続けてナイフを生成し続けながら、弥堂が姿を現すのを待つ。



(広範囲攻撃に弱い!)



 これは夢で見たアスの解説から考えた攻撃手段だった。



(あとは聖剣は……)



 希咲はそれを警戒している。


 ここまで弥堂は聖剣を出していない。


 隠しているのかもしれない。


 だけど――



(さっき、あたしを仕留めにいく時、聖剣を使わなかった……)



 彼は出し惜しみをするような性格ではない。


 “緊急回避”の存在を知らなかった以上、あの場面で彼が様子見をするとは思えなかった。


 殺す時、殺せる時には確実に殺せる手段を使うはずだ。



(あいつ、聖剣を持ってきてない……?)



 アムリタ事件でも使っている様子がなかったので、もしかしたら聖剣はもう無いのかもしれない。



「クソが……ッ!」



 弥堂はタイミングを計り、黒いナイフをグッと握って『世界』に戻る。


 姿を現すなり、その場所を狙ってきたナイフを斬り払った。


 数本のナイフを撃ち落としスペースを確保する。



 しかし――



「いけ――ッ!」



 どうやら屋上の空間全体に適当に掃射しているわけではなく、狙いをつけることが可能なようだ。


 全てのナイフが弥堂目掛けて殺到する。



「チ――」



 ただ、そうすれば他の空間に安全な場所が出来る。


 弥堂はナイフを斬り払いながら走った。


 しかしその圧倒的な物量には敵わない。



 何十回か切り払った後に、防御が間に合わなくなった。


 幾本ものナイフが弥堂の身体を掠めて切り傷を増やしていく。



 ここまではどうにか凌いできたが、目に見えて弥堂はダメージを負った。



「く……、【falso(ファルソ) héroe(エロエ)】――」



 弥堂はたまらずにもう一度『世界』から逃げる。



 その内に全弾を撃ち尽くしたのか。


 希咲の黒い翼は消え、彼女は屋上に降り立った。



 一息をつくこともなく、弥堂は希咲との距離を詰めに行く。



 希咲のすぐ近くの虚空に手のひら大の赤い宝石のような石が2つ現れる。


 プシューっと空気が抜けるような音と同時に、その石から煙が上がり色が失われた。



「«鴉羽々斬(よみのはばきり)»――ッ!」



 希咲が弥堂の方へ手を翳しそう叫ぶと、彼女の背後に黒い翼がまた現れた。


 どうやら連発可能なようだ。



 弥堂は舌打ちをして急ブレーキをかける。


 そして横方向に走り出した。


 その後をナイフ群が追う。



(アスとやりあった時と同じだな……!)



 弥堂は心中で毒づいた。


 広範囲攻撃で【falso(ファルソ) héroe(エロエ)】を封じられ、そして遠距離攻撃で反撃も封殺される。


 相手にやられていることも現状がジリ貧なことも、あの時と全く同じだ。



(ん? アス……?)



 港でのアスとの戦いを思い出した時、ふと弥堂は違和感を覚える。


 アスにではなく、希咲にだ。



『あんたのスキルとそっくりだって?』



 先程彼女はそう言った。



 確かに言われてみれば自身の【falso(ファルソ) héroe(エロエ)】と彼女の“緊急回避”は似ているかもしれない。


 だが弥堂はあの時にそっくりだとは思わなかった。



 何故か――


――それは弥堂は自分の技はよく知っているが、希咲のスキルのことなど知らないからだ。



 なのに、何故希咲は“そっくり”だと思ったのか――


――それは彼女は自分のスキルも、弥堂の技のことも、どちらも知っているからだ。



 では、どうしてそれを知り得たのか――


――それは夢の中で弥堂の技を見たから以外にない。



(そうか……)



 おそらくあの港でのアスとの戦いだ。


 ちょうど最近夢で見た。


 ご丁寧に、あの時にアスは弥堂の様々な技術を考察して解説までしていた。



(それなら――)



 弥堂は攻勢に出ることを決める。



 とはいえ、どうにか近づいたとしても希咲にはまた“緊急回避”で逃げられる。


 だが、彼女はあれが【falso(ファルソ) héroe(エロエ)】とそっくりだと言った。



(インターバル――)



 一度使ったら次の使用までに1分ほどを空けなければならない。


 アスはそのように講釈を垂れていた。


 それは半分ほど正解だ。


 正確には、連続使用はやろうと思えば出来る。


 ただ効果時間が短くなるし、身体への負担が大きくなるだけで。



 しかし、そのあたりのことはどうでもよく。


 それを聞いた上で、『そっくり』だと希咲が言ったのなら――



(――あいつも連続使用はできない)



 断言は出来ないが、その可能性は高いと思えた。


 それに、このまま逃げていてもどうせもういくらももたない。


 そこに賭けてみるしかないだろう。



 弥堂は走り抜けながら落ちていた銃を拾う。


 そして身体の向きを変えて銃口を希咲へ向けた。


 だが――



「なに――?」



――引き金を引いても弾が発射されなかった。


 思わず銃口を覗く。


 すると――



「――ばーか」



 声に反応して希咲へ視線を戻す。


 彼女は左手に何かを持って、手首をプラプラと揺らしていた。


 それは銃のマガジンだった。



 希咲はペロっと舌先を出して、マガジンを遠くへ放り捨てる。



「貴様――ッ!」



 弥堂は用済みになった拳銃を希咲へ投げつけて、特攻を開始した。



「やらせるか……ッ!」



 希咲は首を傾けて拳銃を避けると、射撃目標を指定するように弥堂へと右手を翳す。


 ナイフをまた射出しようとするが――



 その前に弥堂はそこらに落ちているナイフを何本か拾って、逆に希咲へと投擲をした。



「んの……ッ!」



 希咲は苛立たしそうにその場を跳び退る。


 その隙に――



「【falso(ファルソ) héroe(エロエ)】――」



 弥堂は再び、『世界』から自分を剥がした。


 そうして希咲が見失っている間に近づいて、彼女の前で姿を現す。



 左手で彼女の腕を掴み、右拳を胸に押し当てる。


 間髪入れずに爪先を強烈に捻った。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【体術スキル:LV9】

【軽業:LV10】


戦技(ストライクアーツ):回避EX】≪緊急回避(エスケープ)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 だが、威力が発生する瞬間に左手の中から彼女の感触が消える。


 やはり回避されてしまった。


 だが――



 その一瞬後、弥堂の左手が後方に引かれる。


 弥堂はグルっと背後に振り返った。



 その方向の10mほど先に希咲の姿がある。


 掴んだ際に彼女に霊子の糸を括りつけておいたのだ。



「【falso(ファルソ) héroe(エロエ)】――ぐっ……!」



 インターバルを無視してそれを発動した瞬間コメカミがズキリと痛む。


 同時に自分自身の魂の根幹のようなところが、ギシリと軋んだ気がした。



 それらを全て無視して、弥堂は【身体強化】を全開にする。


 回避行動が終わったばかりの希咲の方へ走った。



 すぐに元の世界へと戻ってしまう。


 だがその時にはもう希咲に肉薄していた。



「――ッ⁉」



 希咲の目が驚きに見開かれる。



「【這い寄る悪意(ディスマリス)】――」



 弥堂はさらに霊糸を数本生成して、それを希咲の肌が剥き出しになっているお腹や太ももに巻き付けた。


 彼女が一瞬それに気を取られた時には、もう弥堂の準備は整っている。



(殺った――)



 必殺のタイミングで零衝が繰り出される。


 彼女の鳩尾に当てた拳には確かに反動が生じ、威は徹る。



 バリンっと――


 硬質な音を幻聴するほどの手応えを、弥堂は拳に感じた。


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― 新着の感想 ―
七海から、まるでホワイトアルバム2のような「私の方が先だったのに」という台詞が飛び出すとは。ただ、時系列で言えば、先に認識(あるいは見かけて)いたのは愛苗の方だったような気がします…… 焦燥の混じった…
まあ、部外者の希咲にあんな事言われたら流石に弥堂もお冠だね。というかもっとキレると思ったが、割と冷静に戦ってるな。
弥堂くん思った以上に粘ってるね
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