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俺は普通の高校生なので、  作者: 雨ノ千雨
3章 俺は普通の高校生なので、帰還勇者なんて知らない
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3章11 5月11日 ①

「――勇者とはなんだい? 弥堂くん」



 5月11日 月曜日。


 新たな一週間。


 それはサバイバル部の部長である廻夜 朝次(めぐりや あさつぐ)のそんな一言で開始された。



 弥堂 優輝(びとう ゆうき)もまた例によって朝練に参加するために学園の始業前からこの部室に来ている。


 廻夜の問いにとりあえず何かを答えようと彼が口を開こうとした時――



「…………」



――チラっと、廻夜の顏が横に向いた。



 彼は今日も室内であるにも関わらずトレードマークの色の濃いサングラスをかけている。


 そのため彼の視線がどこを向いているのかは外からは窺いづらいのだ。


 視線だけを動かしても横をチラ見していることが弥堂に伝わりづらい。


 そのことに配慮して、顏ごと横を向いたのだろう。



 それはつまり、察して触れろという部長からのメッセージだ。


 一体なんだと、弥堂も廻夜が顔を向けている方向を視線で辿る。



 部室の中央付近で弥堂と廻夜は向かい合って座っている。


 その長机から床を辿っていくが、特になにかを見つけることもなく窓際の壁にまで視線が触れた。


 特筆するようなモノは特に何もない。



「……部長。何か気になることでも?」



 仕方なく、弥堂は廻夜に直接訊ねた。



「い、いや、何というか……」



 廻夜は口ごもる。


 だが、その間も彼の顔はチラチラと何度も窓際の方へ向けて動かされていた。



 自分が気付いていないだけで、本当に何かがあるのだろうか。


 弥堂は今度は魔眼に魔力を流して、もう一度確認してみた。


 だがやはり、特に何も見つからない。



「部長? あちらに何かありますか?」



 これ以上は考えるのが面倒になり、弥堂は結局もう一度廻夜に訊ねた。


 すると――



「……あぁ、うん。出来ればちゃんとキミの口から説明して欲しかったんだけれど、もう仕方ない。僕もこれ以上は見過ごせないよ……」



 月曜の朝っぱらからどこか疲れたような声で廻夜は切り出した。



「僕が気になるのはね、アレだよ――」



 そう言って彼が指差したのは、この机と窓際の間にある床だ。


 しかしそこは先程から何度も見た場所だ。



「?」


「いやいやおかしいでしょ、弥堂君。わからないってことはないでしょ……!」



 弥堂が首を傾げると廻夜は声を荒らげて椅子から立ち上がった。



「あそこ! あそこ……っ!」



 廻夜が指を指して強調をしたのは床の一点。


 それはただの床でもある。


 だけど一点、不可思議なことがあり、それは――



「取っ手! なんか床に取っ手が付いてるじゃない!」



――床下収納を開く為の持ち手のようなものが床から生えていた。


 さらにその取っ手がついている床だけは鉄板になっており、周りの床板とは色からして異なる。



「あれがどうかしましたか?」


「いやいやどうかしたじゃないよ!」



 だが、それのなにがおかしいのだろうと弥堂が不思議そうにすると、廻夜は堪らずに叫んだ。


 何故なら――



「――だって、あんなもの! 連休前にはなかったじゃない……!」



 それがG.Wが明けて再開された学園に来てみれば、いつの間にかあのような不審な物が床から生えていたのだ。



「僕だってね? がんばってスルーしてたんだよ! 前回の部活の時にも気付いてたけどさ! キミがなんか言ってくれるかなって。でもなんにも説明がないわけじゃない? そうなると先に触れたら負けかなって思ってさ。でもやっぱり無理だよ。スルー出来ないよ。弥堂君。あれは一体全体何なんだい⁉」


「なるほど」



 必死に訴えかけてくる上司の言葉に、弥堂は冷静に頷いた。



「やはり報告は必要ですか。カタチだけでも」


「え? カタチ……?」



 ああは言っているが、廻夜には全てがわかっているはずだ。


 なにせ廻夜 朝次といえば全知を体現したような人物だ。


 彼に知らないことなど、何もない。



 その上で弥堂に報告を求めてくるのはどういうことか。


 それはつまり、弥堂がこの件をしっかり把握しているのかどうかを見せてみろと――


――そういう意味になる。



「ご報告します――」



 一瞬頭の中にイカレた女の顔が浮かんだが、それは気のせいだと意思の力で振り払い、弥堂は報告を開始する。



「あれは通用口です」

「うん」


「…………」

「……?」


「…………」

「……あれ? 弥堂君?」


「は。なにか?」

「え? それだけ?」


「はい。報告は以上です」

「いやいやいや……」



 端的に過ぎる弥堂の報告に廻夜はまた興奮しだす。



「それだけってことはないだろ?」

「はぁ。恐縮です」


「ほら、またそれだ。弥堂君、僕はね前から思っていたけど……」

「部長。それはもうやりました」


「おっと、そうだった。そうじゃないよね。あのさ、弥堂君。つかぬことを訊ねるけれど、その通用口とはどこに通じているのかな?」

「は。下です」


「ま、まぁ、床に付いてるんだからそりゃそうだろうけど……。そもそもなんで?」

「連休中の改装工事に紛れ込ませて作らせました」


「そ、そう……」



 微妙に答えになっていない弥堂の答えに、廻夜は質問を重ねるごとに困惑を強めていった。



「これは何に使うのかな?」

「申し訳ありません。まだ使えません。もう少しで準備が完了しますので、今暫しお待ちください」


「うん? 何か僕が欲しがって作らせたみたいなニュアンスに聴こえるけど、まぁいい。じゃあ、聞き方を変えるけれど、そもそもこの下には何があるんだい?」

「我々のカンテラです」


「か、かんて……? なんて?」

「カンテラです」



 弥堂は精悍な顔つきで言い切るが、廻夜の理解は一つも追い付かない。



「え、えっと、それは何なのかな?」

「早い話、我々サバイバル部の下部組織です。下部なので下にあります」


「うん……、うん? んん……? そ、それで? 結局それは何をする組織なのかな?」

「ふむ……」



 弥堂は少し考えてから答える。



「育成、ですかね……」


「いくせい……」



 宙空を見上げながらどこかフワっとした感じで弥堂は言う。


 言われたその言葉を廻夜は口の中で繰り返してみた。


 正直、この人なにを言っているんだろうと廻夜は思ったが、しかし彼はこれでも真面目な部員だ。


 一応真剣なのかもしれないと、育成組織について考えてみる。



「え、えぇっと、弥堂君。育成して、どうするのかな?」

「は。下部組織で見所のある者や成果を上げた者はトップチームデビューが出来ます」


「と、とっぷちーむ……?」

「我がサバイバル部のことですね。部なので。トップです」


「そ、そうかい……」



 だが廻夜くんには彼の考えていることは何もわからなかった。


 全体的に意味不明なこともそうだが、それ以前の問題もある。



 この私立美景台学園では、部活動としての活動を認められるには条件がいくつかあり、その内の一つに『部員数が5人以上』というものがある。


 今期のサバイバル部の主力となる構成員は2名だ。


 それは部長である廻夜と、平部員の弥堂の2人だけである。



 部の名簿には一応5名の名前が記入され申請されている。


 しかし、残り3名の内の1人は弥堂の隣のクラスの山田君で、彼は名義貸しをしているだけの幽霊部員のようなものだ。


 そしてさらに、残りの2名は架空の人物をでっちあげて適当な名前を記入しただけである。



 部の創立時にメンバー集めに困った廻夜がワンチャンこれでいけないかなと、廻夜+存在しない人4名でやってみたら何故か通ってしまったのだ。


 学園側もまさか架空の人物をでっちあげてくることは想定外だったようだ。


 去年弥堂と山田君が加入したことにより、存在しない人は残り2名にはなったものの、未だに実質的な構成員が足りていないのである。


 そんな事情がサバイバル部にはあった。



「――ってわけだからさ。これがバレると僕たちは規定通りに同好会に格下げされちゃうんだよ。こないだ新入部員がどうのって話したじゃない? あれは割とマジで切実な話でもあるんだよ」


「はぁ」


「だからさ弥堂君。そもそもトップチームであるところの我がサバイバル部が人員不足だって時に、下部組織なんか作っている場合じゃないでしょ? 僕たちはこの問題にきちんと向き合わなければならないんだ」


「ですが部長。昨今の移籍金は世界的に高騰しています。即戦力の人材を獲得してくるのは容易ではありません。ましてやスター選手を連れてくるなども夢のまた夢です。しかし、自前の育成組織が充実していれば、生え抜きのスター候補をタダ同然でスカッドに組み込むことが出来ます。仮にトップチームからは漏れてしまった優秀な人材がいたとしても、彼らを他所に売ることで資金に換えることが出来ます。地道にそれを続けていけば、我々は経済力でもトップクラスの部活動となるでしょう。故に、カンテラの運営に手を抜くべきではない。カンテラーノこそが我が部の誇りであると。俺は強く主張します」


「お? おぉ……? おん……?」



 いつもとは立場が逆転。


 珍しく早口で長口上を捲し立てる弥堂の勢いに廻夜は押された。


 あくまで勢いだけで、言われていることは何もわからない。



 そもそも部員を売るとはどういうことだろう?


 どう聞いても人身売買だ。


 部活ってそういうものじゃないよなぁと頭を悩ませる。


 しかし――



「――わかった!」



――それでも廻夜は弥堂の主張を一旦受け入れることにした。



「いつも自動相槌マシーンのようなキミがそうまで熱く主張するんだ。その情熱を無碍にすることは僕には出来ないよ。キミの信頼する立派な部長としてね。そうだろう? 弥堂君」


「恐縮です」



 どういうことかよくわからなかったが、弥堂はとりあえず恐縮しておく。


 自分の意見が通りそうだったので、余計なことを言うべきではないと考えたのだ。


 彼らのコミュニケーションはいつも成立していそうで成立していない。



「と、ところでさ、弥堂君? 通用口ってことはあれは下の階に通じてるってことだよね? それって大丈夫なのかい?」


「ご安心を。あれはこちら側からしか開かないように細工されています。資格のない者はこの門を通ることは出来ない。プロの世界とはそういうものです」


「そ、そう……、あ、いや、そういうことじゃなくってさ。あれの工事のお金とか、そもそも学園はこのことを知ってて許可しているのかとか。そういうのって大丈夫なんだよね? こんな大改装のことを部長である僕はなんにも知らなかったけれど、そのへんの申請ってちゃんとされていて、ちゃんと認可されているんだよね……?」


「ふ、お戯れを」


「どういうことなのぉ⁉」



 弥堂が薄く息を漏らして意味深なことを言うと、廻夜は頭を抱えて叫んだ。


 こんなんでも、彼らは今日も仲良しだった。






 改めて――



「――勇者とはなんだい? 弥堂君」



 廻夜は問う。


 下部組織のことは一旦聞かなかったことにするということで合意に至った。



「鉄砲玉ですね」



 弥堂もまた端的に答える。



「んん? てっぽう……?」


「はい。敵の親玉を仕留めて来いと命令されたヒットマンで、その途中でもなんかいっぱい殺します」


「んー……、間違ってはない……? でも惜しい! 惜しいよ弥堂君!」


「恐縮です」



 実体験を話したのに微妙に不正解扱いにされて弥堂は気分を害する。


 しかし上司が不正解だというのなら仕方ないと、口を慎んだ。



「そうじゃなくってさ弥堂君。僕は前回の活動の時に何て言ったかな?」


「前回? あぁ……、そうですね――」



 弥堂は記憶の中に記録された前回の部活のことを思い出そうとするが――



「――そう! そのとおり! 最初に勇者だという称号や資格を与えられたから勇者なのではなく。そう呼ばれるに相応しい実績を先にあげたからこそ、勇者と呼ばれるようになった人! そうじゃないと僕は推せない。よく覚えていたね弥堂君。キミの記憶力は流石だよ」


「…………」



 弥堂が答える前に廻夜が先に喋り出してしまった。


 まぁ、手間が省けていいかと、弥堂は黙っておく。



「前回はそんな風に、帰還勇者と勇者そのものについて議論をしたね。じゃあ今回はだね、勇者のチカラと、勇者とは人々にとってどういった存在なのかということを考えてみようぜ」



 それが今朝の朝練のテーマのようだ。



「まずは勇者のチカラだけど、まず強い。とにかく強い。これに限るよね。特殊能力がとか、そういうのもあるかもしれないけれどさ。メタとかハメとかそういう小手先のことじゃなくって、一般的にパッと浮かぶイメージとしては、オールマイティになんでも出来るって強さだよね。剣も、魔法も、なんだって出来て、どれも強い。その圧倒的な強さで敵を捻じ伏せる。それこそが勇者のチカラである。これが我々サバイバル部としての公式見解だ。いいね?」


「恐縮です」



 そうだったかな? と弥堂は内心で首を傾げる。


 全く身に覚えがないと思いかけるが、先日の港での悪魔との戦いを思い出す。


 確かに勇者のチカラに覚醒した時には、廻夜の言うようなことでほぼ間違いがなかった。


 ならそれでいいかと、口を挟まないでおく。



「じゃあ次は、勇者とは人々にとってどういう存在か。前回に多少このことに触れたかもしれないけれど、今日はもう少し具体的に考えてみよう。前回はどうしても『帰還』の部分にフォーカスせざるをえなかったからね。勇者でなかったとしても、異世界に転移だの転生だのしてしまうなんてことは大事件であり、僕たちサバイバル部にとっても他人事じゃない。なんせ僕たちの活動目的は『あらゆる状況で生き残ること』だ。それにはもちろん異世界の環境も含まれる。だから我々にとっても大きなテーマだ。これまでに熟してきた課題同様にさ、『普通の高校生である僕たちがもしも異世界に……』って。そんな時にどうやって生き残ればいいのかを予め考えておかなきゃならない。特に今期はこの異世界のような荒唐無稽な状況にもより対応していくと既に決まっている。ならば、サバイバル部にとって避けては通れないテーマだ。そうだね、弥堂君?」


「はぁ、まぁ……」



 もしも異世界に行ったら――など、普通の人間に言っても誰もまともに相手をしないだろう。


 しかし、実際に既にそれを経験してきている弥堂にとってはそうではない。


 去年に、廻夜からサバイバル部に勧誘をされた際にも、彼はこの異世界についてのテーマを持ち上げていた。



 生き残る方法を模索する。


 徹底的にやる。


 それには異世界に行った時の想定も含まれる。



 そんな勧誘文句だったが、これは弥堂には刺さった。


 もしも異世界に渡る前の、異世界に行きたいなどとぼんやり考えていたクソガキが、ここまで徹底的に考えて準備をしていたのなら。


 そう思うと、廻夜は立派な男だと感じたのだ。


 このことも要因となって弥堂はサバイバル部に入部することにした。



 とはいえ、弥堂にとってはそれはもう終わった話なのだが、



「ところで、それが次のテーマになるのですか?」


「うん? いや? 全然だよ? 我々はまだそこに着手できる段階ではないだろう。人手不足もあるしね。だから先にやらねばならないテーマや解決しなければいけない問題が多い。キミが異世界に強い関心を持ってくれたことは僕は部長として誇らしいけれど、だけど申し訳ない。もう少し異世界についての議論は待って欲しい。異世界に行った時よりも、異世界に飛ばされそうになった時にどう回避するかっていうのが手前にもあるしね。順番に身近なことから熟していって、来年くらいにはキミと異世界について熱く語り合いたいものだよ! だから今は異世界の話をしたいという気持ちを抑えて欲しい。本当にそれは申し訳ない。はい謝った! とはいえ、異世界ってのは定番中の定番だからさ、我々としても常に意識だけはしておきたいよね?」


「いえ、俺は別に――」



 そもそも来年には廻夜はもう卒業して部に居ないわけだし、それは「どうでもいい」ということではと思ったが、弥堂が何かを言う前に廻夜は次に進んでしまう。



「――はい! というわけで、勇者はオールマイティに強い。強さはマストだけどそれ以上に、人々にとってどういう存在なのかっていうのが重要だ。キミがさっき言ったような『いっぱい殺した』――これだけじゃあただの殺戮兵器だし大量殺戮者だ。それでは日陰の存在になってしまう。勇者はそれじゃいけない。もっと光の下を堂々と、人々の羨望の眼差しを受けて歩けなきゃいけない。ふふ、やってることは同じなのに、おかしな話だよね」


「…………」



 それは弥堂には身に覚えのある話だ。


 魔王の首を掲げ、しかしその後は世界中に生命を狙われた。


 やるべきこと、やったことはきっと同じで、多分やりかたが悪かったのだろう。


 それはもうずっと前に自分で納得している。



「勇者は人々の希望でなければならない。人々の前に立つ。その姿に人々は希望を感じる。どんな絶望的な状況、戦場でも。そんな勇者と自分も共に立ちたいと願う。だから人々は勇者のその背に続くのさ。そして勇者もまた、その背に受けた希望を背負ってさらに強くなる。これが勇者と人々との関係性だ」



 言っていることはわからなくもない。


 部長から渡された勇者の資料でも、大体がそういう物語だった。


 だが、弥堂がこの話を聞いて、今頭に思い浮かべたのは勇者ではなく魔法少女だ。



 人々の願い、祈り、希望を受け止めてどこまでも強くなる。


 それを弥堂の目の前で愛苗が実現してみせた。


 勇者というモノにそんな彼女と同じイメージはもう、きっと死ぬまで持つことは出来ないだろう。



「……民衆を戦いに駆り立てろと?」


「そこは言い方次第というか、本人たちの感じ方次第じゃないかな? だって、それも結局やってることは同じなわけだろ? だけど、無理矢理戦いに引き込まれたと思われるよりさ。自分も戦う勇気と意思を分けてもらった――そんな風に思われた方がいいよね? だからさ弥堂君。人々にそこをどう思わせるかっていうのも、勇者の資質に含まれる。僕なんかはそう思うわけなんだよ」


「なるほど」



 適当に茶々を入れただけだったのだが、その反論には納得してしまう。


 自分はそうではなかったが、多分二代目や初代にはそれが出来ていた。


 勇者ではないセラスフィリアやルビアにも。



 だから勇者がダメなのではなく、どこまでいっても自分自身がクズなだけなのだ。


 そう考えると、廻夜の説く勇者像も少しは受け入れられるようになった。



「だけどさ、弥堂君。ここで一つ考えなきゃいけないことがある。それはね、勇者の弱点だ」


「弱点、ですか」


「そうさ。ここまでは勇者がいかに強いか優れているかという話をしてきた。だけどそれだけじゃあ足りない。より勇者を盤石な存在にするには、なにが弱点なのかということにもきちんと目を向けるべきだ。何をされたら勇者は弱いのか。何が起きると対応が出来なくなるのか。キミにならわかるよね?」


「はい。当然の考えです」



 守るべき人を守るために、何をしたらその人を殺せるのか――


 弥堂自身が考えてきたことだ。


 これには素直に賛同が出来る。



 そしてここで、弥堂はハッとした。



 これは部長からの警告だ。



 現在直面している紅月のグループとの戦いで、ヤツらがその弱点を突いてくる可能性が高いと。


 そう伝えようとしているに違いない。



 弥堂は姿勢よく座り直して居住まいを正す。


 ここまでの話には特に興味が湧かずに適当に聞き流していたが、ここは謹んで拝聴する必要があると判断した。



 ここまでの戦いでも彼の助言が状況を引っ繰り返して来た。


 廻夜の言う、勇者の弱点――



 その続きの言葉を待つ。


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― 新着の感想 ―
「あれはこちら側からしか開かないように細工されています」という台詞、ダークソウルっぽくてニヤリとしました(笑)。でも……生存部の地下にあるのは……まさかダンジョンですか? 弥堂くん、美景台学園でリアル…
これは「俺は普通の高校生なので異世界に召喚されるわけない」を期待してもよろしいので?
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