3章10 1-away ➂
愛苗の居場所は美景台総合病院だと希咲は言う。
望莱は少し考えて訊ねた。
「ちなみに、どうしてそう思いましたか?」
「病室の雰囲気かな。ほら、前にウチの大地が盲腸で入院したじゃん? 病室の内装とかがそれと似てたのよね」
「ふむ……」
「でも、病院の雰囲気なんてどこも似てるかもだから、それだけじゃちょっと言い切れないかもなんだけど」
「ということは、他にも美景台総合病院だと言える要素が?」
「うん。制服よ」
「制服?」
意外そうな顔をする望莱に希咲は一つ頷く。
「あそこのナースさんの制服なんかヘンなのよ」
「変? ナースさんの制服も内装と一緒で、大体どこも同じ感じじゃないんですか?」
「や。なんかね、あそこの病院だけだと思うんだけど。何故かコスプレっぽいナースさんがいるのよ」
「ちょっとすみません、七海ちゃん」
「ん?」
これは聞き捨てならないと、望莱はそこで希咲の話を遮った。
「申し訳ありません。どうやら認識に齟齬があったようです」
「え? そご? なにが?」
「美景台総合病院って言うから、学園の前の国道を県方面に行ったところにあるあの医療施設のことだと思い込んでしまいました」
「や。合ってるけど?」
「まさか七海ちゃんが、全く同じ名前のコスプレ風俗店のことを言っているとは思わず。わたしの想像力が足りませんでした。ところでそれ駅前にあるんですか?」
「ちがうから! 病院! フツーの!」
「でも七海ちゃん。普通の病院にコスプレしたエッチなナースさんはいませんよ?」
「それは反論できない!」
自分のせいではないのだが、希咲は少し心苦しくなる。
「でも、あそこにはいんの! なんか知んないけどいんの!」
「なんということでしょう。無料で味わえるコスプレサービスに今まで気づかなかっただなんて……」
「でも病院だから! コスプレしててもちゃんと病院なの。そういうアレじゃないからね?」
「はぁ……。それなら、なんでまた」
「全員じゃないみたい。っていうか、フツーのナースさんの方が多いのよ。でも中には何人かコスプレお姉さんが混じってて。あたしも見た時ビックリだったわ。コスプレした患者さんかと思ったら、仕事はフツーにナースさんしてるし」
「えーと、それって、不自然に胸元が開いてたりとか、不自然にスカートが短かったりとか。そういう感じですか?」
「そうそう。ガーター見えてたり、超タイトなミニだったり。しかもさ? そういう制服着てる人って、若くてキレイな人ばっかなのよ。だからあたし、『え、やば』って思っちゃって……」
「ちなみに何故か知りませんけど、あの病院ってけっこう儲かってるんですよね。来院する患者さんが多くって。何故かは知りませんけど」
「え、やば」
「随分と闇の深そうな病院ですね」
その闇を想像して希咲は眉を顰め、望莱はジュルリと涎を啜った。
「つまり、コスプレタイプのナースさんが居たから、美景台総合病院だと考えたと?」
「ん。だって、いくらなんでもそんなヘンな病院他にないでしょ?」
「少なくともわたしは知りませんねぇ。弥堂せんぱいがコスプレナースさんを所望したんでしょうか」
「マジないんだけど。でも、その人ギャルでカワイかったわ。愛苗とも仲良くしてくれてるっぽいし」
「ふむ。怪しいですね。いざという時はそのギャルナースさんの身柄も押さえましょう。このわたし自ら尋問をして、そのエッチな身体に直接聞いてやります」
「やめろばか」
「じゃあ代わりに七海ちゃんがナースコスしてください」
「なにが『じゃあ』か。コスプレなんかするわけないでしょ」
プイっとして言い張るお姉さんをみらいさんはニッコリ見つめる。
このまま粘ればワンチャンやってくれないかと期待したが、希咲の方がすぐに話をまとめにかかってしまった。
「とにかく。あたしがあそこの病院だって思ったのはこれが理由。あんたはどう思う?」
「うーん、そうですねぇ……」
ここでまた望莱は考える。
隠すか。
明かすか。
今度はそれは一瞬のこと。
「いえ。合っていますよ」
「え?」
「美景台総合病院で」
同意をとれた形だが、希咲は訝しむ。
望莱のその言い様に。
「ねぇ、あんたさ」
「やっぱりそこかって感じです」
「わかってたってこと?」
「いいえ。でも当たりは付けていたってところです。だからわたしの方も七海ちゃんの話を聞いて、それで今断定をしたって感じです」
また情報を一つ捲ったというカタチだが、望莱は少し物憂げに嘆息する。
「事件当日の状況や範囲から搬送されるならそこでしょうし。他の要素からもあそこの病院が確率高いだろうなって予想してました。それに、弥堂せんぱい自身が示したからっていうのが大きいですね」
「あいつが? どういうこと?」
「実はですね、昨日ここでミーティングをした時に伏せていた情報が1つあります」
「うん?」
ぎもんを露わにする希咲に、望莱は気乗りしない風に説明をする。
予定とは違ったということなのだろう。
「佐藤さんから言われました。美景台総合病院には近づくなと。そして、それは弥堂せんぱいから要請されたことだそうです」
「え――」
希咲の目が驚きで丸くなる。
それを見て、望莱は少しモチベーションを上げた。
「要は清祓課を使ってわたしたちに警告と牽制をしてきたんですよ」
「圧力ってこと? でもさ、今の状況でそんなの言ったら……」
「そう。そこに水無瀬先輩を隠していると自白しているようなものです。本当の居所を隠すためのブラフというパターンもありますが、今回は違います」
「じゃ、じゃあ……」
「えぇ、その通りです。だから――」
やることはもう決まったと――希咲は無意識にソファから腰を浮かしかける。
だが――
「――だから、わたしたちは絶対にそこに近づけなくなりました」
「え?」
――望莱の口から出てきたものは、希咲の思っていたこととまるで真逆のものだった。
「ど、どうして? 逆じゃないの? 愛苗がどこにいるかわかったんなら、あとはもうやること1個だけじゃん」
「いいえ。それは全く違いますよ、七海ちゃん」
慌てて真意を確かめるが、ハッキリと否定されてしまう。
「せんぱいが清祓課と関係のない、ただの誘拐犯あるいは容疑者であるなら。その場合は七海ちゃんの言うとおりです。しかし今回のケースは清祓課から紅月家へ正式に要請されたことです。それを破るということは?」
「……こっちが悪いことになるの?」
「そうです。色々な意味で立場を悪くします」
当然のことだと望莱は説明するが、希咲は納得がいかない。
「もし、突入をする場合には“せんぱい”の罪を確定させていなければいけません。それがあれば最低限の正当性の担保にはなります」
「正当性……、前も言ってたわね。勝っても正当性がないと実質負けって」
「はい。だから、それこそが“せんぱい”の狙いなんです」
「あいつの?」
「そうです。『ここに水無瀬先輩を隠してるから近づかないでくれ』ではなく、“せんぱい”はこう言っているんです。『ここに居るからいつでもかかってこい』と」
「それって、宣戦布告ってこと?」
「いいえ。それも違います」
望莱は首を振ってから、慎重に言葉を口にする。
「それも逆です。予め正式な警告を受けた上で病院に近づく。これをすると、わたしたちの方が宣戦布告をしたということになるんです。もしくは布告なしでの即開戦を仕掛けたと」
「なんでよ。意味わかんない」
「そうですね。ですが、“せんぱい”はそう受け取りますし、事が終わった後で清祓課もそう裁定を下すしかないです。これはもう仕方ないです。そういう形にされてしまった。わたしたちも、佐藤さんも」
これに関しては先手を打った弥堂が上手だったと認めるしかないと念を押した。
「せんぱいと清祓課は協力関係。せんぱいは病院の経営者から魔術師として依頼を受け、霊害の対応をしている。つまりそこは“せんぱい”のナワバリ。だから近づくな。そういう建前になっているんですよ。これは一般的な“退魔師”が仕事を受けた場合でもこうなります。業界のルールです」
「それを利用したってわけ?」
「はい。その上で清祓課があそこを調べたり立ち入ったりすると、『俺を信用していないのか?』ということになります。要は『ナメてんのか』って話ですね」
「そんなのイチャモンじゃない」
「そういうものなんですよ。さらに、清祓課から紅月家として要請を受けたわたしたちが同じことをしても、やっぱりそうなります。清祓課の面子を潰した。要は『ナメてんのか』ってことですね」
「みんなヤクザじゃん!」
「これは仕方ないです。業界内の話だけでなく、一般的な会社組織同士でも面子は大事です。相手の面子に配慮出来ないノンデリは嫌われたり、イジメられたりしちゃうものなんです。普段ノンデリの“せんぱい”に逆にやられちゃいましたね。うふふ」
「むぅーっ」
望莱は他人事のように面白がるが、希咲は唇を尖らせた。
「いまいち納得いかないけど。要はあいつ、こっちの関係とか立場を悪くしようとしてんのね?」
「簡単に言うとそうですね」
「強行したら愛苗を助けられても、その先がなくなっちゃうのか……」
「その場合はやっぱり“せんぱい”がよっぽどの極悪人でないと無理ですね。例えば、龍脈暴走も街に妖を嗾けたのも、全部彼の仕業だとか。それならワンチャンあるかもですけど、多分これでも厳しい」
「どうして?」
「それを清祓課が調べてるからですよ。その為にわたしたちに事を荒立てるなと言ってきたんです。だから勝手にやると、成功しても彼らの上前を撥ねることになります。これを佐藤さんがどの程度許容してくれるかは怪しいです。特にこの先におクスリの件が待っていて、それに“せんぱい”が必要となると」
「でも、あいつだっていつまでもこのままじゃ……」
「だからわたしたちを挑発しているんです。そして被害者ポジを得る。おそらく最終的な狙いは、直接的なバトルの勝ち負けではないです。この件を交渉材料にわたしたちを学園から排除するつもりでしょう」
「え、退学ってこと?」
「戦えば最後は間に清祓課か御影が入ってくるでしょう。その時にせんぱいはこう言います。『手打ちにしてやるから俺の周辺からこいつらを消せ』と。そうしてほとぼりが冷めた頃に、水無瀬先輩を学園に戻すのでしょう」
「そんなムチャクチャな」
「でも正当性でマウントをとられるとそうとも言えません。ただ、あそこは『美景台学園』なので、わたしたちが学園を去ることは防げるかもです。だけど、その場合は“せんぱい”がどこかへ行く。水無瀬先輩と一緒に」
「……それで、そこにはもう近づくなって?」
「はい。これが弥堂せんぱいが勝利の為に敷いた道筋でしょう」
望莱が読んだ弥堂の勝ち筋。
希咲はそれを考える。
「どうにか、なんないのかな……? これじゃあたしたち何も出来ないってことでしょ? でも……」
「この警告を先に出されていなければ、偶然を装って病院に行くことも出来たんですけどね」
「今は本当に病気とかであの病院に行きたくても、余所に行けってこと?」
「そうです、どうしても緊急でとか、たまたまとか、一切聞く耳持たないですよ? というか、それが狙いですし。例えば、何も知らないウチの社員が風邪で診察を受けに行ってもアウトです。仮にウチの社員だと“せんぱい”が特定できたのなら?」
「それにイチャモンをつけてくるってこと? あたしたちが攻めてこなくても?」
「はい。単純に『来るな』とか『来れないようにする』とかって護りの作戦じゃないんです。こっちが行かざるをえないように追い込んできているんです。わたしたちの目的を考えればいつかどこかでは行かざるをえません。本当に人の嫌がることをするのは天才的ですね」
「ちょっと。やられてんのあたしたちよ」
「ふふ。結構いい手だなーって感心しちゃいました」
自分たちが不利であると言いながらも面白がる望莱の態度は変わらない。
希咲は憂鬱な溜息しかでなかった。
「せっかくめっちゃ進んだと思ったのに。まだなにも出来ないなんて……」
「そんなことないですよ。今って雑に言うと、水無瀬先輩の奪還に成功しても、正当性がないと詰むって状態じゃないですか? じゃあ?」
「……あ。正当性があればいい?」
「そうです。だから今は、じゃあそれを作りましょうって段階ですよ」
「でも……」
「です。アムリタ事件は使いづらいですね。清祓課も共犯になっちゃいますから、逆にケンカ売ってることになります。龍脈の件も清祓課のナワバリなので厳しい」
「それにさ。多分あいつが愛苗を保護してるってのは間違いないっぽいのよね。一緒にいた雰囲気的に。なのに、なんで……」
「JKの誘拐犯の線も消えちゃいましたねー」
「やっぱりこれじゃ……」
話を進めても、また手詰まりになってしまう。
顔を俯ける希咲の前で望莱はパンと手を合わせた。
「はい。チャンスです」
「は?」
思わず顔を上げた希咲に望莱は微笑む。
「というわけで、計画を練りましょう。美景台総合病院急襲計画の」
「はぁっ⁉」
ここまでの話を引っ繰り返すような望莱の提案に、七海ちゃんのサイドテールがぴゃーっと跳ね上がった。
「ちょ、ちょっと。あんた言ってること違うじゃん!」
「えー?」
「あと一歩まできたけどーって話だったでしょ」
「それは確かに違いますね」
「へ?」
「あと一歩ではないです。今はあと二歩。つまり“イーシャンテン”ってやつです」
「なにそれ?」
「立直の一個前ってことですね」
「んんん?」
混乱する希咲の様子を少し楽しんでから望莱は説明する。
「今までのはあくまで『せんぱいとの決戦舞台』を病院にするならってお話です。それで、あそこには絶対に攻められないってことになりました」
「じゃあダメじゃん」
「いいえ。あそこへは別の目的で突入します」
「どういうこと?」
少し落ち着きを取り戻し、希咲が話に興味を向けると望莱はニヤリと笑った。
「今リアタイで細部を詰めてるので大雑把に大枠だけ話しますね?」
「え、今考えてるの?」
「せんぱいとは外で戦います。病院とは離れた場所。その時は向こうから挑ませる。その戦いが起こっている最中に別動隊が病院へ突入。水無瀬先輩を確保。大体こんな感じです」
「でも、それじゃあんま変わんなくない?」
「いいえ。大違いです。わたしたちの最大のネックは、病院で戦えないってことですから」
「場所でそんな変わる?」
「はい。病院で戦うと正当性がなくなる。でも他の場所なら、さっき言った面子がどうのって問題には当たりません。最悪でも喧嘩両成敗には持ち込めます」
「あぁ、うん。そうなる……の? でも、そっか……」
頭を悩ます希咲にさらに続ける。
「それに、病院のなにがマズイって。さっきは面子がどうって話しかしませんでしたが、他にもっとヤバイ懸念があるんですよ」
「それってなに?」
「七海ちゃん。弥堂せんぱいは、ホテルで何をしましたか?」
「え? アタオカ?」
「ふふ。そのアタオカの中でも一番ド派手なモノはなんでしたか?」
「派手? なにそれ……、って、え? まさか……⁉」
考えながら、希咲はとてもイヤなものを想像した。
それは最悪のものだ。
「そうです。建物ごと爆破です」
「あ、あいつ……。いざとなったら病院にもやるってこと……⁉」
「やらないと思いますか?」
「だ、だって、あそこに居る人たち全然関係ないじゃん! 自分で歩けない人……、だって……」
さすがにそんなわけはないと否定しようとしながら、しかし希咲の言葉は途中で止まってしまった。
「わたしは逆にやらない理由がないと思っています。だってこれをやれば最悪でも道連れには持ち込めるんですから」
「そ、そんな……」
「勿論、命の道連れという意味ではありません。どっちが悪かろうと、病院の爆破なんて事態になれば、わたしたちは責任を追及されます。恩赦があっても、家を勘当された上で業界と美景を追放ってところでしょうね」
「そこまでするの……?」
「実際に爆発物を仕掛けているかどうかはわかりません。だけどわたしたちは一度ホテルのあれを見ています。それを知っている以上、想定しておくべきことです」
「そんなの卑怯すぎじゃん……っ」
「言ったでしょう? 嫌がらせの天才だと。無関係な病院のスタッフさんや患者さんも人質にして、その上で『俺に逆らうな』って言ってきてるんです」
「でも、そうしたらあいつだって……」
「死んでも構わないは最早言うまでもないですね。今彼がやっていることも、わたしたちに敗北して失敗するなら、死んで失敗しても同じことだと考えているのでしょう。だったら自分の生命を使ってでも脅しの材料にした方がマシ。そういうマインドです」
「マジさいあく……」
希咲は自身の見積もりがズレていたことに気が付く。
アムリタ事件が終わって、周囲は関係なく後は自分たちと弥堂との決着と真相の究明だけに集中できるようになったと考えていた。
(や。違うか)
ズレていたのではなく、ズラされたのだ。
大規模を巻き込むような戦いにされた。
そうやって弥堂は自分を有利にするのだ。
「それってまんまテロリストじゃん……!」
「結局、あのアムリタ事件ってどこまでいっても、同類同士の足の引っ張り合い。おバカさんたちの内ゲバだったってことですねー」
悔しがる希咲に、望莱がそう嘯く。
「病院で戦えないってのはよくわかった。でも、外で戦っても一緒じゃない? だって、あいつ……」
「はい。ホテルはリモートで爆破してましたよね」
「あのドローン……。学園の襲撃の時もいた……」
「なので、せんぱいを完全に隔離します」
望莱は一枚の紙きれをテーブルの上に乗せる。
「これって……」
「はい。定番の結界です」
それは呪符だった。
「いつも使ってるやつよね?」
「ですです。街や周囲の人々に被害がいかないように、結界内で妖と戦う。学園の結界の仕組みを流用したものですね。それを張るための呪符です」
「これに閉じ込めただけでいける?」
「普段使ってるヤツとは違うタイプで、実はケータイの電波などの科学的な手段での通信から、魔術などを用いた通信まで――それらの一切を遮断することが出来る。そんなタイプの結界があるんですよ」
「あ、そっか。連絡がとれないようにすんのね」
「はい。本来なら『空間的な隔離の結界』『ケータイ通信の遮断』『魔術通信の遮断』はそれぞれ別々の術式で行うんですが。以前に京子ちゃんを騙して術式一発で全部やれるやつを作らせたんです。それを持っています」
「あたしは何も聞かなかった」
みらいさんの余罪には目を瞑って、希咲は実際にそれをやった場合を考えてみる。
「んー、でも。そんなのにあいつ閉じ込めたらさ、こっちからケンカ売ったってことになんない?」
「それについてはプランがあります」
望莱は呪符を仕舞って、自信に満ちた顔で頷いた。
「わたしたちは清祓課から、中長期的な街の見廻りを頼まれています」
「えーっと、霊害のよね? 昨日言ってたやつ」
「はい。これには決まった時間や範囲を指定されていません。空いている時に出来たらお願いしますっていう、ふわっとしたものですね。これを逆手にとります」
「なんか、こっちも卑怯な手の予感……」
「うふふ。要は、ナワバリ争いですよ――」
ほくそ笑む望莱の瞳には好戦的な光があった。




