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断章 fragment films ②
土壁に挟まれた路地 泥を踏んで
踊るような緋色の後ろ髪を追う
角を曲がると
アスファルトの端 並んで歩いた歩道
隣の少女が垂らした二つの三つ編み
黒猫の尾を探す
立ち止まると
割れた食卓 向かいに座るのはおさげの少女
さもしい食事に涙する
零れた涙がテーブルに落ちる
水面を揺らすように風景が歪む
目の前のテーブルが豪奢に
庭園の中でお茶の湯気がたつ
向かいに座るのは金髪の若く美しい男
柔らかく微笑んだ彼の瞳には
捻くれた少年の不機嫌顔が映っていた
空間をゆらゆらと曖昧にする湯気の先へ
少年は正しさを問いかけた――




