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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第三部・荊州争乱編
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[×ボツ]甘寧・沈友・孫紹「ボクの考えた江東脱出作戦!」

本日、二度目の投稿です。


話はさかのぼって関興・甘寧・孫紹・沈友の四人がほこらに身を隠した際、「関興君は追っ手を撒くって簡単に言いますけど、いったいどうするんですか?」と沈友が尋ね、関興が考え込んでいる場面です。

その頃。賞金を懸けて孫紹そんしょうと沈友の行方を探す追っ手のもとに、酒に酔った男が現れた。


「その二人なら、村はずれのほこらに身を潜めてやがるぞ!」


「なにっ?!それは真か!」


ようやく得られた手掛かりに喜び勇んで酔っ払いに手引きさせ、追っ手は二十人全員で村はずれのほこらを取り囲んだ。


「謀叛人めっ、出て来い!おまえらがそこに隠れているのは分かってるんだ!」


しーんと静まり返ったまま。


「おい、酔っ払い。真に少年と従者の二人組がここにいたのじゃな?」


「本当だって!わしの言うことがウソだって言うのかよ?」


と酒臭い息で追っ手の一人にからむ酔っ払い。


「なら、試しに火でもけてみればいいじゃないか!狸みたいに煙にあぶり出されて慌てて飛び出して来るだろうがよ!」


酔っ払いは調子に乗って、カチッ、カチッと火打石を鳴らす。


「ま、待て!火を点けてはならぬ。万が一中の者が焼死したらどうするんだ?我々は孫紹様の身柄を確保したいだけだ!」


と言って、慌てて止めに入る追っ手。だが、慌てたのは彼らだけではなかった。ほこらの中から声がして、


「ま、待ってくれ!分かった。で、出る」


「?」


追っ手の連中は顔を見合わせる。


「ほーら、わしの言ったとおりだろうが!これで賞金はわしの物だ」


鼻息荒く自慢げに口にする酔っ払い。

ほこらの扉がギィーッと開いて、ふんどしに隠れるイチモツをいきり勃たせ、自慢のシックスパックを見せびらかす上半身裸のワイルドなイケメンと、鼻水を垂らした可愛げのないクソガキの二人組が現れた。


「怪しい者じゃない。俺は武者修行のため全国を渡り歩く甘寧という者。こいつは俺の花郎ファランだ。実は手持ちの金須が尽きて、食い物にも困る有り様。ひもじさを紛らわせるため、己のマグナム砲を独りいじっておっただけだ」


「おい甘寧、出るって別の“モノ”が出るんじゃねぇだろーな?そんなことより、オレ腹減ったよ。ズビッ」


甘寧にすがりつくモブ顔のクソガキ。


「お役人様!こいつらです、わしが見たのは!」


酔っ払いが下卑た笑いで、手を差し出す。追っ手のボスはその手を払い、


「失せろっ、酔っ払いめ!とんだ無駄足だったわ」


「ほえっ?」


「人違いだ。我らが探しているのは、こんな下品な怪しい男とクソガキの二人組ではないわ!見たところほこらの中は狭いし、他に隠れる者はおるまい。帰るぞっ」


チッと舌打ちをして、追っ手はどこかへ去った。


「よし、これで大丈夫だ」


ほこらの中に潜む孫紹と沈友に向かって、キラキラと眩しい笑顔を振りまく甘寧。さすが腐ってもイケメン。沈友は男らしい甘寧に一目惚れして顔を赤らめ、


「ああ、甘寧様!我々のピンチを救って下さりありがとうございます!御礼と言ってはなんですが、甘寧様のいきり勃ったイチモツを静めるため、この沈友、ぜひ甘寧様にご奉仕を……」


「ああ頼む。さすがチン友、名前に違わず上手いじゃないか……」


-〇-


「――駄目だ駄目だ!いくら爽やかイケメンの沈友さんがストライクゾーンだからって、おまえのゲスい妄想に付き合わせるなんて、認められるわけないだろう!アホか!」


オレはドン引きして、即座に甘寧の作戦を却下した。


「えー。俺様の活躍を心待ちにしている人もいるんだし、勧進帳っぽくて面白いと思ったんだけどなあ」


「どこが勧進帳だ?一緒に落ち延びる弁慶は義経の素性がバレないように、心を鬼にして敢えてツラい仕打ちをするんだぞ!」


「勧進帳ってそんな話だっけ?じゃあ、義経役の孫紹様に褌の上から俺のマグナム砲に触れ……」


オレは甘寧の頭をスパンと叩く。これ以上の妄想BLは完全にアウトだ。


「では、こんな策はいかがですか?」


と沈友が提案する。


◇◆◇◆◇


追っ手から逃げ回っていた孫紹と沈友は、ついに見つかって敵二十人に囲まれる。剣を片手に沈友は、孫紹を庇いながら追っ手の攻撃をかわすも、多勢に無勢。

「覚悟ーっ!」と追っ手の一人が沈友に剣を振るおうとした瞬間、どこからもなく飛んで来た矢が追っ手の腕に突き刺さる。「ぐわっ」とよろめく追っ手。


「なに奴!?」


そこに現れたのは、強そうな用心棒を従え弓を構えるモブ顔の男の子。


「オレは荊州で旅役者をしている興と申す者。大の大人が寄ってたかって賢く素直な少年と爽やかイケメン従者をいぢめるのを、黙って見逃すわけにはいかん!甘寧、やっちまえ!」


「なにを小癪こしゃくな!おまえらも同罪だ、叩き斬れ!」


うおーと雄叫びを上げて追っ手の連中が甘寧に襲いかかるも、武力ステータス90の甘寧には歯が立たない。ならばと興に斬りかかるも、軽業を身に着けた興は難なくひらりとかわし、逆に鳩尾に手刀をお見舞いされた追っ手は悶絶する。興少年も強いのだ。

たちまち二十人いた追っ手はすべて倒された。


「甘寧、もういいでしょう」


「控えぃ、控えぃ!この紋どころが目に入らぬか!」


甘寧の懐から取り出した印籠には、今をときめく曹家の家紋が彫られていた。


「この御方をどなたと心得る?恐れ多くも漢の丞相、曹操閣下のお世継ぎで在らせられる、曹丕様であるぞ!」


「ははーっ!」


敵の追っ手も、助けてもらった孫紹と沈友も一同、高貴な曹丕の威厳にひれ伏すのであった。


-〇-


「――こんなどこかで見たような往年の時代劇のパクリなんて、絶対駄目ですよ!っていうか、よりによってオレがなぜ曹丕なんですか?」


オレは憮然として沈友に苦言を呈する。


「関興君の正体は曹操閣下の息子って言うから、私はてっきりお世継ぎの曹丕様かと……」


「わーわー何でもない何でもない!」


オレは慌てて沈友の口を塞ぐ。


「しーっ!甘寧には知らせていないから、オレが曹操閣下の息子ってことは黙っててって言ったじゃないですか!」


沈友はポリポリと頭を搔きながら、


「いけねえ。こりゃうっかりだ」


「もうっ!うっかり八兵衛のモノマネしたって駄目ですよ!」


オレは呆れてつまらないオチにツッコミを入れる。

沈友は孫紹に向かって、


「はい、次は若の番ですよ」


「えー。僕?じゃあ、面白くないかもしれないけど……」


◇◆◇◆◇


孫紹そんしょうは追っ手から逃れ、吹雪の中をアントワープの町に向かって歩き続けました。途中、何度も倒れ、倒れては起き上がりを繰り返しながら。


孫紹は手袋も靴もどこかに落とし、裸足になっていました。その時、孫紹は大聖堂にあるルーベンスが描いた聖母マリアの絵のことを思い出しました。大聖堂のドアに手を触れると、幸い、鍵がかかっていないようでした。こっそり忍び込んだ孫紹は、


「ああ。とうとう僕は見たんだ、素晴らしい絵だ。マリア様、ありがとうございます。僕はもう思い残すことはありません」


孫紹は喜びと疲れのあまり、その場に倒れ込んでしまいました。

一方、従者の沈友は追っ手と戦って傷つき、血を流しながら孫紹を探してようやくアントワープの大聖堂にたどり着きました。


「沈友。おまえ、僕を探して来てくれたんだね。分かってたよ、おまえはいつまでも僕と一緒だって。そう言ってくれるんだね、ありがとう」


しかし孫紹は寒さと疲れと飢えのため、ついに力尽きてしまいます。


「沈友、疲れたろ。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ…」


やがて大聖堂の天井からほのかな光が輝くと、天使が舞い降りて孫紹と沈友を誘い、二人を連れて昇天しました。父の孫策や祖父の孫堅のいる遠い天国へと旅立って行ったのです。


-〇-


「グスッ、かわいそうに……」


オレも沈友も、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔になりながら孫紹の話に聞き入った。


「…若、あなたの泣ける話は最高です!」


と沈友が孫紹を絶賛する。

そこへ甘寧がポツリと、


「俺だって沈友をオトナの世界に誘い、昇天させてやれるけどな」


「甘寧!おまえって奴は…せっかくのイイ話をけがしやがって!」


オレは甘寧をポカポカと叩くのであった。


結局、関興の作戦が採用となりました。

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