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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第一部・関興転生編
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07.関興、孔明(実は女神様)に転生特典をねだる

前回のあらすじ

関興を転生させた女神様が現れたと思ったら、実は私は諸葛孔明だと抜かしやがった!


「っていうか、なんでオレをわざわざ転生させたんだ?」


オレは素朴な疑問を口にする。


「そんなの簡単よ!あんたってば三国志フリークだから、いちいち私が説明しなくても三国志の歴史は既知だし、高校では弓道部に所属してたから生まれつき弩弓術のスキルが高そうだし、社畜リーマンだったせいで私の理不尽な命令コマンドにもめげず、忠実に実行してくれそうだし、彼女いない歴=年齢の童貞野郎だから、美人の私にムラムラして手を出す勇気もないだろうし……」


「お、おい!最後のは余計だろ!」


オレは真っ赤になって反論した。まあ、事実だけど。


「まさかとは思うが、そのために前世の俺をわざとトラックにき殺させたんじゃないだろうな?」


「……」


なんだその間は?


「そ、そんなわけないでしょ。さすがに私もそこまで鬼畜じゃないわよ!

まあ確かに前からあんたを狙ってたのは事実だし、さっさと死んでくれないかなぁと邪念を送っていたけど……ちょっと、そんなににらまないでよ!

と、とにかく、あんたがトラックに轢かれて死んじゃったのは()()なの。

私はラッキーと思ってあんたの魂を回収し、事前説明抜きでいきなり関興に転生させちゃっただけ。本当よ!」


女神の言い分を100%信用できんが、すでに転生しちゃった身で今さらどうこう言っても仕方あるまい。


「事情は分かったが、なんで関興なんだ?

ほら、関興って若死にするだろ?どうせだったら、趙雲とか姜維とか、孔明の右腕となって活躍しそうな武将に転生させればよかったじゃないか」


「はぁ?あんた、生前の自分がモブ顔だったって自覚ある?趙雲や姜維のイケメン枠に転生しようなんて、虫が良すぎるとか思わないの?」


虫けらを見るような目でオレをさげすむ美女の孔明。なんかムカつくなあ。


「安心なさい。せっかく転生したのに若死にするのはさすがにかわいそうだから、関興の死因は取り除いてあげたわよ」


「死因って?」


「虫垂炎」


マジか。盲腸ごときで死ぬなんて情けねえ。


「悲観する事じゃないわ。当時は天才外科医の華佗(かだ)以外に手術なんてできないもの。いずれ腹膜炎を起こして死に至る不治の病なんだから」


そうだな。現代医学と比較して評価するのは良くないな。


「そりゃサンキュ。あ、そうだ。こういう場合、転生者にはお約束で神様からチート能力とか特典スキルが授けられたりするもんだろ。オレには何かくれないの?」


「はぁ?寿命が延びたのと、美人の私に命令コマンドを下される特典の他に、まだ別の物を要求するわけ?あんたってモブのくせに強欲ね」


諸葛孔明こと女神様は、呆れたように溜め息をつく。


「しょうがないわね。【鑑定】スキルくらい付けてあげるわ」


【鑑定】ってあれか。「ステータス!」と叫ぶと、登場武将の統率力・武力・知力・政治力・魅力が数値化されたり、得意兵法が分かるってヤツか?超便利じゃん。


早速俺の能力を【鑑定】してみよう。


「ステータス!」


すると、オレの固有能力と兵法が空中に表示された。



--関興--

 生誕  建安五年(200)  1歳

 統率力  1

 武力   1

 知力  80

 政治力  1

 魅力  72

 スキル 弩弓術 先読み 交渉 鑑定



低っ!なんだよ、これ?!オレ、敵に襲われたら瞬殺じゃん。


「当たり前じゃない!いくら前世で【弩弓術】を取得してるからって、今は生まれたばかりの赤ん坊よ。でも心配ご無用。将来的には、関興は有能な武将に成長するはずだわ」


なんだ。驚かせるなよ。

いや、ちょっと待て。「将来的には成長するはず」ならば、学習・訓練次第で俺の固有能力はいくらでも上がり得るということなのか。理想的には、すべての能力80超えが望ましいな。よし、幼いうちから身体を鍛えるとするか。


「でも女神様。オムツとか離乳食とかの赤ん坊仕様は、精神年齢24歳のオレにはさすがにキツいぞ。せめて、歩けて話せるようにしてくれないかな?」


「それもそうね。1年間だけ成長速度3倍に加速してあげるわ。つまり、4か月で1歳分身体が大きくなるってわけ」


「助かるよ。赤ん坊生活も飽き飽きしてたからな」


それにしても知力が80なのは、三国志の史実を知っている【先読】のスキルを持つからだろうな。【交渉】は社畜リーマン時代の営業職の成せる業か。面白いな。


あっ、そうだ。女神様が扮する諸葛孔明のステータスはどうなんだろう?



--諸葛孔明--

 生誕  光和四年(181) 20歳

 統率力 93

 武力  44

 知力 100

 政治力 97

 魅力  92

 アイテム 四輪車 羽扇



「おい、なんだこの完璧ハイスペック!?いくら孔明とはいえ、ずるいぞ!」


「いいじゃない!だって私はこの世界の主人公なのよ!それに私はちゃんと史実に則って……」


「ケッ。『応変の将略はその長ずる所には非ず』なのに、か?」


説明しよう。三国志の著者・陳寿は蜀漢の生まれで、弱小国の政治を安定させ、長期にわたり独立を守り抜いた諸葛孔明の才腕を深く敬愛していた。彼は諸葛亮を評して曰く、政治を熟知する良才であり、管仲・蕭何に匹敵する名宰相と言ってよいだろう、と絶賛している。


その一方で、毎年軍勢を動かしながら、よく成功を収めることができなかったのは、臨機応変の軍略は彼の得手ではなかったからだろうか?と述べ、天才軍師としての名声とその実力に乖離があったことを提起しているのである。


「う、うるさいわね!分かったわよ。女神の権限で、あんたには特別に一つ転生特典を授けてあげる。それでいいでしょ?」


ふん、オレを買収して黙らせる気だな。……もちろんオレは乗ってやるが。


「ほら、さっさと御神籤(おみくじ)を引きなさいよ!」


「急かすなよ。よし、これにしよう。【雷天大壮(らいてんたいそう)】。って何だ?」


「易の卦よ。分かりやすく言うと、猪突猛進。

調子に乗って考えなしに動けば凶、中庸を心掛けて正道を守れば吉、ってところかしら。まあまあ良い卦じゃない!私に感謝しなさいよっ」


へいへい。ありがとうございました。


「……というのは表向き。あんたが良からぬことをたくらんだら、女神である私は、あんたに()を落として()罰を下せるのよ!フヒヒ、かかったわね!」


「ひでぇ。はずれじゃねーか!もう一回引かせろ」


「駄目。残念でした~(笑)」


くそっ!女神のヤツ、善良なオレをだましやがって!


ま、オレはこの世界で、豪腕を振るい権謀術数を駆使して皇帝に昇り詰めようなんてこれっぽっちも考えていないから、天罰を受ける恐れはないと思うけどな。


「もう一つ聞きたいことがあるんだけど、いいか?

さっきあんたはシナリオの開始は章武三年(223)って言ったよな。でもオレの推理が間違っていなければ、今は建安五年(200)頃のはずだ。なんでシナリオ開始より二十年以上前にオレを転生させたんだ?

おかげでオレは、赤ちゃん姿の羞恥プレイをさせられる目にあってるんだぞ」


「決まってるじゃない!諸葛孔明であるこの私が、(なま)三顧の礼と(なま)赤壁の戦いを体験したいからよ!」


女神様は興奮気味にそう述べた。


「劉備玄徳様がイケボで『孔明、俺のモノになってくれ。頼むよォ』って迫るなんて最高に萌えるじゃない!それに赤壁の戦いは、あの憎たらしい曹操をぎゃふんと言わせた晴舞台なのよ。ぜひこの目でしっかと見届けないと」


それを聞いたオレは真面目な顔で尋ねた。


「なあ。女神様は最終的にこの世界をどうしたいわけ?」


「私?劉備玄徳様の見果てぬ夢を叶えてあげたいのよ。後漢を再興して天下を統一し、民衆の平穏な暮らしを実現して……」


おいおい。この世界の劉備はそんなことを望んでないぞ。オレは関羽のおっさんとともに、この耳で直に聞いたもん。


「なら、女神様はどうして曹操に手を貸してやらないんだ?

曹操が慢心しておかしくなったのは、建安十三年(208)に荊州を無傷で手に入れて以降の話だ。袁紹と対峙している建安五年(200)の今は、曹操は荀彧じゅんいくの意見を容れて後漢の献帝を尊び、真剣に天下統一を目指していた時期だ。

ハイスペックの孔明なら曹操陣営でも重臣に登用されて、富貴は思いのままだろ」


「嫌よ。私、劉備玄徳様推しだもの。玄徳様の命を狙う曹操は敵」


なーんだ。女神は劉備=正義,曹操=悪の三国志演義の史観に毒されただけか。


曹操が呂布に徐州を追われた劉備をかくまってやったことは、正史『三国志』はもちろん、三国志演義にもエピソードとして採用された疑いようのない史実だ。

ところが劉備は、そんな大恩ある曹操に対して公然と反旗を翻し、曹操領の徐州を奪ったばかりか曹操の暗殺計画にも手を貸した。

曹操が謀反人の劉備を処刑しようとするのは当然だろう。


また曹操及び曹丕は、最終的には献帝より禅譲されて後漢を滅ぼしたけれども、後漢最後の皇帝である献帝を処刑しなかったし、山陽公として封爵し終生(ないがし)ろに扱うことはなかった。

対して劉備は魏が建国されるや、献帝が殺されたと短絡しその喪を発表(←生きてるっちゅうに)、無念ながら漢の皇統を継ぐという名目で蜀漢の皇帝に即位する(←だから生きてるっちゅうに)という大逆を犯す。

冷静に考えれば、どちらが不敬の輩か一目瞭然なのだが。


さらに、これは結果論にすぎないが、諸葛孔明が劉備のために天下三分の計を唱えて孫呉と同盟を結ばなければ、あるいは、曹操が荊州を下した時点で賈詡かくの意見を容れて、降伏した荊州の民衆を慰撫し、大軍の兵船を率いて孫呉を威嚇・圧迫するだけで止めれば、五年も経たずに天下は曹操の手に帰しただろう。


「後漢を再興して天下を統一する」というスローガンは一見立派だが、結局のところ、帝室の血を引く(らしい)劉備自らが皇帝になりたかっただけだ、とオレは疑っている。その点、曹操となんら変わりはない。


もちろん、男として生まれたからには、乱世の姦雄として皇帝を目指すことは悪ではないぞ。ただ史実の劉備は聖人君子のたぐいではなく、もっと傲慢で野心的な人物だったにすぎないのだ。

そんな劉備が好きか嫌いかは個人の自由だけどな。


この世界の劉備を信用していないオレは、奴に手を貸してやるつもりは毛頭ない。


「ま、いいさ。シナリオの開始が章武三年(223)だとすると、それまでの間、オレはあんたに束縛されることなく自由に動いていいんだよな?」


「そりゃべつに構わないけど……いったい何をする気?」


「オレにだってささやかな望みがあるんだよ」


そう。俺は建安二十四年(219)における麦城の戦いで、関羽のおっさんと関平兄ちゃんの命を救いたいと誓ったんだ。


「ははーん。読めたわ。どうせ今世では、かわいい嫁を娶ってアハンウフンしようとか考えてるんでしょ。イヤらしいわね。

あっ、でも三顧の礼と赤壁の戦いっていう二大イベントの邪魔をすることは絶対許さないわよ!もし邪魔したら、あんたに天罰を下して地獄に突き落としてやるから!ま、子供のあんたに何もできるわけないけど(笑)。

それとシナリオ開始は章武三年(223)の五月、あんたは益州に在中するのよ。いい?遅れたら承知しないからね!」


「はいはい。了解」


女神様はしおらしくベビーシッター姿に戻り、オレは再び眠りについた。


諸葛孔明こと女神様は、章武三年(223)までは史実どおり展開することを望んでいます。関興が良からぬことをたくらんだ時、天罰を下しちゃう存在です。


再び真面目モードに戻ります。

次回は関羽の旧友が満を持して登場!お楽しみに!

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