[番外編]甘寧、関興を花郎に奉じる←いや、断る!
御礼
いつも『三国志の関興に転生してしまった』をご贔屓にしていただき、ありがとうございます。おかげ様で日間ランキング8位という、思いもかけないような高い評価をいただきました。
これも皆さまにブックマークを登録していただき、また★★★★★の評価を頂戴したおかげだと、心から感謝申し上げます。
これからも楽しい三国志の物語を提供できるよう精進して参りますので、引き続き『三国志の関興に転生してしまった』をご愛読くださいますよう、よろしくお願いいたします。
そんな記念すべき日なのに!!
まさかの変態イケメン筋肉ダルマの甘寧が主役のイロモノ回だとは…… (;_;)
今回のあらすじ
マニアにとっては関興は美少年らしい(笑)。甘寧と鄧艾の関係がなんかビミョー。
やれやれ、どっと疲れた。
賈詡と腹の探り合いを終え、オレは鄧艾を馬に乗せて樊城に急ぎ向かった。関平兄ちゃんと荊州牧・劉表の娘である舞ちゃん(11歳)の婚約披露パーティーが開催されるのだ。かわいい弟であるオレが、関平君の晴れの舞台に欠席するわけにはいくまい。
「なあ鄧艾、おまえは賈詡をどう見た?」
「……あの人怖い」
「そんなの当たり前だろ。あの曹操閣下を何度も手玉に取った、凄腕の策士だぞ。おまえも賈詡に師事すれば、稀代の兵法家になれるんじゃないか?」
「嫌だ。あの人の立てる作戦には邪悪なオーラが感じられる」
まあ、鄧艾の言わんとすることは分かるぞ。たぐい稀れな才能は認めるが、オレも賈詡とは絶対に友達になりたくない。
「でも若はあの人と堂々と渡り合っていた。正直、見直した」
「ケッ、偉そうに。おまえはオレのことを何だと思ってたんだ?」
「俺を盾にして、婚約パーティーで美味い食事の楽しみを奪おうとする極悪人」
こいつめ。賈詡との顔合わせの前に、「オレが襲われたら、おまえがオレの盾になれ」と言ったことを根に持ってやがる。
「ちゃんと兄上の婚約披露パーティーには向かってるだろーが!」
「もし遅れて美味い食事にありつけなかったら、俺は一生若を恨む」
「かあーっ。おまえ小っちぇーな!」
と話していたら。
漢水のほとりに立つ木の下で、ひとり黄昏れる男の影がある。変態イケメン筋肉ダルマの甘寧だ。
「おまえさ、こんな所で(あいかわらず上半身裸のエロい恰好で)何やってんだ?」
「うるさい。放っといてくれ!」
うつむいたまま投げやりに答える甘寧。鄧艾は白けた顔で、
「若。放っといてくれというこんな奴なんか放っといて、さっさとパーティー会場に向かいましょう!遅れたら、美味い食事をみんなに食われてしまいますよ」
「おい、ちょっと待て牛飼いの糞ガキ。ここは「どうしたんだ?大丈夫か?」と声を掛けるのが優しさってもんだろーが!」
なにこれ?甘寧と鄧艾のコントでも始まるのか?
「なあ、チビちゃんよ。おまえの教育がなっていないから、最近牛飼いの糞ガキが増長してるんじゃねーのか?」
うん、それは甘寧の言うとおりだと思う。この頃、鄧艾が生意気なんだ。主君のオレに減らず口を叩いたりしてな。いや、そんな愚痴は置いといて。
とりあえず、オレは甘寧に言われたとおり声を掛けてやった。
「あーどうしたんだ、甘寧?大丈夫か?」
「……大丈夫じゃない」
「そうですか、お大事に。じゃあ行きましょう、若!」
「もー鄧艾は黙ってて!話が進まないから。
そっか、心配だな。甘寧、オレでよければ話を聞くぞ」
「ああ、聞いてくれ……実は俺の大切な関平君が婚約しちまった」
ハイ、解散!
だいたい、そっち系の悩み相談をノンケのオレにされても困るんだが。というか、兄と男のアハ~ン♡な話を聞かされる弟の身にもなってみろ!いたたまれないだろーが!
「待ってくれ!……こんな気持ち、初めてだったんだ。
俺はカッコいいから、男女問わず非常にモテる。黙ってても向こうから誘いが来るんだ。おかげで女に不自由したことはねえ」
「え?おまえ、そっち系じゃなかったの?」
「はあ?俺には嫁も子供もいるぞ。今は別れてフリーの独身だけどな。ちゃんと養育費も支払ってるし」
なんだ、オレの勘違いか。よかった。
「関平君を初めて見た瞬間、俺の身体にビビビと衝撃が走った。こんな綺麗な男、見たことがない。きっと一目惚れってやつだ。彼のためなら、俺は命だって惜しくない。そんな気にさせられた」
「やっぱりそっち系じゃん!今さらどーでもいいけどさ。
それで、おまえは平兄ちゃんとどうなりたいわけ?まさか嫌がる平兄ちゃんを無理やり手籠めにして<ピー>するとか……」
「馬鹿言え!俺は大切な関平君にまだ指一本触れたことないわっ!
そりゃあ、関平君の××を××しながら、ハアハア喘ぐ関平君をたまらず××してみたいと夢に見たことはあるが……」
恍惚の表情で語る甘寧。キモッ。横目でチラ見すると、鄧艾もドン引きしている。
「とにかく。俺はただ愛しい関平君に命令され、彼のために命を賭けて敵を倒すことができたら本望なのだ!」
……なんだっけ?そんな怪しい稚児様と戦士の関係。どっかで聞いたような。
えっと、そう。花郎だ。
『三国史記』新羅本紀によれば、新羅の真興王は王族から美貌の稚児を選んで、彼に化粧をし着飾らせて花郎と名づけた。すると多くの優秀な貴族の若者たちが群がって、首領に担いだ。
562年、真興王が将軍に命じて加羅国を襲撃させると、花郎の斯多含も従軍を願い出た。斯多含の率いる軍勢は、間道を通って敵の不意を突き、その都城を陥れる大功をあげた。斯多含には命を懸けて男の友情を誓い合った友の武官郎がいたが、彼が戦いで負った怪我がもとで亡くなると、慟哭して憔悴のあまり七日後に死んだ。時に17歳だった。
なお朝鮮史家の鮎貝房之進は、花郎について「美貌の男子に易へたるも…男色を掲げて徒衆を集むる手段に用ゐたるものなれば、男色は公然と一般に行はるゝこととなりしも怪しむに足らざるなり。…斯多含は華冑出身にて17歳の美少年であるが、武官郎なるものと共に死友を約し、武官郎の病卒を慟哭するの余り、七日にして自分も卒せりとあり。…単なる義兄弟関係にはあらざるべく、必ずや其間に同性愛の存在せるを推測すべし」と書き記している。
「つまり、俺と関平君は命を懸けて男の友情を誓い合った仲なのだ」
「うっわ。キモいぞ、甘寧。妄想が過ぎてついに頭の中まで腐ってしまったのか?」
「フン、なんとでも言えばいいさ。たとえ関平君が振り向いてくれなくても、俺は永遠の愛を誓ったんだ」
「けど、平兄ちゃんはかわいい舞ちゃんと婚約しちゃったぜ。たぶんというか絶対、おまえが勝手に誓った永遠の愛とやらには振り向いてくれないと思うぞ」
甘寧はしょげ返り、
「ああそうだ。愛しい関平君にフラれた俺の気持ちが分かるか?」
「「全然分からない」」
オレと鄧艾は奇しくもハモってしまった。
「ていうかさ、おまえ無駄にイケメンなんだから、誰かいい女を見つけて再婚しろよ」
「ハァ。チビちゃんは男心が全然分かってねえな」
甘寧はわざとらしく大きな溜め息をついて、
「戦のモチベーションだよ。俺らみたいな戦士は、黄祖みたいなムサい爺いに命令されるより、美少年の花郎に命令された方が張り切るじゃん」
ふーん。そんなものなのか。
「なら、たとえ婚約したとしても、美少年の平兄ちゃんを花郎に担いだままでいいんじゃないのか?」
甘寧はふるふると首を振り、
「駄目だ。花郎は童貞の美少年と相場が決まっている。俺ら錦帆賊の戦士と花郎は、自分が花郎の筆下ろしをしてやるんだ、という精神的BL関係で繋がってるんだから」
あっそ。勝手にしてくれ。
「関平君がいなくなった後、誰を花郎に推戴するか?牛飼いの糞ガキは美少年でも童貞でもないから却下。なあ、チビちゃん。おまえ童貞だろ?」
「なっ……ど、どどど童貞ちゃうわっ!」
「なにを慌てて否定している?五歳児なんだから、チビちゃんが童貞なのは当たり前じゃないか」
「あ。そ、そうだな」
いかん。つい前世の秦朗・24歳童貞彼女なしの忌まわしい記憶が……。
「それにチビちゃんはさ、関平君の弟だよな。だったら今はモブ顔でも、将来的に美少年になる可能性はなきにしもあらずだよな?」
「うるさい。オレがモブ顔とか失礼だぞ」
「あーあ。しかたがないからチビちゃんで我慢するか。おまえが俺たち錦帆賊の花郎になってくれ」
いーやーだーっ!
「オ、オレだって鴻杏ちゃんというかわいい彼女ができたんだ!
おまえらみたいなモーホー軍団の花郎に担がれ、たとえ夢の中ででもオレの××を××されながら、ハアハア喘ぐ男にたまらず××されるなんて、絶対にお断りだ!」
「ケッ。チビのくせに彼女持ちなんて生意気なんだよ!
それに、実際におまえにエロいことするわけじゃなく、ただの妄想BLなんだからいいじゃないか!減るもんじゃなし」
「嫌だよ!というか、鄧艾だってまだ14歳だから童貞だろ。よく見たらまあまあカッコいいし、こいつを花郎に担げよ!」
「ああ、こいつは駄目だ。俺はこいつを認めたくない。それに牛飼いだけに乳臭いガキだからって童貞とは限らない」
甘寧のつまらないギャグに苛立ったせいか、鄧艾は珍しく饒舌に、
「俺だってこんな碌でなしと関わるのはごめんだ。それにご心配なく。華と添い遂げるまで、俺のチ〇コは未使用のままだ」
「うっせえ!おまえの臭っせえチ〇ポ、一生未使用のままでいろ!おまえなんか華の相手に絶対認めねえからな!」
「華の戸籍上の父親にすぎないあんたに、俺と華の結婚を認めてもらう必要はない。俺はお金を貯めて、若の従者として一人前になったら華と結婚する」
「絶対に許さん!」
「ち、ちょっと待って。甘寧と鄧艾ってどういう関係?」
口喧嘩がだんだんエスカレートする二人を遮って、オレは質問した。甘寧はそっぽを向いて、
「俺のかわいい娘の華に、この牛飼いの糞ガキが一目惚れしやがったんだよ」
「なっ……そもそもこないだの宴会の席で、あんたが酔っ払って俺にキ…キスしたからじゃないか!俺のファーストキスだったんだぞっ!それを、こんな鬼畜変態野郎に奪われた俺の悔しさが分かりますか?」
「うわー最低だぞ、甘寧。セクハラ親父じゃん」
「チッ。ちゃんと謝ったじゃねーか!それなのに、いつまでも根に持ちやがって」
「そしたら次の日、この碌でなしの娘の華が謝りに来てくれた。俺は美しくて思いやりのある華に一目惚れした」
「なにが美しい華だ!?そんな陳腐な形容しかできないところが乳臭えガキなんだよ。あ、チ〇ポじゃねえ、チンプだ。女を口説くんなら、もっと情熱的にだな……」
「べつにいいじゃないか!あんたは江夏にいた華と奥さんを捨て、イキがって錦帆賊を結成して脱藩したくせに、今さら父親面するなんて無責任なんだよっ!」
「バーカ。俺はチビちゃんにスカウトされて真っ当な仕事に就職できたんで、娘も息子も別れた女房も、ちゃんと唐県に呼び寄せましたー。牛飼いのおまえとは違いますぅ」
「俺だって若にスカウトされて従者に就職した。兵法を学んで、若のお役に立てる立派な将軍になって、華と結婚する」
突然の鄧艾の決意宣言に、オレはちょっと感動した。甘寧は、
「だが俺は絶対に認めんからな!」
「フン。あんたの許しは必要ない」
「あーもう!今日は平兄ちゃんのめでたい婚約披露パーティーなんだから、二人ともちゃんとお祝いしてよ!ほら、行くぞ」
「「へーい」」
と言って、オレは甘寧・鄧艾と一緒にパーティー会場に向かった。
結局、関興は甘寧の押しに負けて、錦帆賊の花郎に担がれることになったらしい。
ピロリ~ン。 甘寧 の関興に対する忠誠度が上がりました。
ピロリ~ン。 鄧艾 の関興に対する忠誠度が上がりました。
次回。樊城で関平の婚約披露パーティーに参加した劉備。劉表の重臣とトラブルになった劉備は早々に帰宅の途につく。的盧に乗る劉備は、祟りのせいか檀渓で刺客に襲われる。どうなる、劉備?!お楽しみに。




