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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第三部・荊州争乱編
47/271

41.曹操、鄴を陥落させる

たいへん長らくお待たせしました。

「第3部・荊州争乱篇」が始まります。


それにしても、お見合いパーティーの男性陣はよくぞ不幸な面々を集めたものだと、乙女ゲーム『恋の三国志~乙女の野望』の作者のセンスを疑ってしまう。


曹沖。曹操の秘蔵っ子で、跡を継がせるつもりだったらしいが、不幸にして若死にした。


荀粲じゅんさん。「女は顔」と豪語し、美人で有名な曹洪の娘を娶ったが、彼女が流行り病であっけなく死んでしまうと、悲しみのあまり気が狂って自殺した。


夏侯(ぼう)。曹操の娘・清河公主(つまり乙女ゲームでは悪役令嬢・麗様ね)を嫁にしたが、吝嗇の上に女遊びが過ぎ、公主や弟に謀られて罪に落されてしまう。


夏侯覇。司馬氏の専横に憤慨した兄・夏侯玄の謀叛に連座されそうになり、蜀漢に亡命。完全に司馬氏に乗っ取られた魏と戦うも利あらず戦死。


何晏かあん。明帝死後に立った少帝の補佐役に就いたが、司馬懿のクーデターにより失脚、三族皆殺しにされた。


ああ、怖い怖い。

オレも不幸オーラに感染して、ひどい目に遭わないように気を付けようっと。


◇◆◇◆◇


曹操による鄴の包囲は四か月目を迎えた。

曹操軍十五万には、参謀に荀攸じゅんゆう・程昱・郭嘉が付き、将軍には曹仁・張郃ちょうこう・楽進が侍り、遊撃隊として徐晃・史渙しかんが周辺の小城攻略に活躍した。まさにオールスターだな。


蟻一匹這い出る隙もないほど締め付けられ、鄴城内の袁尚配下の部将は疲弊し、兵士は籠城戦にんでいた。袁尚はたびたび降伏の使者を送ったが、曹操は受け容れなかった。


ついに部将の審栄が、夜中守備する東門を開けるという内応の矢文やぶみを送って来た。曹操は秘かに西門の包囲を解いた上で、審栄の守る東門から夜襲をかけた。

以前、鄧艾が荀彧に


――逃げ場を失った窮鼠は、死に物狂いで牙を剥く恐れもあります。鄴城の包囲の一角を崩しておいた方がよいのでは?


と献策した計略を、曹操はそっくりそのまま実行したのだ。決して真似したわけではなかろうが、鄧艾は計略が図に当たってさぞや得意なことだろう。


袁尚軍は総崩れになり、逃げ場を求めて我れ先に西門に殺到した。押し潰され踏みつけられる袁尚の兵。西門で死んだ兵は、曹操軍にやられたというよりも、味方の兵から殺されたようなものだ。阿鼻叫喚の地獄絵図。


こうして建安九年(204)四月、曹操は最小限の損耗で袁軍閥の本拠地・鄴を陥落させることに成功した。


しかし混乱の最中、袁尚本人は鄴から逃げおおせ、北方に落ち延びて行った。にもかかわらず、曹操が上機嫌なことが諸将には不可解だった。


「閣下にお伺いしたいことがあります。袁尚がたびたび降伏の使者を寄越しましたが、閣下は受諾なさいませんでした。それは何故ですか?」


と参謀の荀攸じゅんゆうが尋ねる。曹操はにこやかに解説した。


「簡単なことじゃ。鄴の陥落は時間の問題。袁尚の生殺与奪の権はわしが握っておる。いま袁尚の降伏を許せば、奴の命を奪うわけにはいかぬ。もし殺してしまえば、奴の配下部将の恨みがわし一人に向いてしまうからな。

逆に籠城していた袁尚が諸将を見捨ててぶざまに逃げ出せば、諸将の恨みは一心に奴に向かう。もともと奴の能力などは恐れるに足りぬ。わしへの怨念を袁尚に転嫁できるなら、奴を生かしておいた方が好都合じゃ。

それに、鄴を追われた袁尚は北方に逃げるしかない。もともと奴が領有していた冀州の平原・南皮の城は、今は仇敵の袁譚が奪っておる。そこへ元の領主の袁尚が現れたらどうなるか?領有権をめぐって再び内乱に陥るのは必定。“二虎競食の計”の応用じゃな。

そこへわしが攻め入り、漁夫の利を得るという算段じゃ」


荀攸じゅんゆうは曹操の慧眼に感服した。


ところが、その上機嫌の曹操を不愉快にさせる事件が発生する。

鄴陥落の際には略奪・強姦を固く禁ずると厳命していたにもかかわらず、息子の曹丕が美人と名高い袁熙の妻・(しん)氏を捕らえ、手籠めにしたとの情報が入ったのだ。怒り心頭の曹操。


「鄴の民心を慰撫する必要がある時に、曹丕の奴め、なんたる悪行!これでは(しん)氏を袁熙から強奪するために、曹操軍が鄴に攻め入ったと人の目に映るではないか!見せしめに曹丕を打ち首にせよ!」


荀攸じゅんゆうや程昱の必死のとりなしで、曹丕自身は許都で謹慎するとともに、彼の従者が監督不行き届きの罪で杖刑を受けることで落ち着いた。


こう亡き今、嫡男のおまえがわしの足を引っ張ってどうする?

ちゅうは賢く心根も優しい。わしの徳業を助けてくれる頼もしい存在だ。秦朗はまだ五歳というのに、兵糧米の捻出に精を出し、高幹の謀叛を未然に防ぐ功を成し遂げた。二人とも将来が楽しみでならぬ。

おまえにわしの跡を継がせようと思っていたが、考え直さねばならぬな」


曹操はそう吐き捨て、曹丕を足蹴にした。


「うぬ。秦朗の奴め、めかけの子の分際で生意気な!俺に恥をかかせた恨みは決して忘れん!」


倒れ伏した曹丕は、歯噛みしながら屈辱に耐えるのであった。

……いや、オレは完全にとばっちりだよな?!




曹操はいったん離れた民心を回復するため、先年病死した敵将・袁紹の墓を参り、慟哭して涙を流した。袁紹の妻に絹を授け官から扶持米を与えるなど、手厚く遇した。お涙頂戴のミエミエの策だったが、曹操の悪評を抑えるには効果があったようだ。


また、鄴城に貯蔵してあった莫大な兵糧がそっくり手に入ったため、曹操は「鄴の民は長年にわたって袁氏の難に被害を受けた。今年の租税を免除する」と布告を出した。民衆は大喜びで曹操の支配に服するのだった。


次回。とばっちりで曹丕に嫌われてしまった関興。曹操軍にいつまでも留まるのは考え物かもしれんと思い直す。許都から帰って来た関興は、関羽に過去の身の上話を聞かされる。第一部・第二部の振り返りです。

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