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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第二部・許都青雲編
44/271

[番外編]秦朗、乙女ゲームの攻略対象に転生する

関興のお見合い編です。


『三国志の関興に転生してしまった』が面白いと思われましたら、

★★★★★をお願いします。続きを書く励みになります。


私の名前は(こう)(あん)

前世で不幸な死を遂げた私は、なんと乙女ゲーム『恋の三国志~乙女の野望』に転生しちゃったのです!


ゲームの舞台が三国志に似た異世界ってだけで、内容的には普通の乙女ゲームと変わりがないの。15歳になった庶民生まれのヒロインちゃんは優秀な成績のため、貴族の子女が通う学園に特待生として迎えられたんだけど、そんな彼女の前に素敵な五人の攻略対象クラスメイトが現れる。



1.漢の丞相・曹操の息子である曹沖そうちゅう様。絵に描いたような貴公子で、眉目秀麗、頭脳明晰、弓矢が得意なプリンス!自称・恋人募集中……って、絶対イイ人がいるに決まってるじゃない!でも、そんなやんちゃなところが魅力的♡。


2.曹操に仕える軍師・荀彧の息子である荀粲じゅんさん様。孫氏の兵法に通じた大人顔負けの軍略家で、ちょっとクールな眼鏡キャラ。ゲーム開始時には、絶世の美女と噂のある曹洪様の娘・りん様と婚約しているんだ。


3.夏侯惇の嫡子・夏侯楙(かこうぼう)様。お父様が曹操の右腕として活躍しているおかげで、大・大・大富豪!金持ちのボンボンらしく、正直、性格的にわがままな困ったちゃんだけど、彼と結婚できたら一生贅沢暮らしが約束されてるのよ!


4.夏侯淵の次男・夏侯覇(かこうは)様。脳筋でちょっぴり不良ぶったところもあるけれど、内心は一途で優しいワイルドなイケメン。剣の腕はピカ一で、学園の剣術大会では何度も優勝している。前世では私の一推しだったんだけど、学園入学前に曹操の姪の海陽姫・寿じゅ様と婚約しちゃったの。残念。


5.昔、後漢の大将軍であった何進の孫・何晏かあん様。お母様が曹操の側室に入った関係で、曹操の義理の息子と言われている。美意識に長け、詩や音楽に関しては並ぶ者のない一流アーティスト。そのせいで、男のくせにお白粉を付けてるナルシストって揶揄されてるけど、まあ美形ね。


……とまあ、こんな素敵な殿方とイチャラブしちゃおうっていうストーリー。


さて、婚約者がいる殿方にも猛烈アタックをかけるヒロインちゃんには、当然、恋敵こいがたきの悪役令嬢が登場する。それが曹操の娘の清河姫・れい様。

美人な上に凜としたたたずまい、立ち居振る舞いが優雅で自信に満ちあふれた御姿。しかも賢い。本当に素敵。


だーけーど!その分、高飛車でわがままが目立っちゃうのよねぇ。はあ、もったいない。

庶民出身のヒロインちゃんを目の敵にし、事あるごとに攻略対象と仲良くなろうとするヒロインちゃんの邪魔をする。


まあ、無理もないか。家柄がすべて物を言う時代なんだもの。五人の攻略対象は、言わずと知れた大貴族。それに釣り合うなんて、庶民出身のヒロインちゃんにはとても無理。


……と、諦めたあなたに朗報!

実は、ヒロインちゃん・董桃とうとうは後漢の皇帝・献帝の隠し子だったのでーす!


献帝から密勅を授かり曹操暗殺を謀った董承の計画は、建安五年(200)に発覚して一族は皆殺しにあった。献帝の后・董貴妃は妊娠中だったが、悪鬼のような曹操は彼女をも誅殺してしまう……と史書にはあるんだけど、混乱の中、董貴妃が生んだ娘は侍女に預けられ、秘かに彼女の娘として育てられたの。


ひょんなことから献帝の御前で対面することになったヒロインちゃんは、亡き母から渡されて大事にしていた御守おまもりを見せる。それはかつて、愛する献帝から董貴妃に授けられたものだった。確かに自分の子だと認めた献帝。一夜にして庶民から高貴な身分へと昇りつめた、シンデレラのヒロインちゃん。

そういう大どんでん返しイベントまで用意されてるのが、乙女ゲームの醍醐味よね☆


えっ、私?

もちろん、ヒロインちゃんじゃないわよ!

だって私の名前は、最初に言ったとおり(こう)(あん)だもの。


私は悪役令嬢・れい様の取巻きの一人。つまりモブ。だけど、大好きな乙女ゲーム『恋戦三国志~乙女の野望』に転生できたんだもん、とっても幸せ。


遅まきながら自己紹介するわね。私、(こう)(あん)は麗様の乳母である(こう)氏の娘なの。一応、お父様は二千石と言われる中級貴族の端くれなんだけど、大貴族のご子息でイケメン揃いの攻略対象の5人を狙おうなんて、私にはとてもとても。


だって私の顔は、兄弟からも「地味だ、平凡だ」とからかわれているんだし。




そして学園に入学する5年前、10歳の今日。

どういうわけか、曹操の娘の清河姫・れい様、曹操の姪の海陽姫・寿じゅ様、曹洪の娘のりん様、司徒・楊彪の娘の椿ちん様、ヒロインちゃん・董桃とうとうの計5人が、宮殿で催されるお見合いパーティーに招待されちゃった!


変ねえ。乙女ゲーム開始まで、まだ5年もあるのに。


あっそうか!このお見合いパーティーで、荀粲じゅんさん様とりん様,夏侯覇かこうは様と寿じゅ様が婚約しちゃうのね。ああ、私も麗様の取巻きとして、そんな素敵なイベントにこっそり立ち会えるなんて感激だわ!


……と、思っていたら。


「ねえ、杏。あなたもお見合いパーティーに出席してちょうだい」


な、なななんですって!


「男性陣が一人増えるらしいのよ。お父様(=曹操)の思いつきで急に決まったみたいで。今さら他の令嬢に声を掛けるのも面倒だし、いいでしょ?私の洋服を貸してあげるから」


という麗様の鶴の一声で、このたび晴れて、悪役令嬢の取巻きであるモブ・(こう)(あん)のお見合いパーティー出席が決まっちゃったのでした。


◇◆◇◆◇


「まあ麗様、今日は一段とお美しいですわ」


「ごきげんよう、寿じゅ様。今日も素敵な衣装ですね!」


「あら、お分かりになりまして?西域から取り寄せた、ローマ帝国産のレース編みのドレスなんですよ」


「えーっ。触ってもいいかしら?」


キャイキャイとお嬢様方が女子トークしている間、私は五人の攻略対象クラスメイトたちの幼少時(10歳)の姿を堪能していた。


あー皆なんとなく面影がある。

推しの夏侯覇様は、まだあどけなさが残っていて、ワイルドなイケメンではないけれど、これはこれで眼福ね。荀粲じゅんさん様もすでに賢そうな雰囲気を醸し出している。やだ、何晏かあん様ったら、さすがにまだお白粉はつけてないはずなのに、ガラス細工のように白くて透明な素肌。夏侯楙かこうぼう様もキラキラした高そうな服を着ちゃって……あら?


プリンスの曹沖様がいないじゃない!もしかして欠席?


代わりに、小っちゃい5歳くらいの坊やと給仕服を着た従者が、少し離れた場所に並んでボーッと突っ立ってる。


よく見れば従者の方は目がパッチリしていて、磨けば超イケメンに変身しそうだけど、坊やの方は私と同じで、ザ・平凡って感じのモブ臭が漂っている。


ああ、1人追加の男性陣ってこの子達のどっちかなんだろうな。ということは、私の今日のお見合い相手って、きっとこの子達なのかぁ。べつにいいけど。どうせ絶対婚約者を決めなきゃいけないってわけじゃないし。


「麗様、お聞きになりまして?今日のお見合いパーティーには、曹沖様はご病気で出席されないんですってよ」


と楊彪の娘の椿ちん様が麗様に声を掛ける。


「そうらしいわね。事前にお母様に聞いていたわ」


もう、麗様ったら!知ってたなら、取巻き兼乳姉妹の私にも教えてくれてもいいじゃない。幼い曹沖様の晴れ姿を楽しみにしてたのに。


「えーやっぱり!残念、せっかくおめかしして来たのに台無しだわ」


プンスカ椿ちん様に麗様は苦笑して、


「ごめんなさいね、病弱な弟で。でも代わりにもう一人の弟が出席することになったのよ。ちょっと年齢が下だけど。ねえ、林!こっちに来なさい!」


すると、従者に促されるように追い立てられた坊やが、トコトコと歩いて来た。

ん?緊張のせいか、坊やの左足と左手、右足と右手が同時に出てる。変な歩き方。


「は、初めまして。かっ、そ……そそ曹林と申します」


“かっ”って何?


「私に向かって挨拶してどうするのよ!ほら、皆さんにご挨拶して」


麗様が呆れて坊やに促す。坊やは寿じゅ様・りん様・椿ちん様と私に向かって、


「そ、曹林です。見た目は子供、頭脳は大人の5歳・独身です。よろしくお願いします」


「って、おまえは名探偵コ〇ンか?!」


思わず私はツッコんでしまった。キョトンとするご令嬢方。しまった!


「申し訳ありません。私ごときがつい調子に乗ってしまい……」


「あっ、いや。オレの渾身のジョークに反応してくれるなんて、ちょっと嬉しいです」


と照れる曹林様。


「若、盛大にスベりましたねぇ」


何事もなかったかのように、私の失言に対して給仕服を着た従者がフォローしてくれた。


「う、うるさい!そっ、と、鄧艾!」


“そっ”って何?さっきから微妙な言い間違いが気になるんだけど。


「ご紹介が遅れました。僕の名前は鄧艾。曹林様の従者をしています。お見知りおきを」


「ちょっと!どうしてあなたがここにいるのよ?」


麗様がとがめるような口調で従者の鄧艾さんを叱責した。

さすが悪役令嬢、庶民である従者ごときがこの場で口を開いたことが許せないみたい。


「いやあ、建前だけのお見合いってつまらないじゃないですか!自分の将来の伴侶を決めるのに、皆さんだって、お互い本音が知りたいと思いませんか?だから僕は……」


その時、部屋のドアが勢いよく開いて、駆け込んで来る令嬢。


「やだ~遅刻しちゃったぁ!って、きゃあああーっ!」


出た。ヒロインちゃん登場。

定番とはいえ、どうしてヒロインちゃんって遅刻するのかしら?

そして、意味もなく攻略対象にぶつかってコケる。わざとらしい。


「だ、大丈夫ですか?」


「痛たたっ……あ、ありがとうございます」


手を伸ばしてヒロインちゃんを助け起こしてやる曹林様。

目と目があって見つめ合う二人。


「……って、あなた誰?どうして曹沖様じゃないのよ?!」


ヒロインちゃんこと董桃とうとうは、自分の手を握るモブ顔の幼児に向かって苛立ちをぶつけた。


お気づきとは思いますが、関興=秦朗は曹林に扮しています。


>二千石

一般に、州刺史や郡太守などの地方高官を指します。


こんなくだらない番外編を書くくらいなら、さっさと『三国志の関興に転生してしまった』の続きを執筆しろよ!と思われた方もぜひ、

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