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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第二部・許都青雲編
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37.関興、先読みのスキルを告白する

張遼が血まみれの剣をオレに突き付ける。目が本気だ。


「言え!」


駄目だ。正直に話さないとこの場で殺される!

オレはふうっと大きく息を吐いて、


「実は……オレには【先読み】のスキルが備わっているみたいなんです。

オレが二十歳になる年、父上と平兄ちゃんが主君に見捨てられ、同盟軍に裏切られて殺されてしまう。オレはそんな運命を覆したい!

そのためならオレは、利用できるものは何でも利用してやる。たとえ曹操閣下でも天子様でも。それがオレの行動原理なのだと思います」


と答えた。荀彧はようやく得心が行ったのか、


「なるほどね。関興君の話を信じるとして、あなたの知るかぎりのことを正直に答えて下さい。関羽殿を見捨てる主君というのは劉備ですか?」


「はい」


「では、関羽殿が裏切られるという同盟軍は?」


「孫権です」


「関興君が二十歳になる年と言えば今から十五年後。その時、年号は建安二十四年で合っていますか?」


「……」


オレは迷った。荀彧が何を知りたがっているのか、オレには分かっている。この問いに正直に答えるべきだろうか?

オレの迷いを見透かしたように、荀彧は強い口調で、


「どうなんですか?答えなさい!」


「……はい。合っています」


「そうですか。つまり、あなたの【先読み】スキルが正しければ、少なくとも今から十五年後までは、漢の主上は廃されることなく帝位に即いたままということになる」


荀彧はホッとしている様子だ。

やはり荀彧は、曹操が皇位簒奪に動くのではないかとすでに危惧しているんだ。


「俺からも聞いていいか。関羽殿が殺される時、俺はいったい何をしているんだ?関羽殿を助けに行ってやらないのか?」


「張遼殿は……分かりません」


本当は知っている。史実では反対に、関羽に攻められて籠城した曹仁を助けるために、救援軍を率いて襄陽に向かっているんだ。


「俺はもう死んでいるのか?」


「いえ、生きています。ただ曹操閣下のもとで働いている張遼殿は、遠い所にいるらしく、オレの見た()()()()()の場面には出て来ないみたいです」


オレが転生者であることを隠すために、正史『三国志』に記された史実を先読みの夢で見たことだと言い訳した。


「ふうん。そっか」


と、面白くなさそうに張遼は答える。オレが張遼の未来を正直に教えてやらなかったせいなのか、それとも将来友人の関羽を助けてやれなかった不甲斐なさのせいなのか、オレには分からなかったが。


「若、俺は?」


珍しく興味があるのか、鄧艾も俺に質問した。


「さあ?荊州で牛飼いでもしてるんじゃないか?」


あながち冗談でもなく、子供の頃に牛飼いをして以降、魏に仕官する前の鄧艾のことはあまり知られていないんだよ。


「若、ひどい。さっき俺に秘密をバラされた仕返しをしてる」


ねる。だがハッと気づいたように、


「牛飼いに売られるはずだった俺は、しかし今、若の従者をしている。俺の運命は若の先読みの夢で見た将来像から変わった。()()()()()()()()()()()()


そうだ!鄧艾の言うとおりだ。おまえやっぱり頭いいなあ!

鄧艾は大事なことを教えてくれた。


オレが良からぬことをたくらんだら、女神様はオレに()を落として()罰を下すと言った。オレが仕官させたことによって鄧艾の運命は変わったのに、【雷天大壮(らいてんたいそう)】スキルは発動せず、雷は落とされなかった。


つまり、女神様の言う「良からぬこと」=オレが史実を無視して未来を変えること、という定義ではなさそうなのだ。


ならば、麦城で関羽のおっさんと関平兄ちゃんが殺されるのを()()()避けることは可能だし、荀彧が曹操に殺されずに済むよう()()()立ち回ることだって可能かもしれないのだ!


「話を戻しましょう。関興君は、高幹が謀叛をたくらむことを【先読み】スキルで知っていたのですか?」


荀彧の問いに、オレは即座に首を振って否定する。


「いいえ。都から夜逃げをする時に、たまたま高幹の軍勢を目撃しただけです」


そもそも、高幹が叛いて許昌に攻め込むなんて史実はなかったんだし。


「まあ確かに、謀叛が起こることを知っていれば、もっと前に備えを進言したり、自分の身の安全のために都を離れたりしているでしょうね」


荀彧はオレの答えに納得した。


「なら、俺とチビちゃんが対戦した西平の戦いのことは?あの偽装計略も、あらかじめ来攻を知ってて立てたのか?」


「ううん。でも、先読みの夢で見たその後に起こる未来の場面に、オレも父上も登場するから、少々ムチャをしても西平の戦いでは生き残れると思っていた」


これは説得力のある、自分でもうまい言い訳だと思う。


「ああ、なるほど。先読みの夢とは、そういう使い方もできるんだな」


感心する張遼。続いて荀彧が、


「あなたはこれから起こる未来をどこまで知っているのですか?まさか、全部知っているとか……」


「これから起こる未来のすべてなんて、分かるわけがないでしょう!

おそらく、オレが見ることのできる先読みの夢は、父上と自分が危機に瀕する場面だけだと思います」


まあ、嘘なんだけど。

正史『三国志』に記された()()()()歴史なら一応分かる。だが、その裏で誰がどのような行動を取っていたか?その時の心理は?なんて話は、一向に分からない。


「ならば、あなたが先読みの夢で見た場面を教えてもらえますか?」


「えーと。オレが見た夢は全部で五つ。

最初は、オレが生まれて荊州に逃げる場面。これは先読みの夢というか過去の記憶というか、もう終わったことなんですけどね。

双子で生まれたオレは、不吉な存在として危うく殺されるところだった。父上は地位も名誉も富貴もすべて捨てて、オレの命を助けるために曹操閣下の元を離れた。父上はオレの命の恩人。だから何としても、オレが先読みの夢で見た将来の危機から父上を救ってやりたいのです。


その夢とは、さっきも話しましたけど、オレが二十歳になる年つまり建安二十四年(219)、父・関羽と兄・関平が劉備に見捨てられ、同盟軍の孫権に裏切られて荊州の麦城という所で騙し討ちにあって殺されてしまう。これが二つ目。


三つ目は、今から四年後の建安十三年(208)の七月に、荊州は曹操閣下に二十万の大軍で攻め込まれます。この時、逃げる途中でオレは足手まといだとののしられ、劉備に馬車から蹴落とされますが、九死に一生で趙雲に救われるようです」


「……」


あまりに具体的すぎて、荀彧も張遼もそして鄧艾も驚いて声が出ない。


「四つ目の夢ですが、三つ目の続きみたいです。

荊州を手に入れた曹操閣下は、その余勢を駆って江東の孫権を攻めます。しかし、赤壁という所で閣下の水軍が返り討ちにあって壊滅してしまうのです。

北に落ち延びる閣下に対し、劉備軍・孫権軍が追撃します。諸将の働きでなんとかその追撃を振り切りましたが、閣下が華容道にさしかかった時、父の関羽に見つかってしまいます」


「ちょっと待て!つまり我々は孫権と戦って負ける、ということか?」


と張遼が血相を変えてオレを問いただした。


>劉備に馬車から蹴落とされるが、九死に一生で趙雲に救われる

ご存じのように、これは阿斗(劉禅)のエピソードです。


次回。赤壁の戦いで曹操軍は大敗すると告げる関興。そして五つ目の先読みの夢を披露した時、女神様の天罰・【雷天大壮】が炸裂する!お楽しみに!


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