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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第七部・勧君更尽編
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251.物語の黒幕、封神(リストラ)計画を立てる

「封神演義かぁ…あの小娘、たまに冴えたことを言うんだよねぇ」


そうさ。我々崑崙山勢力の神仙が天界に君臨するために、殷に巣食う邪神や奴らに味方する悪の仙道どもを抹殺したのが、もともとの“封神”の意味だよ。


あの漫画のように、自分が理想とするエンディングを迎えるため地球の歴史を弄び、気に入らなければ滅ぼして一から作り直す行為を何度も繰り返す、原初の神・女媧(じょか)を封じることが「真の封神計画」…なんて壮大な裏設定は、フィクションだからね。


そもそも皇帝や(秦以前の)王は、建前として天帝である僕が地上の支配権を承認しちゃった存在なので、彼らが死んだら誰しも昇天させて神に祀らなきゃならない仕組みなんだ。正直、「なんでこんな奴が?」って首を傾げたくなる神や帝王もいて、僕も困惑してるのが本音。


前回の封神計画から千年を経過して天界のキャパに余裕が無くなった今、僕は在庫一掃セールでそういうイラナイ神たちを天界から追い出すことにした。神籍を失った者は当然不老不死じゃなくなり、朽ち果ててしまう。


まあ、問答無用で追放しちゃうのはさすがに祟りが怖いから、新たに試験を受けて合格したら天界に戻してあげようってのが、僕が思いついた新たな“封神(リストラ)”計画ってわけ。



その試験とは……じゃじゃ~ん!VR歴史シミュレーションゲーム・三国志の天下統一バトル。


ルールは簡単。


(1)後漢が滅び、魏・呉・蜀に分かれ覇を競うゲームシナリオ:『白帝城に巨星墜ち、賢臣に孤児を託す』を223年5月に開始する。天下統一に成功したプレイヤーは天界に戻って神となれるが、敗れた残りのプレイヤーは“封神”つまり死が待っている。


(2)シナリオは原則として史実どおりに進み、何も策を講じなければ第四の勢力(司馬氏の晋)が最終的に天下を統一してしまう。その場合は三プレイヤーともゲームオーバー。



成功率33%か。楽勝じゃん!

……と思ったかい?騙されちゃいけないよ。


実は、三プレイヤーのうち必ず誰か一人が勝利して、天下統一できるとは限らないのがミソ。史実でもルール(2)のように共倒れの結末に終わっちゃったんだから。


そこに気づかず、第一回の秦の胡亥・周の幽王・新の王莽ら亡国バカ殿による対戦では、「善きに計らえ」と言い続けた結果、あっけなく三柱とも臣下に寝首を掻かれて“封神(リストラ)”されちゃった。


第二回の斉の(びん)王・楚の懐王・悪神共工(四凶のひとり)ら、欲を掻いて他国を侵略し返って自国を失う羽目になった暗君バトルでは、前世の二の舞だね、大軍を遠征させて空っぽになった都を敵に陥とされ、捕らえられて首を刎ねられた。ぶざまだ。


第三回の秦の子嬰・前漢の孺子嬰・後漢の少帝弁ら、傀儡として即位させられた哀れな皇帝による対戦では、何も動けないまま淡々と史実どおりに進み、タイムオーバーでジ・エンド。


いやぁ、処分が捗る捗る。僕の良心も痛まないし、まさに一石二鳥。僕って天才!



……でもさ、みーんな失敗しちゃうから、正直言って飽き飽きして来たんだ。そろそろ“封神(リストラ)”候補のイラナイ神からも、救済する気がないんじゃないかと不満の声が上がるかもしれないし。


そこで今回は特別ルールを追加した。


(3)官渡の戦いが起こった建安五年(200)に遡って、事前工作を解禁する。権謀術数・合従連衡・人材()用・非君主プレイなんでもありのガチンコ対戦。



「そして、第四回のターゲットはこちらの三柱。特別ルールにふさわしく、生前の悪業が祟って死後に復讐された裏切り者バトル(笑)!」


(1)(ゆう)棄疾(きしつ)

 楚の霊王は陳や蔡を討ち、その領土を飛躍的に拡げた。しかし、たび重なる出兵で楚国内は疲弊し、国民の間に怨嗟の声が上がると、棄疾の兄・公子比は霊王が遠征して不在の隙を突いてクーデターを決行。太子の禄を暗殺し、父・霊王の追放を宣言して新王に即位した。

 公子比は棄疾を司馬に任じて懐柔を図ったが、棄疾は受けず、「血迷ったか、兄上?父王は健在、今にも精強な兵を連れて引き返し反逆者を討伐するだろう。覚悟なされよ!」と糾弾した。国民は棄疾の忠義をもて囃した。ところが棄疾は、公子比を自害に追い込むと豹変、父・霊王を迎え入れるどころか自ら楚王を名乗り、逆に父・霊王へ討伐の軍を差し向ける。遠征に渋々付き従っていた兵はすでに離散し、追い詰められた霊王は山中をさまよいながら野垂れ死にしたという。


(ゆう)棄疾(きしつ)って聞いてもピンと来ないかもしれないけど、伍子胥の父親を無実の罪で刑死させて激しい恨みを買い、死後、呉に走った伍子胥から楚を占領され、墓を暴かれたあげく死体に鞭打ちされた「楚の平王」の名前で知られてるんだよね」



(2)周の携王(けいおう)

 周の幽王は、傾国の美女・褒姒の微笑見たさに烽火(のろし)を上げさせ、軍隊を緊急召集させた。何度も無駄足を踏まされた諸侯は、いつしか烽火(のろし)を見ても集まることがなくなった。ついに幽王は正室の申后および太子の宜臼を廃し、褒姒を后に、その子・伯服を太子に立てた。

 申后の父である申侯は怒り、蛮族の犬戎軍と盟を結んで反乱を起こす。都に迫る反乱軍に怯えた幽王は烽火を上げて危急を知らせたが、諸侯とその兵は誰も集まらなかった。幽王と伯服は驪山の麓で犬戎に殺された。

 周が潰滅すると、周の邦君諸侯たちは幽王の弟である余臣を虢で擁立した。これが西周の携王である。

 この事変にはウラがあった。余臣は女色に溺れて政治を顧みない幽王を諫めるどころか、オオカミ少年のような烽火の虚報を繰り返して諸侯らの緊急召集を阻み、犬戎の侵攻を誘って幽王を殺させた疑いが濃厚なのだ。

 一方、申侯は旧の太子であった宜臼を申の地で東周の平王として擁立したため、周は東西に分裂し、二王並立の情勢となった。

 当初は西周が優勢であったが、東周は大国・晋の文侯に後見を頼みしだいに勢力を挽回した。21年、携王は晋の文侯によって殺害されたという。周の王統は平王に合一され、携王の存在は史書から抹殺された(竹書紀年に断片しか語られていない)。


「しかし話はこれで終わらないんだよね。死に際、携王は晋の文侯に呪いをかけた。

《おまえの腹違いの弟(成師)が成り上がり、やがておまえの家を凌いで宗家を乗っ取るだろう》

と。その予言は三代後に実現した(分家の曲沃晋)そうだ。ひゃー怖い怖い!」



(3)嫦娥(じょうが)

 弓の達人・羿(げい)の妻神。

 太古の昔、天帝俊の子に十体の太陽がいた。この十体の太陽は世界樹の扶桑に宿り、毎日交代で一体ずつ三本足の烏に乗り地上を照らす役目を負っていたが、帝堯の時代のある日、いたずら心を抱いた十体の太陽は全員で天空に飛び出した。地上は灼熱地獄のような有様となり、作物もすべて枯れてしまった。

 困り果てた帝堯は天に祈った。天帝俊は弓の達人・羿(げい)を遣わした。羿は太陽一体を残して残り九体を弓で射殺し、おかげで地上の人々はもとのように暮らせるようになった。

 しかし自分の子を九人も殺された天帝俊は、羿を疎ましく思うようになり、羿と妻の嫦娥(じょうが)を神籍から外したため、彼らは不老不死ではなくなってしまった。

 妻を憐れんだ羿は、崑崙山に住む西王母を訪ね、不老不死の薬を二粒もらって帰った。ところが嫦娥は薬を二粒とも飲んでしまう。嫦娥は羿を置き去りにして昇天しようとするが、神籍を失っていた嫦娥は一息で天界には帰れない。途中月で休む間に、ヒキガエルに変わったという。この神話から中国では、月には(兎と)ヒキガエルが住んでいるという俗説が生まれたそうだ。


「美女が醜いヒキガエルに変えられるなんて、夫の羿(げい)を裏切った報いだよね~。欲張り女の哀れな末路ってやつさ♪」



果たしてこの三柱、前世を悔いて善行に立ち返るか、前世の悪業と同じ轍を踏むか。いやぁ~見モノだね。


おや?

僕の読みでは、(ゆう)棄疾(きしつ)は呉を、周の携王は魏を選択すると思ってたんだけど…まさか逆だったとは。

まあ、いいさ。“封神(リストラ)”されないように、せいぜい足掻いて自国を天下統一に導き、僕を楽しませてくれ。


ユーキシツ・ケイオー・ジョーカーの正体についてネタバレ回です。

ジョーカーこと嫦娥(じょうが)さんは、プレイヤーとして蜀の諸葛孔明(女神様)を選択したようですね。

楚の(ユー)棄疾(キシツ)と周の携王(ケイオー)はいったい誰に憑依したんだろう?

前世を悔いて善行に立ち返るのか、前世の悪業と同じ轍を踏むのか。

しかし関興は、まだそのことを知りません。


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