表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第七部・勧君更尽編
269/271

249.董桃、外交の使者となる

伏線を回収すると言ったな、あれは嘘だ。

――とか思っていたら。


「若、司隷より外交の使者がやって来ましたよ」


と鄧艾が告げる。

司馬懿の手の者か。フン、どうせ蒋済あたりが献帝の詔勅を携えて、成皋せいこう関に救援を送れとか居丈高に言って来たんだろう。廃帝の詔勅なんて誰が聞くかっつーの!


「会う気はない。追い返せ」


「ちょっとォ~せっかくあたしが会いに来てあげたのに、追い返すなんてどういうつもり?!」


うげっ。よりによってピンク頭の董桃じゃないか!

乙女ゲーム『恋の三国志~@乙女の野望』略して『恋@三』のヒロインちゃん。漢の献帝の血を引く皇女だと自称しているが、実は真っ赤な贋モノ。

曹丕を狙って婚約者の(しん)洛相手に断罪イベントを起こしたものの、逆にざまぁ返しを食らって牢に幽閉されてしまったのだ。曹操失脚のドサクサに紛れて娑婆に出て来たようだが…曹丕と手を切って司馬懿に乗り換えたのか?


けどさ、実はここ荊州で(かくま)ってるんだよなぁ。董桃にひどい目に遭わされた(しん)洛とか、『恋@三』本来のシナリオでは“悪役令嬢”役らしい曹麗とか、浮屠の教えに帰依して仏道修行している曹操とか、、、

万が一董桃に見つかったらやばい人ばっかりだ。やはり追い払おう。


「何しに来やがった?オレはあんたに用はねぇぞ!さっさと帰れ、シッシッ!」


「ひっどぉ~い!同じ転生者のよしみじゃない?!こう見えてもあたし、この世界の主人公なのよ☆ 少しくらい優しく(いた)わろうとか、モブのくせにそういう気遣いができないわけ?だからあんた女の子にモテないのよ最っ低~!」


「うっざ。分かったよ、さっさと用件を言え!どうせ返答はNOで決まってるが」


オレが若干キレ気味に話を促すと、董桃はモジモジして、


「あのね。せっかく出逢えた隠しキャラの花関索様♡の行方が分からなくなっちゃったの。あんた、どこへ行ったか知らない?」


はぁ?献帝を擁護しろって話じゃねぇのかよ。拍子抜けもいい所だ。

いやそんなことより、董桃は曹丕に飽き足らず今度は花関索を狙っているのか?あいかわらずの糞ビッチだな。


「知るか!なんでオレに訊くんだよ?」


「だって花関索様ったら、あたしと最後に会った時に、『今から荊州に行って関羽と関興を味方にして、桃のために天下の覇権を狙うぜ☆』って言ってくれたんだもん」


チッ、余計なことを。

まあ女神様に聞いていたから、その辺の事情はなんとなく知っている。花関索の野郎、漢の再興のためとかなんとか言って、結局は自称皇女の董桃と結婚して、自分が漢献帝の後を嗣ぐつもりなんだとか。


あっ!よく考えたらアイツ、史実では魏・呉・蜀の草刈り場となってズタボロにされた荊州を、この世界では領民が平和で安寧に暮らせるようにしたいと願うオレを悪玉と罵り、史実改変を(ただ)すことが正義とか偉そうなことを言ってたけど、漢の再興が叶って花関索が皇帝になっちゃったら、自分だって史実の改変に手を染めたことになるじゃんか!


ダブルスタンダードだよな。イラッとするわ。


ま、それはともかく今は董桃だ。なんとか言いくるめないと。


「隠すつもりはなかったが、そこまであんたが知ってるなら仕方ない。

 正直に言うと、七月の終わり頃かな。花関索とは葭萌(かぼう)関で会った。話し合いは決裂、ヤツが突然襲って来たので、女神様がスキルを使って花関索を強制的に遠くへ飛ばした。オレが答えられるのはそれだけだ」


「なにそれ?花関索様ったら、桃を熱烈に口説いてくれたくせに、あたし以外の女ともデキちゃって二人で遠くへ旅立ったってこと?もう、信じらんない!

 はは~ん。あんた、()の花関索様に口止めされてるのね?誰よ、その女?正直に白状しなさい!」


どこをどう勘違いしたらそんな解釈になるんだ?嫉妬で脳みそまでピンク色に染まりきってるなんて怖いわぁ~。でもオレにとっては、董桃を煙に巻くチャンスだ。


「女神孔明だよ。()()()()この世界に転生させた女神様」


「フン。そんな嘘で誤魔化そうったって、騙されるもんですか!」


いや、花関索が女と二人で駆け落ちしたと勝手に勘違いしてるのは董桃であって、オレはそれを正してやらないだけで嘘は言ってないぞ。


「嘘じゃないって。花関索と一緒にいなくなったのは女神孔明で……」


「はぁ?何言ってんのよ、あたしが嘘って指摘したのはそこじゃないわ。

 ()()()()『恋@三』のヒロインちゃんに抜擢し転生させてくれたのは、女神じゃなくてイケメンな()()様なんだから!」


???

どういうことだ?

オレも花関索も、諸葛孔明に扮する女神様によってこのVR歴史シミュレーションゲーム・三国志の世界に転生させられたのは間違いない。花関索は異世界に転移させられたことを逆恨みして、女神孔明を害そうとしたんだし。


(ねえ)


だとすると、ピンク頭の董桃が見間違えたのか?いや、それはないな。ビッチ董桃はイケメンが大好物なのだ。男と女の見分けがつかないはずがない。まあ、女神様が男装して董桃の前に現れた可能性もなくはないが、思い返せばオレが教えてやるまで、女神様は董桃という転生者の存在に気づいてなかったもんな。

だいたい、女神様が国宝級の美乳を目立たぬようにさらしで巻いてチッパイ化させたなんて、貴物損壊罪で万死に値するわっ!


(ねえってば、聞いてる?)


残る可能性は、董桃の言ってることは事実でアイツを転生させたのは本当に男神、つまりこの世界を作った造物主は複数存在するってことか?


そう考えると確かに、ピンク頭の董桃が(のみならず鴻杏ちゃんも)、すでに物語(ゲームストーリー)が破綻してるにもかかわらず、この世界を乙女ゲーム『恋@三』の舞台だと思い込んでることや、自分がこの世界の主人公(鴻杏ちゃんの場合は悪役令嬢の取り巻きのモブ)だと妄信してることの説明がつくわけで……


「ちょっと関興!さっきから主人公のあたしが何度も呼びかけてるのに、モブのあんたが返事しないなんて不義理、どーゆうことよっ!」


董桃が癇癪を起こす声に、ふと我に返ったオレは「ああ、悪りぃ。考え事してた」と謝って、


「けど、いつまで偉そうな性悪お姫様キャラを続けるんだ?董桃、あんた本当は漢献帝の皇女じゃないだろ」


「!! あ、あんたまさか…いつ気づいて……」


図星を指され青ざめる董桃にオレは苦笑して、


「そんなことより、聞きたいことがあるんだけどさ。

 その男神様はあんたに、VR歴史シミュレーションゲーム『三國志』ではなく、乙女ゲーム『恋の三国志~@乙女の野望』の世界に転生させてやると言ったんだな?」


「ちょ…待って待って!何なの、“そんなことより”の一言でスルーするなんて。

 あんた()あたしを脅さないわけ?バラされたくなければ俺の言うことに従えって。司馬懿も献帝も呉範も皆、そうだった」


「ふ~ん、そっか。だからあんたは、魏の乗っ取りをたくらむ司馬懿の操り人形となって、乙女ゲーム『恋@三』のシナリオと異なり曹丕を(たぶら)かしたのか。気の毒にな」


オレは董桃に同情した。ほんの少しだけ、な。


「っていうか、本当に実在するのか?献帝の隠し子って……」


「するわよ!この世界が乙女ゲームの舞台であるかぎり、『恋@三』のシナリオは絶対なんだから!

 呉範だって、董承の娘である董貴妃の子が実在する可能性は限りなく低いけど、べつの董家の侍女と献帝がそういう関係になって、隠し子が生まれる可能性は十分考えられるって太鼓判を押してたもん」


「……まあオレはあんたがどうなろうと興味ないが、献帝の隠し子説に囚われすぎて、自縄自縛にならなければいいな」


「……」


じっとオレの顔を見つめる董桃。


「何だよ?そんなに見つめたところでオレは攻略対象じゃないから、あんたの【魅了】スキルは通用しないみたいだぞ」


「ハァ…何もかもお見通しってわけね。

 分かったわよ、正直に話すわ。

 あたしはさ、司馬懿の操り人形なんかじゃなくて、男神ユーキシツ様に依頼されたとおりに実行していたら、たまたま司馬懿の企みと同じだっただけ。誰が好んで、あんないけ好かない爺ぃの言いなりに成り下がるもんですか!」


「ユーキシツ?」


聞いたことない名前だな。無機質・有機質のユウキシツか?


「知らないわよ!とにかく、あたしを転生させてくれた神様はそう名乗ったんだから」


……なんか知らない情報がいっぺんに飛び交って、頭の整理が追いつかないんだけど。


いや、伏線を回収しようとは思ったんだよ!でも、つい筆がこんな展開に進んじゃったんだもん。スマソ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ