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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第七部・勧君更尽編
268/271

248.関興、高みの見物を決め込む

いろいろ悩みながら再開します。


挿絵(By みてみん)


司隷軍と曹魏軍の激しい戦闘が成皋(せいこう)関で繰り広げられている。

荊州との間に不可侵の約定を結んだ曹丕は、結局、荀攸が勧めた『善く戦う者は先ず勝つべからざるを為して、以て敵に勝つべきを待つ』(まず敵軍が自軍を攻撃しても勝つことのできぬよう防備を固めた上で、敵軍が崩れて自軍が攻撃すれば勝てる機会を待つ)策を採用した。


都の鄴を中心として領地の要衝――北は中山、東は泰山、西は井陘(せいけい)成皋(せいこう)関、南は許昌と合肥の計六箇所の防備を固め、Bランク以上の大将(曹仁・曹洪・曹休・于禁・楽進・満寵)と副将(曹真・李典・史渙・夏侯尚・張燕・胡遵)を配置し、坐して守りに徹するのである。敵は局所戦には勝利しても、そう易々と曹魏領内に侵攻できぬ。


いくら四方面からの同時攻撃とは言え、曹魏の兵三十万(実数)に対して反曹丕連合軍の兵は二十万(公称)と少数、まして反曹魏の連合軍は義ではなく利によって集った烏合の衆であり、思うように戦局が進まねば、いずれ内紛が生じ連合が瓦解するのは目に見えている。その後に反転攻勢を掛ければ、曹魏の勝利は間違いなし。いわゆる肉を斬らせて骨を断つ戦法とも言うべき、孫氏の兵法を応用したものであった。


荀攸が挙げた要衝の一つ、成皋(せいこう)関は滎陽(けいよう)郡に位置する洛陽と山東を結ぶ要害の地であり、古来あまたの争乱の舞台となった。劉邦の謀臣・陳平が離間の計で項羽と范増の仲を裂いた古戦場址や、三国志演義でも董卓軍最強の武神・呂布が劉備・関羽・張飛と戦った場所のモデル(虎牢関)ともされる。


曹丕は寿春を守っていた名将の曹仁を召還して、成皋(せいこう)関を守備させた。

三万の兵で関を守る曹仁に対し、司隷軍の馬超・張郃はそれぞれ精鋭の兵二万を率い、苛烈に攻め立てる。


張郃は攻城用の火車や雲梯を関の前に並べた。火車で大楼を焼き火勢に乗じて成皋(せいこう)関を攻めようとしたが、曹仁は城壁の上から火を放ち攻城具を焼き尽くす。雲梯を並べ雨のごとく矢をかけたものの、守兵は盾を背負ってよく攻撃に耐えた。


[曹仁軍]

[兵力:28,834人]

[訓練度:75]

[士気:90]


[張郃軍]

[兵力:18,651人]

[訓練度:91]

[士気:83]


ならばと馬超は、土山を築いて攻城を試みたが、曹仁は強弩を用いて彼らをつぎつぎに射殺した。多くの工作兵が間道を掘って関内に侵入しようとするのを察知すると、曹仁は長い塹壕を関内に掘って対策を取った。塹壕の外に積んだ柴を用意しておき、敵兵が地下道を通って襲来すると、柴に火をつけて地下道に投げ込み焼死させるのである。


[曹仁軍]

[兵力:27,950人]

[訓練度:75]

[士気:88]


[馬超軍]

[兵力:16,492人]

[訓練度:91]

[士気:74]


さすが曹仁、三国志演義では蜀漢武将の引き立て役に下げられているが、史実では攻守にわたり活躍し、「武勇は張遼に勝り、孟賁と夏育という伝説の猛将にも匹敵する」と賞される名将だ。臨機応変に計略を交えてよく対処し、関内の将兵もまた死に物狂いで奮戦したので、司隷軍は成皋(せいこう)関を抜くことはできなかった。


「くそっ。荊州の関羽が反曹丕連合に加盟しないばっかりに……」


目論見が狂った司馬懿は舌打ちをする。

司馬懿の戦法は常に、不仲な勢力同士を煽って戦わせ互いに疲弊させて、漁夫の利を狙うものであった。今回も、献帝を廃位して不遜にも自ら帝位に即位した逆賊・曹丕の討伐を呼び掛けて、反曹丕連合に加わった荊州の関羽と曹丕を争わせ、その隙に兗州と冀州を手に入れようと画策していたものの、当の関羽が中立の立場をとったために、盟主の司馬懿(司隷軍)が曹丕軍との戦闘の矢面に立たされたのである。


(まさか、私の思惑が関羽に見破られたのか?)


フフン、その“まさか”さ♪

戦い方には、武将独特のクセがある。司馬懿が成り上がった今までの経緯を振り返ってみると、曹操と馬超を潼関で戦わせる間に献帝と曹丕を籠絡して重臣に収まり、宛の戦いではオレと馬超を争わせ、両者疲弊したところで労せず涼州・荊州を奪い取ろうと画策していたもんな。


ならば、このたびの反曹丕連合を呼び掛けたのだって、オレたち荊州軍と曹魏軍を戦わせ、両者疲弊したところで荊州及び兗・冀・豫・徐の四州を労せず奪い取ろう、なんて姑息な見え透いた魂胆はお見通しだっつーの!


おまえら、勝手に潰し合えばいい。あ、兵糧なら高く売りつけてやるので、いくらでも注文に応じるぞ(笑)。


そうして稼いだ金はがんがん内政に回す。開墾してさらに耕地を広げ、避難民を積極的に受け入れる。望むなら、彼らを兵士に取り立て鍛え上げよう。連弩や霹靂車・軍船などの武器を作り、鮮卑慕容部の者たちに軍馬の飼育を任せて、盤石の防衛体制を築くのだ。戦いが終結する頃には、疲弊した軍閥どもを尻目に飛躍的に国力が増大した荊州の一人勝ちだ。なんなら停戦和解の仲介役を申し出たっていいぜ。勝者の余裕ってヤツだな。


こうなれば南方で虎視眈々と荊州を狙う孫権も、おいそれとはオレたちに喧嘩を吹っ掛けられまい。これで関羽のおっさんと関平兄ちゃんを襲う麦城の悲劇は、きっと回避できるはずだ――イレギュラー要素の花関索さえ攻撃して来なければ。


とはいえ花関索のヤツ、もう一か月以上経つのに何の気配も感じないのがかえって不気味だ。ほら、嵐の前の静けさとも言うだろう?

そう言えば、女神孔明と花関索が(まばゆ)いばかりの光に包まれて消えた時、


「私と一緒にこのゲームから退場よ!【封神】!」


と叫んだ女神様のスキルのことが今さらのように気にかかる。


(【ワープ】で転送されただけ、だよな?)

――あの時、光の中で女神様はオレに微笑んだ。そして確かにつぶやいたんだ、「さよなら」って。……まさか自爆じゃないよな?


いやいや、日ごろ下僕と虐げてるオレのピンチを救うために、あの駄女神がそんな自己犠牲を払うわけないじゃないか!あ~花関索と一緒に女神様がいなくなってせいせいした。

うん、アイツらのことは忘れて内政に専念しよう。


そろそろ終盤が見えて来たので、無駄に張った伏線を回収して行く予定です。

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