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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第七部・勧君更尽編
257/271

237.迎撃準備

時は遡り、南鄭城攻防戦の五日前。




張遼の話によれば、劉備が漢中盆地の南にある白水関を侵略したらしい。


群雄割拠が常の三国志の世界なんだ、劉備が他人の領地に攻め入ったことは百歩譲って許してやろう。けれども将来、孫権の裏切りにあって麦城で敗死する関羽と関平の悲惨な最期を知るオレとしては、盟友の背後から鉄砲で撃つような騙し討ちは絶対に許せん!


「漢中の兵はどれだけいるんだ?」


「張魯によれば、南鄭城に一万五千、西の陽平関に八千、白水関から逃げた張衛に従う兵が三千といったところらしい。だが訓練は行き届かず、士気も低い。なにしろ曹公が荊州侵攻を謀った際に、精鋭の兵を五千ばかり引き抜いて連れて行っちまったからな…すまん」


ふーむ。陽平関の守将・楊柏に命じて南鄭城に兵を集結させたいところではあるが、訓練度も士気も低い連中だと役に立たず、逆に内側から城門を開くなど、むしろ籠城戦の足を引っ張る可能性が高い。


「やむを得ん。南鄭城の一万五千だけで籠城するしかないか…だが、厳しい戦いを強いられそうだ。張遼、おまえが指揮を執れ!」


「うむ、畏まった」


「“清野”の策をとる。敵が南鄭城の周辺でいっさい食糧を調達できないように、城外の者たちに命じて田畑をすべて燃やせ!農民たちには今年の税の免除と食糧の配給を約束して、納得させろ。決して民心を(ないがし)ろにするな、籠城戦では敵と味方の我慢比べだからな」


「おう」


「オレは鮮卑族の騎兵を率いて、城外で遊軍となる。夜襲を仕掛けて敵を翻弄しよう。安眠を妨げ、兵糧を奪い、敵の士気をガンガン削ってやるさ。

 おい蝉弗(せんふつ)、おまえに仕事だ。偵察を頼む。劉備軍の動きを調べてくれ、特に葭萌(かぼう)関と白水関の現況を念入りにな。三の子分の段翼にも協力してもらえ」


「アイアイサー♪」


てきぱきと指示を出して斥候を送り出すオレの頭を撫でながら張遼が、


「ハハッ、懐かしいな。初めておまえとタッグを組んだのも、許都の籠城戦だった。あれから八年…おまえも大きくなったもんだ」


やめれ!たまに会う親戚のおっちゃんみたいな真似は。オレは髪の毛をクシャッとする手を払い除け、


「敵が南鄭城にやって来るまでに、おまえは兵に訓練を施して士気を上げるかたわら、片っ端から落石用の大石と矢を集めろ。それでも足りなければ、竹笹の先端を尖らせて矢箭の代わりとするがいい」


「フフン、いっぱしの大将になりやがって。頼もしい限りだ、雲長殿が担ぎたくなる気持ちも分かる」


「あ?この歳になって関羽のおっさんに抱っこなんかされねぇよ!あいかわらずチビなお子ちゃまだと、オレを揶揄(からか)ってんのか?」


生温かい目でオレを見つめる張遼の視線が刺さり、鬱陶しかった。



 -◇-



さて。

斥候に放った蝉弗(せんふつ)の帰還を待つ間、オレには喫緊にやらなければならないことがある。今まで溜まったアレを抜く大事なシゴトがな!暗がりだったとはいえ、胸をはだけた胡蝶の美しいヌードを見せられたまま、十日もおあずけを食らったオレの我慢も限界なのだ。


ゲル(テント)の周りに誰もいないことを確かめた後、オレはポケットから秘薬の入った壷を取り出した。ぐふふ。鮮卑兵の蜂啓(ほうけい)がスライムを狩り険しい崖をよじ登って薬草を採集し、それらを丹念にすり潰して作った鮮卑族伝統のローション。いつの時代でも男のエロ探究心は偉大なのだ。

オレは(パンツ)を下ろし、壷の中から妖しい液体をチ〇コに垂らして刺激を与える。シコシコ。あ~ヌルヌルして気持ちいい。もうすぐイキそう…恍惚とした矢先。


「ねぇ(はた)(あきら)…って、きゃああぁーっ!早くその穢らわしいモノをしまいなさいよ!」


……また女神様が【ワープ】で邪魔しに来やがった。


「叫びたいのはコッチだよ!入る時にはノックくらいしろよ!」


「だ…だって、あんたがそんなエッチな行為の最中だとか思わないし…」


手で顔を隠しながらも、指と指の隙間からオレの屹立したイチモツをチラ見する女神様。オレは顔を真っ赤にして、慌てて(パンツ)をずり上げ、


「あんた、任地の荊州南部に帰ったんじゃなかったのかよ?!もしかして、あの時貸した百銭をわざわざ返しに来たのか?べつに後からでもよかったのに」


そう。

五月のはじめ、蒲坂(ほはん)から逃げるように去ったはずの女神孔明は、献帝に殺されそうになり【ワープ】を使って慌てて洛陽から逃げ出して来たため、手持ちのお金がないことに気づき、情けなくもオレのもとに再び戻って金百銭(=十万円)を借りて行ったのだ。べつに急いでないし、今この最悪なタイミングで返しに来なくても…。


「何の話?下僕の物は主人である私の物。百銭くらいケチケチしないでよ。それが男の甲斐性ってモンでしょ!」


うっわ、開き直りやがった。最低だ。


「だったら、何しにこんな遠い辺境まで来たんだよ?

 あっ、そうだ。劉備のクソ野郎がオレの領土の漢中に攻め入ったことは知ってるだろ。女神様がそんなえげつない作戦を立てたんじゃないよな?もしそうだったら、オレは……」


「そ、そのこと()ね、あなたに謝りに来たの。劉備将軍ったらすっかり法正に(たぶら)かされちゃって、私がいない間に漢中侵略を決定して突っ走ったみたい。……ごめんなさい」


としおらしく頭を下げる女神孔明。


「本当だったら、劉璋に葭萌(かぼう)関から撤退を迫られた機会を逃さず、劉備将軍は益州に向かって侵攻してるはずなのにね。まったく、どうして史実どおりに進まないのかしら?」


「フン。実は法正も転生者で、劉備を操って天下統一を狙っているとか言うんじゃないだろーな?」


「それはないと思うわ。せっかく史実でも益州乗っ取りは成功するのに、それを捨てて別の作戦を建策するなんてあり得ないもの」


確かに女神様の言うとおりだ。いまだ一州も持たない劉備にとっては、拠点となる強力な地盤を欲しているはず。もしも法正が史実を知っているなら、このタイミングでは参謀として当然のごとく、劉璋打倒を目指して益州に侵攻すべきと進言する一択だろう。


「それにね。法正が転生者とは考えられない理由はもう一つあって……」


「? あ、そう言えば女神様はさっき「そのこと()謝りたい」とか言ってたな!?なんだよ、“()”って」


女神孔明はモジモジしながら、なかなか口を割ろうとしない。怒んねーから言ってみろ。


「え、えっと…実は私が召喚した転生者が別にいてね、関興や関羽にちょっと迷惑をかけるかもしれないっていうか…」


「はぁ?どういうことだ?」


「あのね、三國志ゲームのパワーアップキットの中でも武将の抜擢があったでしょ?あんたがちっとも振り向いてくれないからヤキモチ()かせちゃおうと思って…じゃない、ほ、ほら、荀彧がイケメンの馬岱をボディガードに侍らせてたから、私も羨ましくなって、ついそのシステムに手を出しちゃったわけよ。

 それで、私が召喚したのはあんたの()であるはずの関索なんだけど、どういうわけか途中でグレて、「俺は関索が進化した花関索だっ」とか言い出して出奔しちゃったの」


あー。武将の抜擢→育成失敗→挫折して姿を消す流れだっけ。厳しく指導したら、パワハラ辛いとか書置きを残して家出するヤツ。どうせオレへの扱いみたく、「下僕のくせに生意気よっ!」とか暴言吐いたんじゃねーの?オレくらいだぜ、文句も言わず「ハイハイ」って女神様の横暴を聞いてやるのは。そりゃ、グレて当たり前だよ。


「違うの。そうじゃなくて、伝説の花関索みたいに武力99とアイテム[黄龍槍]の効果+3のSS級チートに本当に覚醒しちゃって…あの乙女ゲームのヒロインちゃん・転生者の董桃と組んで、この世界を荒らし回ろうとしてるのよ!」


うげっ、マジか?!

最近、なんか変だと思ったんだよなぁ。いきなりオレをめぐって♂♀入り乱れてのハーレム展開が始まったり、盗賊の王桃・王悦やお金持ちの鮑凱、それに廉康という悪者が登場したり、自分より強い男に嫁ぐと心に決めた胡蝶の存在も気になってたんだ。


そんな悪人どもを倒し、ハーレム嫁になるはずの王桃・王悦を抹殺したオレの話を聞いた女神孔明は、


「え?なんで『花関索伝』のストーリーが関興の周りで起こるの?」


オレの方が聞きてえよ!

っていうか、あんたがやらかした失態を、またオレに尻拭いさせる気だろ?!


えへへ…と笑ってごまかす女神様。


「花関索が乙女ゲーム『恋@三』の隠しキャラなら、ゲームマスターは四人の嫁(鮑三娘・王桃・王悦・花鬘)を娶るたびに、残る統率・知力・政治力・魅力のステータスが99にアップグレードするみたいな、新たなチート特典を与える仕様だったんじゃないかしら? と・言うことは……

 嬉しい!関興は、私のために花関索の野望を阻止してくれたのね!」


「は?」


なんだよ、ゲームマスターって。この世界の主人公と自称する駄女神のあんたじゃないのかよ?っていうか、どさくさに紛れてオレに抱きつくな!


「これはやっぱり愛、いや運命かもしれない♡」


むにゅ~と唇を尖らせて顔を近づける女神孔明。オレはゴチンと額に頭突きし、


「冗談はよせ。そんなことより、花関索の存在がオレや関羽のおっさんに迷惑かけるかもしれないってどういうことだ?詳しく聞かせろ」


「女神の私に暴力を振るうなんてひどいじゃない!」


おでこをさすりながら涙目で非を訴える。オレが冷たい目で睨みつけてやると、ようやく語り始め、


「実はね、花関索が出奔する際に、


《聖女の董桃と天下を獲るんだよ!あいつは漢献帝の皇女。俺はチート級の猛将。二人が組めば最強だろ?》

《そのために、まずは俺たちの味方を募る。手始めに荊州の関羽と関興だな。中華で最も裕福な州を足掛かりに、天下統一を目指して旗揚げするんだ!》


って抜かしやがったの。それに『花関索伝』によれば、花関索は関羽の次男。つまり関興の()ね。だから関羽と長男の関平が死ねば、花関索が遺産を継ぐ権利を有する。


《だったら、親父の関羽と長男の関平が麦城の戦いで孫権に負けて死ねば、豊かな荊州は俺が相続するんだよな?》


わざわざアイツはそう確認して来た。関羽とあなたを味方にしようとするのも、たぶんそれが狙い。

天下統一に協力するフリをして、油断させて最後の最後で裏切り、孫権と組んで関羽と関平の殺害に手を貸すつもりかもしれない」


すみません、しょーもない下ネタを挟まないと死ぬ病気なんです。

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