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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第七部・勧君更尽編
251/271

231.魔王討伐と荊州侵攻

前半は花関索、後半は曹操の物語です。

二戦目を終えた後の賢者タイム。俺は再び煙草をくゆらせながら、董桃に訊ねる。


「なぁ桃、花関索に覚醒した俺は、これからどう動けばいいんだ?」


「えっとね、聖女のあたしと攻略達成したキャラ達が勇者パーティーを結成して、力を合わせて“魔王”を討伐するの!」


鼻息荒く、董桃は即答する。


「ふ~ん。魔王討伐ねぇ…SS級の俺様は前衛で決まりだな。聖女の桃は後衛、知力が高い何晏は参謀として使えるけど、夏侯楙のステータスはゴミじゃなかったか?むぅ、パーティーの編成を決めるのは面倒だぜ…そうだ、桃の[特殊スキル]って何?治癒魔法とか使えるんだろ?」


「えっ、あたし?ええっと……」


実は董桃が語った、献帝の娘という出自は真っ赤な嘘。転生者であることは本当だが、偶然乙女ゲーム『恋♡三』の主人公(ヒロインちゃん)と同姓同名だったにすぎない田舎娘。すぐに司馬懿にも献帝にも嘘はバレた。ところが献帝は、曹丕や司馬懿を操る手駒として董桃の価値を見出し、皇女と名乗ることを黙認しているのである。つまり、聖女なんかであるはずがない。


「(狙ったイケメンを陥とす)【魅了】のスキルかなぁ。【癒しの力】とかの光魔法はまだ開眼していないみたいだし……」


「そっか。ま、俺は桃のエロい身体で癒されてるけどな」


フヒヒと笑いながら、俺は董桃の言い訳を聞き流してやった。


「で、“魔王”って具体的に誰なんだ?やっぱり曹操か?」


「う~ん、どうかな?陛下の嫌な奴リストには、曹操でしょ、秦朗でしょ、関羽でしょ、曹丕でしょ、馬超でしょ……“魔王”がたくさん☆あっ、もしかして魔王軍四天王なんじゃない?《馬超がやられたそうだな/フフフ、奴は四天王最弱よ》とかいうヤツ!桃、一度言ってみたかったんだ♪」


(↑なんだよ、献帝の“嫌な奴リスト”って。オレ、二番目に嫌われてるのか?光栄だな。っていうか、四天王なのにすでに五人もいるんだが。割り込み関興)


「待てよ。花関索は関羽の息子だろ?!関羽が魔王なら、俺も魔王軍になっちまうじゃねーか!俺は悪の枢軸なんてごめんだぜ!やっぱり、不倶戴天の敵といえば曹操だろーがよォ…」


「えーでもォ、『恋♡三』の舞台の九品中正学園は魏の都に開園した学校だしぃ、名誉理事長が曹操なんだから、曹操が“魔王”っておかしくない?」


「ううーん…」


俺がつじつまの合わない現実に頭を悩ませていると。


「と、とにかく。あたしは漢の皇女なんだから、漢に刃向かう者は敵。その首魁(ボス)が“魔王”ってことでいいんじゃない?」


目を潤ませながら上目遣いで説得を続ける董桃の仕草にキュンと萌える俺。やべぇ、可愛い。

曹操は漢を滅ぼそうとする敵。一方、劉備は漢を再興しようと奮闘する善玉。それに仕える俺様は正義の味方である勇者。ああ、なるほど。


「桃って頭いいなぁ」


「でしょぉ☆あたしは一旦都に帰るわ。桃に味方してくれる頼りになる殿方が見つかったって、陛下に報告しなきゃ。花関索様は、一緒に“魔王”を倒してくれる味方を増やしておいて!」


「おお、任せとけ!」


そう役割分担を決めた俺たちは、茶屋(ラブホ)を後にした。


 -◇-


お使いから帰ると、諸葛孔明が腹立たしげに、


「遅かったじゃないの、関索!どこで油を売ってたのよ?あなたは私のボディガードなんだから、常に身近で警護してくれなきゃ困るんだけど」


などと説教を始める。俺はさっさと旅の支度を整え、


「フン。悪りぃが、俺はあんたと決別する。これ以上口うるさいあんたと組むなんざ真っ平ごめんだ」


「ちょっと待ちなさいよ!下僕のくせにそんな自分勝手が許されるわけないでしょ!」


そして衛兵三人に取り押さえるよう命じたが、SSランクの俺はあっさり斥ける。ハハッ、思ったとおり強えわ、この身体。思わぬ事態に青ざめる孔明。


「せっかく異世界に転移してチートを手に入れたんだ、俺は自分の思い通りに生きて行く。じゃあな」


「こ、これからどうする気?」


「聖女の董桃と天下を獲るんだよ!あいつは漢献帝の皇女。俺はチート級の猛将。二人が組めば最強だろ?」


俺は計画をぶちまけた。


「まずは俺たちの味方を募る。手始めに荊州の関羽と関興だな。中華で最も裕福な州を足掛かりに、天下統一を目指して旗揚げするんだ!」



◇◆◇◆◇



五月下旬。

曹操は一万の兵とともに、漢中で騙し奪った輸送船に乗って漢水を下り、荊州領内へと侵攻した。


「ここまでは順調だな。さっそく司馬懿より共闘の誘いと軍資金援助の申し出があった。この調子なら、わしの進軍に合わせて内応したがる武将も増えると見てよかろう」


わはは、と上機嫌の曹操。


「林を呼んだか?」


「はい。間もなく到着するかと存じます」


曹操の奴、オレと瓜二つの双子の兄・曹林をオレの代わりに輸送船に乗せて、秦朗に見せかけようとしているらしい。ずいぶん念の入ったことだ。


「父上…我が軍に逆らった罪で関興君や関羽将軍が罰せられませんよね?だって、二人とも僕の命の恩人なんですよ!」


(がい)が不安を口にする。徐晃は肩をポンと叩いて、


「心配するな。俺も二人とは付き合いが深い。俺の軍功に免じてもらってでも、曹公に二人の命乞いをしてやるさ」


「……」


そんな徐晃父子のやりとりを、賈詡は生温かい目で眺めていた。


襄陽まであと二日の距離まで至った時、前方に黒い船影が見えた。二隻,三隻…いや、そんな数ではない。関羽は楼船二十隻・艨衝(もうしょう)百艘を率い、漢水に並べて曹操軍を待ち受けていたのである。


「ば、馬鹿なっ?!」


曹操はわなわなと震え、


「わ…わしは完全に秦朗を出し抜いておったはずだ!」


「荊州で知謀に長けた軍師は、秦朗だけではなかったと言うことでしょうな」


傍らに控える参謀の賈詡が告げる。


「丞相、お待ちしておりましたぞっ!」


向こうの軍船から、関羽が張りのある大声で曹操に呼び掛ける。


鳳雛軍師は曹操の荊州侵攻を読んでいた。いや、そうなるように誘導していた。

オレが曹軍を離れて長期間単独行動をしたのも、漢中に駐屯する鄧芝が曹操にあっさり輸送船を貸し与えたのも、錦帆賊が水夫として船を操舵するのを快諾したのも、すべて鳳雛軍師の立てた戦略だったのだ。


……だが、何のために?

オレにも鳳雛軍師の意図が分からん。曹操を殺すためなら、わざわざ陳倉へ遠征せず、曹操が馬超に殺られるのを黙って見ておればよかったのだ。オレに陳倉へ行って来いと背中を押したのは、他ならぬ龐統や関羽のおっさんだし。うーむ。


徐晃は天を仰いで、


「曹公、我が軍の侵攻は完全に関羽に読まれておりましたぜ。こうなってはお手上げですわ」


「ぐぬぬ…だが我が軍の方が上流を占めている。地の利はこちらにある!」


「無理っすよ。軍船と言っても、こっちはただの輸送船。敵さんの楼船とは造りが違います。いくら上流から体当たりを仕掛けたとしても、敵はビクともせんでしょう。むしろこっちの装甲板がやられて沈没してしまう恐れがありますぜ。曹公、泳ぎは達者ですかい?」


徐晃は、皮肉とも諦めともつかぬセリフを口にした。

関羽の号令とともに、足の速い艨衝(もうしょう)が動き出した。曹操軍の輸送船の背後に回って、上流と下流から挟み撃ちにする気だ。


「か、回避しろ!」


「……無駄だって言ってるでしょ。漢中で我が軍が雇った水夫(錦帆賊)は、初めから関羽に内通しておったようですな。河の真ん中で無防備に船を停止させたあげく、全員水に飛び込んで泳いで逃げちまいました。万事休す、白旗を揚げるしかありません」


「わ、わしの野望が…一戦も交えず、こんなにも呆気なく……」


曹操は船の甲板に膝を屈して嘆いた。


「閣下、残念でしたな」


参謀の賈詡が冷笑を浮かべて見下ろしながら、曹操に声を掛ける。


「私の忠告を聞かないから、こんな目に遭うのです」


確かに賈詡は、陳倉で曹操が荊州乗っ取りの奸計を披露した時、「果たしてうまく行きますかねぇ?」と疑問を口にしていた。


「賈詡…おまえはわしを裏切ったのか?」


「裏切る?何をおっしゃいます?私は常に、勝つ側に味方するだけ。

 我が軍が漢中を出航する時点で、閣下が荊州乗っ取りを謀っていることを相手に知らせておきました。もっとも、関羽殿はすでに閣下の謀反など想定の範囲内だったようですがね」


「うぬぬ……」


「それに、秦朗の親切心につけ込んで、最初に彼の信頼を裏切ったのは曹公ではありませんか!因果応報とはまさにこのことです。

 安心なさい。私の軍功に免じてもらって、関羽殿に閣下の命乞いをするくらいの慈悲は持っておりますから」



賈詡こわい。

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