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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第七部・勧君更尽編
239/271

220.期待の大型新人

地獄の十月が終わって、ようやく仕事から解放された・・・。

ボチボチ再開したいと思います。

まずは女神孔明のつぶやきから。

「諸葛孔明殿。女神様と下僕といったお二人の(いびつ)なプレイに外野が口を挟むのは野暮ってものでしょうが、嘘をついてまで関興君を縛りつけようとするのは感心しませんね」


荀彧のお説教が始まった。蒲坂での話だ。


「う、うるさいわね!私の気持ちなんて知らないくせに!こ、今回はこれで退散するけど、あんたは再び女神であるこの私の下僕に戻してやるんだからねっ!覚えておきなさいよ!」


私は捨てゼリフを残し、うわあぁぁーんと泣き叫びながら関興のもとを去った。

もうっ!せっかく弱気になってる関興を私のモノにするチャンスだったのにぃ。(また)荀彧とボディガードの馬岱に邪魔をされてしまった。


…って、ちょっと待って。これじゃ私は、毎回主人公に勝負を挑んではドジを踏んで退散する、ドロンジョ様みたいな引き立て役じゃない!?


はぁ……おかしいなぁ。

私はもともと劉備様推しで、史実ではなし得なかった漢王朝の再興を実現するつもりで、このVR世界を造り上げたのに。


リアルな劉備は、三国志演義で語られるような聖人君子で部下思いな英雄なんかじゃなく、もっと小狡くて自己中な、私が思い描く理想の彼氏とは程遠い人物だった。

リアルな献帝は、董卓や曹操に虐げられる可哀想な皇帝なんかじゃなく、自分が崇拝されるのは当たり前、国民などいくらでも代わりがきく、単なる税金を納める虫ケラ同然にしか思っていないサイコパスのような異常人格者だった。


天才軍師の諸葛孔明として手助けしていた二人から、いいように利用されたあげく、危うく殺されそうな私を救ってくれるのは、いつも関興だった。


「そっか。私、秦朗(はたあきら)のことが…」


三国志に詳しいという理由で、ただの使い勝手のいい下僕として転生させたはずなのに、いつの間にか私はアイツのことが好きになってしまったらしい。


そのことを自覚した私は、関興の関心を引くためにいろんなキャラで迫ってみた。綺麗なお姉さんキャラ、ちょっと高飛車なお嬢様キャラ、庇護欲をくすぐるあざと可愛いキャラ、長年共に歩んで来た幼なじみ(?)キャラ…。

けど、呆れた眼で見られるだけで、アイツの好みのタイプが一向に分からないのよねぇ。


「そうだわ☆関興に嫉妬を覚えさせるのはどうかしら?」


今まで頼ってばかりだったアイツとは別のイケメン武将を新しくボディガードに雇って、仲睦まじい女神と新人下僕の関係をしっかと見せつけるのッ!


献帝の放った刺客に襲われた時、私の身を庇うように、


(任せて下さいッ。女神様の身は俺がこの剣で守ってみせますッ!)


と護衛する凛々しいイケメン新人。

馬車から下りる時、ついよろけた私に手を差し伸べ、


(おっと、女神様!危ないですから、俺の手をしっかり握ってくださいね)


と紳士的な気遣いをするイケメン新人。

「新人君、いつもありがと♡」とねぎらいの言葉を掛けた私を、チラッと一瞥して、


(よして下さいよ!仕事に集中できなくなるじゃないですかぁ)


と顔を真っ赤にして照れるイケメン新人。

これだけ見せつけてやったら、


(な、なぁ女神様!こんなカッコだけの奴より、絶対オレの方が役に立つってば☆悪いこと言わないからさ、あんたの下僕はオレを専属にしろよ。なっ?)


焦った関興が自らそう申し出る――。



「こ、これよっ!!」


そうと決まれば、早速期待の大型新人ボディガード候補を探さなくっちゃ。


「第一の候補はやっぱり姜維よね♪」


…と思ったけど、年齢を逆算すると姜維はまだ十歳くらいの乳臭いガキ。将来を見越して今から雇ったにしろ、一人前になるには最低でもあと五年はかかるだろう。


「だからと言って今さら趙雲じゃ、関興も嫉妬を覚えるというか、尊敬のまなざしで仰ぎ見るだけだろうし…」


それじゃあ意味がないのよねぇ。


「馬謖?あーないない。(将来、泣いて斬る羽目にならないようにしっかり躾けた方がいいっすよ☆)とか関興に余裕かまされそうだし…」


うーん、適格者が見つからない。そりゃそうか、ただでさえ蜀漢の人材は少ないんだもん。私は思い悩んだ。


「あ、そう言えば。今は史実モードから仮想モードに切り替えたのよね…」


一人忘れてた。関興の()()で、しかも年上で武勇に優れたイケメン武将。


「関索がいるじゃない!」


歴史シミュレーションゲーム『三國志』にはあたかも歴史上実在の武将として登場するものの、本当は史書には一切記されない。ただし、荊州や雲南では今に至るまで武勇伝が語り継がれる伝説上の人物。

劉表の死後、曹操の荊州侵攻から逃れる際に、怪我を負って行方が知れなくなったものの、転々と隠れ住んで葭萌(かぼう)関に駐屯する劉備のもとを訪れた、という身の上は嘘っぱちらしい。


それに、私が築いたこのVR世界は最初は史実モードで始まった。だから、伝説的存在の関索はまだキャラクターが定まっていない。


「あっちの世界で転生付オーディションを開催して、関索役にイケメンをスカウトしちゃお☆」


というわけで、早速私は行動を開始した。


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