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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第六部・哀惜師友編
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197.献帝、本性を現す

突然ですが、続きを書き貯めていたパソコンがクラッシュして、筆者は茫然自失の状態です。この回は龐徳編の次に書こうと思ってたまたまスマホに下書きしていた分を、あれこれ推敲して仕上げました。どうしよう・・・マジで

その頃。

馬超の説得が不首尾に終わり、その足で許都(注・洛陽の新都はまだ建設途上である)の漢の朝廷に現れた女神孔明は、御前会議を終えた献帝をつかまえ、


「陛下、陛下!」


と呼び止める。ふり返った献帝は、孔明の姿を認めると、


「来たか。そろそろ現れる頃だと思っておった」


と言って奥の一室へと誘う。挨拶もそこそこに孔明は、


「聞くところによると、鎮西将軍の馬超は曹丕や司馬懿と組んで、荊州の関羽を攻めるとか。真でございますか?」


「うむ。真じゃ」


「私が授けた作戦とはまったく違った展開になっておるようですが……」


「はて、そなたに授けられた作戦?何であったかのう?」


と首を傾げる献帝。

(うすらトボける気ね)と見た孔明は、念を押すべく、


「お忘れですか?涼州の馬超将軍・荊州の関羽将軍そして我が領袖の劉備将軍の三強が同盟を結び、三方から曹操を攻撃して許都におわす陛下を救い奉り、天下に号令を掛ける大計」


「ああ、あれか。思い出した、そなたが熱く語った()()()。朕は楽しく聞いておったぞ」


()()()ですって?!陛下、さすがにそれは無礼が過ぎませぬか?」


女神孔明は顔をひきつらせる。


「そう怒るでない。せっかくの美人が台無しだぞ」


「話をはぐらかさないで下さい!なぜ陛下は私の作戦を捨てて、曹丕や司馬懿を頼りとするのですか?」


と尋ねると、献帝は事も無げに、


「決まっておるではないか!

田舎侍なれど天下無双の騎兵を有する馬超はともかく、いまだ一州も領有せぬ劉備や、朕が父祖の(ぼく)帝(注・霊帝の悪諡号を改めた)の陵墓造営に百万銭の供出を出し惜しみするような、反抗的な関羽と組む理由がどこにある?

それよりは、朕の娘の董桃に籠絡されておる曹丕や朕に従順な司馬懿の方が、まだ利用価値が高いわい」


先に聞いた馬超と同じセリフだ。二人が(おそらく司馬懿に知恵を授けられて)口裏を合わせているのは明らかだろう。孔明は苦虫を噛み潰したような顔で、


「司馬懿は狼顧の相、奴を信用するのは危険ですよ!曹魏の内部に巣食う獅子身中の虫。新たに自らの王朝を開く野望が見え隠れしております」


と忠告するのが精いっぱいだった。


「そんなことは百も承知じゃ。心配致すな、奴の生殺与奪の権は朕がしっかり握っておる」


「そうなのですか?それはどのような……」


「フフ、そう簡単には教えられん。いくら賢者の孔明といえどものう」


献帝は巧妙に説得の糸口をかわす。



「朕の代で漢王朝は終焉を迎えるそうじゃな」


「……」


思いもよらず、当の本人から告げられた哀れな史実に、どう答えていいか咄嗟に思い浮かばず、沈黙を続ける孔明。


「隠さんでもよい。インチキ占い師の呉範がかつて朕にそう告げよった。あれは呉の孫権を使って朕を担ぎ上げ、天下統一を果たさんと夢見ておったのだ。

それに、朕の娘の董桃にも【先読み】のスキルとやらが備わっているらしい。あいつは曹操を継いだ曹丕が漢を滅ぼすと知り、スキル【魅了】で奴に接近を図った。

朕の娘婿となれば、異例とはいえ、帝位を継ぐ資格が生まれる。曹丕自身も帝位に色気を出して実父の曹操を裏切り、今ではすっかり朕に与する協力者のひとりじゃ」


と自慢げに語る献帝。


「お言葉ですが、孫権には大義がありません。仮に呉範が死なずにあれこれ画策したところで、天下が孫権になびくはずがない。まして曹丕は、亡父が一代で築いた膨大な遺産を相続したにすぎぬ身。天下を経営する才などこれっぽっちも備わりませぬ。

陛下が彼らを頼りにするなど、百害あって一利なし。私は反対です」


「ハハハ、心配いたすな。どうせ孫権も曹丕も、曹操と同じように朕の権威を利用するだけ利用して、最後は使い捨てにする気だろう。朕の役に立つとは思うておらぬ。

だがのう、漢王朝の権威が衰え、なおかつ軍事力を持たぬ朕が皇帝権力を保持し続けるためにはどうすればよいか?


初めは強い軍閥の傘下に入り、庇護してもらう手を考えた。虎の威を借る狐の戦法だ。朕が虎に選んだのが曹操だった。が、曹操は朕よりもさらに上手(うわて)。朕の権威を巧みに利用し、自分に刃向かうは漢の天子様に逆らうも同義との理屈で、敵対者を次々に粛清し、己が勢力を強大化させることに成功した。


失敗を(さと)った朕は、別の手段を考えた。

朕の目の上の(こぶ)となっている一強(つまり曹操)を多弱が連合して叩く、いわゆる出る杭を打つ戦法。一強が没落して多弱の中から新たに増長した強者を、残った多弱が再び連合して叩く。これを繰り返していけば、やがて朕に(あだ)為す軍閥はこの世から消え失せるであろう。朕の権力は安泰だ」


呆れた孔明は思わず、


「馬っ鹿じゃないの?!再び黄巾賊のごとき大乱が起これば、いったい誰が鎮圧するの?塞外民族の匈奴や鮮卑が攻め込んできたら、いったい誰が撃退するの?!」


言葉が過ぎることに気づいた孔明は、コホンと咳払いをして、


「陛下のお考えは単なる自己保身の極み。決してこの国の為になるとは思えませぬ」


と諫めた。だが献帝はどこ吹く風。


「だから何じゃ?漢王朝は朕の物。朕がおらずば漢の朝廷は成り立たぬ。朕が自己保身に走るのは、即ち漢の朝廷を存続させることと同義。

ならば、朕が自ら策謀を(めぐ)らせ漢の延命を図って何が悪い?朕だって人の子、我が子に皇帝の座を譲り、永久(とこしえ)に漢の世が続いて欲しいと願うて何が悪い?」


「……」


狂気じみた献帝の論理に唖然とする孔明。


「そなたの推す劉備だって、曹操らと同じ野望を抱いておらぬとは限るまい。所詮、都から遠く離れた幽州の片田舎に生まれた(むしろ)売り。劉という姓を奇貨として、あわよくば朕と同族に成り上がりたいだけの野心家。前漢の皇帝の末裔との言も怪しいものだ。

どうせ朕が曹丕に禅譲した後に、朕の遺志を継ぐとでも称して漢の後継王朝を建て、自ら皇帝に践祚する気でおるのだろう。そんな輩が信用できようか!?

だとすれば、あいつを推すそなたも呉範や董桃のような俗物と同類に違いあるまい。賢者を名乗るのも烏滸がましい!つまりは朕の敵。朕の願いを妨げる輩は排除しなければならぬ」


献帝は片手を挙げて近衛兵を呼ぶ。そして、


「こやつは朕に(あだ)為す謀叛人。今すぐに殺せ」


と命令を下す。「ははっ!」と応じた近衛兵は、女神孔明を取り囲み槍を構える。孔明は「ハァ…」とため息をついて、


「ついに陛下が本性を現したわけね。関興があなたよりも曹操の方がまだマシだと見切りをつけて、彼の救援に向かった意味がようやく分かったわ。

ねぇ陛下、あなたごときに女神の私が殺せるとでも?」


「殺れっ!」


献帝が近衛兵に命じると同時に孔明は、


「【ワープ】!関興のもとへ!」


と叫び、その姿を眩ませた。


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― 新着の感想 ―
[一言] PC買い替えは必要でしょうが、データだけはHDD-USBケーブル買えば何とかなるかもですね
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