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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第一部・関興転生編
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[番外編]ブラック関羽「そうだ、売国しよう」

もしも関羽が“ブラック関羽”だったら、という設定です。

最初、斥候のねずみから、「曹操軍のが荊州に向かって侵攻中。先鋒・騎兵五千は、現在位置・唐県の東百里まで接近」との知らせが入った時は、マジで焦った。

だいたい、田豫とは相互不可侵の約定を結んでいるのに、曹操閣下が三万五千もの大軍でこの地に押し寄せて来るなんて、なにかの間違いじゃね?


「そうか……急ぎ新野の劉備将軍に連絡、応援を要請しろ!」


と黄佰長に指令を出した。さすがに劉備将軍は、我が唐県に応援を寄越してくれるだろ。

唐県が陥ちれば、次に曹操軍に襲われるのは新野県。劉備将軍がよほどのバカじゃなければ、協力して敵を防いだほうがいいと判断するはずだ。


「兵どもは、ただちに出陣の用意!」


「マジかよ?嫌だなぁ、超怖えんですけど」


案の定、兵士たちは出陣を拒む。気持ちは分かるぞ、俺だって怖い。

兵三千とはいえ、俺の命令どおり動けるのは実質的に千人だ。とすると、兵一人で五倍もの敵と対峙しなければならない。そんな戦いは無謀だもんな。


「つべこべ言わず、覚悟を決めろ!ねずみ、曹操軍を率いる武将は誰か分かるか?」


「えーと。軍旗に“張”の字が見えたので、張遼将軍だと思われます」


「張遼殿か!」


それを聞いた時、俺はしめたと思ったのさ。

張遼はお互い気心の知れた友人だ。話の分かるヤツだから、田豫と結んだ不可侵の約定のことを説明すれば、納得して軍を帰してくれるかもしれない。

そんな淡い期待を抱いていると、新野に応援を求めに行ったはずの黄佰長がもう戻って来た。俺は驚いて、


「ずいぶん早かったな。して、劉備将軍の援軍はいかがであった?」


「それが……逆に新野から早馬が来て、関羽隊長に伝えよと。新野県は籠城する。おまえらが唐県を棄てて新野に来るならば受け入れる、と」


なんてこった!

以前から劉備将軍は戦下手だと呆れていたが、この期に及んで自己保身に走るとは本物のバカだったのか!俺は心の底から劉備将軍を軽蔑してしまった。


あーもう無理。ついて行けん。

正直、あの時張遼の忠告に従って曹操軍に残っていれば……と後悔したことも一度や二度じゃない。

機会があれば、劉備将軍を見限って再び曹操閣下に帰順したい。

漠然とそう思ってはいたけれど、俺は義理がたく思い留まっていたんだよ。だけどさ。


その時、俺はひらめいた!


「そうだ、売国しよう!」


よく考えたら、俺は兵糧の密売のおかげで大金持ちだし、開墾に成功して唐県の石高も四万石を下らない。

きっと、優良県令として曹操閣下も好遇してくれるだろう。

それに配下の兵士三千人を温存して投降すれば、以前の軍功と合わせて平虜将軍くらいには任命してくれるんじゃないか。


「心配するな。おまえら兵を無駄死にさせるような真似はせん」


俺の将軍号獲得のために、な。


「県城に城壁を築かなかったのは俺のミスだ。籠城することも叶わぬ。唐県の安堵を俺一人の命であがなうことができれば悔いはない。皆の者、短い間だったが世話になったな」


そう言い残して、俺は単騎で唐県と朗陵県の州境に向かった。

よし、これでいい。


実際のところ、売国するなんて言ったら「父上、そんな卑劣な真似はできません!お国のために徹底抗戦しましょう!」と迫るような、正義感の塊みたいな息子がいるんだ。まあ、平のことなんだけどさ。


それに興。あいつがどう動くかもっと読めないんだよ。

俺が想像もつかないようなビックリドッキリ作戦を思いついて、万一曹操軍を撃退しちまったら、俺の将軍計画がパーになってしまう。


興にだけは絶対に知られるわけにはいかない。

うん、俺一人で投降交渉した方がいいな。相手は友人の張遼だし。


俺は赤兎馬に跨り青龍偃月刀を構えて、州境の峠で曹操軍の来攻を待ち構えた。

すると。


「父上。助太刀に来ました!配下に加えて下さい」


うわああっ!なぜ興がここに?!

やばい、早く追い払わねば。俺の計画が邪魔されてしまう。

俺は胸の内を悟られないように冷静に微笑み、


「興、おまえのようなチビなんか足手まといだ。今すぐ逃げろ。

そうだ、田豫を頼れ。あいつも不可侵の約定が破られてしまって心苦しく思っているはずだ。きっとおまえを受け容れてくれるだろう」


と告げると、興はあっさり引き下がった。やれやれ、とりあえず危機は去った。


やがて遠くからひづめの音が聞こえる。峠に向かって登って来る道沿いに、もうもうと砂煙が舞い上がる。姿を現した騎兵らに向かい、俺は雄々しく吠えた。


「河東の関雲長見参。ここを通りたくば、俺を倒して行くがいい。命を惜しまぬ者は前に出よ!」


一騎討ちなら絶対に負けない自信がある。

それに、俺の武勇がまだ衰えていないことを張遼に見せつける必要もある。

結局、俺は四人と戦った。圧勝だった。いい流れだ。


「あいかわらず見事な腕前だな、関羽殿」


と言って、張遼がパチパチと拍手しながら騎乗のまま近づいて来た。

よし、ここからが本番。うまくやれよ、俺。


「世辞などいらん。張遼殿答えろ、五千の騎兵でいきなり我が唐県に攻め寄せて来るとはどういうつもりだ?」


「おお、怖っ。せっかく近況を訪ねに親友がやって来たのに、おまえそんな物騒な応対しちゃうわけ?つれないなぁ」


「ふざけるな!おまえほどの将軍が、俺と朗陵県令の田豫殿が相互不可侵の約定を結んでいることを知らないはずはあるまい。その約定を一方的に破るとは、どういう了見かと聞いている!」


俺の剣幕にふうっと溜め息を吐いた張遼は、


「やれやれ。友達思いの俺の優しさが伝わらないとは寂しいねえ。

関羽殿、おまえが富貴も名誉もなにもかも捨てて曹操閣下の元を離れ、もとのあるじだった謀反人の劉備の後を追った過去は今さら問うまい。

だが、その劉備はおまえをどのように遇した?今の境遇に不満はないのか?」


ああ、俺は不満の塊さ!しかし、ここは弱みを見せてはならぬ。

俺は張遼を睨みつけたまま、沈黙を続ける。


「関羽殿、降伏しろ」


「!」


よっしゃ!俺は心の中でガッツポーズをした。

最初の一言を張遼の口から言わせたぞ。これで投降交渉は俺の方が有利になる。


「俺の率いる騎兵は五千。後詰で曹操閣下が歩兵三万で向かっている。おまえの兵力では多勢に無勢。我々に屈したとしても恥でもなんでもない」


「お、俺は……」


俺は迷っているフリをする。もう一声!もう一押しくれ!


「悪いことは言わん。もう一度、曹操閣下の元に戻って来い」


かしこまりー!曹操閣下の元に戻りまーす♪

そう宣言しようと思った、その時。


張遼を狙って一本の矢が走る。すかさず剣を抜いた張遼は、矢を難なく叩き落し、近くのイチョウの木の上に向かって飛刀を投げつけた。


「うわっ!」


と声がして、イチョウの木の枝から落下する馬鹿がいる。

曲者くせものめ!俺の売国を邪魔をするな!

……と思ったら。


「興!」


えええーっ?なんで興がここに残ってるんだ?!


「馬鹿者!今すぐ逃げろと言っただろうが!」


「ご、ごめんなさい。けどオレは父上が心配で……」


「張遼殿が手加減してくれたから良かったものの、心の臓に飛刀が刺さっておまえは死んでいたかもしれないんだぞ!」


俺は絶好のタイミングを邪魔した興を本気で叱った。ところが張遼は感心して、


「いやあ、こんなチビちゃんが俺を狙っていたとはね。結構、結構。なかなかの腕前だったぞ。関羽殿の息子か?」


しまった!張遼に興を見られてしまった!張遼がもし双子の兄の顔を知っていたら、興の出生の秘密が……。

俺は仕方なくうなずいた。そして興に、張遼に謝るように促したが、興は反省の色もなく、


「……父上に降伏しろなんて言うから」


と捨て台詞を吐く。そんな興に向かって張遼は優しく諭し、


「だがな、お父上にとっても悪い話じゃないと思うんだ。四年前までお父上が曹操閣下の配下にいたことは知っているだろ?」


「はい」


「謀反人の劉備とは違い、関羽殿は曹操閣下を裏切ったわけじゃない。曹操閣下もそれはご存じだ。今ならまだ間に合う。俺からも口添えしよう。どうだ?」


ありがとー張遼♪おまえは俺の親友だ!

俺は握手を求めて張遼に手を伸ばすと、興が溢れる涙をぬぐいながら、


「……だけど、張遼将軍は父上を裏切ったじゃないか!

父上と田豫様が交わした、相互不可侵の約定。オレが父上に勧めたばっかりに、父上は県城に城壁を築かず籠城もできないまま、こうして張遼将軍に攻められ、単騎で兵五千と対峙して降伏を迫られている。

浅知恵をろうしてしまったオレは、父上に申し訳なくて……」


「チビちゃん……じゃないな、関興君。四歳児とはいえ、君はすでに一人前の立派な武将だよ」


父親である俺への忠節に感心した張遼は、興の頭をよしよしと撫でる。

うむ。和気藹藹(あいあい)とした良い流れだ。


今こそ告げよう、俺は曹操閣下に投降すると!


だがその前に、涙をぬぐった興が口を開いた。


「だからオレは、張遼将軍に伝えなければならない。

降伏するのは張遼将軍、あなたの方だ、と。後方の崖上をご覧じろ!」


興の言葉に、俺も張遼も思わず崖の上に視線を向けた。

すると。

峠からそびえる左右の崖の上に、“趙”と“陳”の字をあしらった荊州軍の旗が掲げられていた。


なっ、なんだとォー?!いつの間に趙雲と陳到が援軍に駆けつけたんだ?

俺は自分の目が信じられなかった。


「左右の崖に趙雲・陳到の兵を五百ずつ配した。オレの合図とともに、岩を落としてあなた方騎兵隊の退路を断ち、雨のように矢を放つ準備ができておる。そして前方からは――」


正義感の塊の平が率いる屯田兵三千が現れ、魚鱗陣を構えやがった。


「形勢逆転だ。この三千の兵を率いるは一騎当千と名高い関雲長!

さあ張遼将軍!あなたは包囲された。いかが致す?」


……ほらね、ビックリドッキリ作戦が発動してしまったよ。

興がからむと絶対こうなると思ったんだ。


「三国志の関興に転生してしまった」が面白いと思われましたら、

★★★★★をお願いします。続きを書く励みになります。


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