186.卒業
せっかく頑張って苦手なHシーンを書いたのに、いいね!も☆もくれなくて評判良くなさそうなので、書き直す。
部屋に入ると、オレたちは再び濃厚なキスを交わした。いざ愛し合おう!となったところで、オレは大事なことを思い出した。
「ま、待ってくれ。オ、オレはその……初めてなんだ」
そう。前世の24年間を含めてオレは女性を抱くのは初めての経験なのだ。
「嬉しい!興ちゃんの初めての女になれるのね♡」
「だからオレは、女の人を喜ばせる手順がよく分からないんだよ」
甄洛は人差し指をそっとオレの口に立てると、
「大丈夫。興ちゃんは私に身を委ねてちょうだい♡」
と言って、オレをベッドに押し倒した。
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翌朝。
目が覚めると、甄洛が生まれたままの姿で愛おしそうにオレを眺めていた。
「おはよ、興ちゃん。オトナの男になった気分はどう?」
「……最悪だ。あんたに犯された気分だぜ」
クスッと笑った甄洛は、
「三回も中出ししたくせに強がり言っちゃって!私はとても良かったわ」
と褒めて、頬に軽くキスをしてくれる。
ああ、本当はオレも最高だった。
24年間もチ〇コを使うことなく命を落とした前世のオレが不憫すぎて、今さらながら血涙を流しそうだ。
起き上がって着替えを始めた甄洛に向かい、
「あ、あのさ。その……オ、オレが何度も中出ししちゃったせいで子供がデキてしまったら、オレはちゃんと責任をとるって言うか……け、結婚しようって言うか……」
と真剣に口にしたのに、
「フフ。興ちゃん、懲りずにまた私にプロポーズしてくれるの?」
とからかうように訊ねる。
「オ、オレは本気だよ! 甄妃様のことは本気で愛……」
甄洛はオレの唇の前に人差し指を立てて、
「嬉しい♡ でもそれ以上は禁・句☆ 夕べのことは二人だけの秘密にしましょう」
「ど、どうして?!」
「私は曹沖様に操を捧げる悲劇の妃を演じなければならないの。叡のために」
「!!」
もしやアレか?
かつて鴻杏がこっそり教えてくれた曹叡誕生の謎。生まれた月と血液型から類推すれば、曹叡の本当の父親は曹沖ではなく、曹丕なのではないか?という話。
オレはゴクリと生唾を飲み込んで、
「意味分かんないよ!甄妃様がオレと結婚してくれたら、父親となるオレが責任もって、曹叡様が成長するまで育てるつもりだ。オレを育ててくれた関羽のおっさんのようにな」
甄洛は微笑んでいるのか悲しんでいるのか曖昧な表情で、
「……興ちゃんって、肝心なところでウソが下手なのね。誤魔化さなくてもいいわ。賢い興ちゃんのことだもん、本当は気づいてるんでしょ?叡の本当の父親が曹沖様じゃないって」
ああ、知っているとも。史実でも、曹叡の本当の父親は袁煕ではないかと疑われていたもんな。
「曹沖様にプロポーズされるまで、私は曹丕殿下の婚約者だったじゃない?愛していないとはいえ、月に一度は丕殿下に奉仕しなければならなかった。苦痛だったわ。
そして沖様と結婚式を挙げる時にはもう、私のお腹の中に叡が宿っていた。式の直前、体調を崩して倒れてしまった私の異変に真っ先に気づいたのは沖様。私は泣きながら正直に打ち明けた。けれど沖様は私の不貞を一切咎めず、「そんな事情もすべて承知の上で、僕は洛さんにプロポーズしたんだよ」と言ってくれた」
なんだよ、そんな男前な話。これじゃ、死んだ曹沖に勝てるわけがないじゃん!
「曹麗皇后が危険を冒して私の逃亡を助けてくれたのは、叡が曹沖様の血を分けた子だと信じているから。私が一時の情に溺れて興ちゃんと結ばれちゃったら、曹麗様の信頼を裏切ることになってしまう」
「で、でもっ。甄妃様だって、夕べは「私を娶って」ってオレに囁いたじゃないか!」
オレは聞き分けのない子供のように駄々をこねる。
「言ったでしょ、私は魔性の女だって。本気にしちゃ駄目」
と言って、甄洛はオレの鼻の頭をツンとはじく。
「分かってちょうだい。いくら興ちゃんのことが好きでも、私は一生曹沖様への愛を貫かなければならない立場なの。
それに興ちゃんだって、まだ鴻杏さんに未練があるんじゃない?」
そりゃそうだけど……そんな断り方はずるいよ。
ギリッと唇を噛みしめたオレは、
「……分かったよ。けど、これでお終いなんて絶対イヤだ。荊州に着くまでは、飽きるまで甄妃様を抱かせてくれ!」
「叡の出生の秘密の口止め料ってわけね?いいわ。その代わり、いちど火照った私の身体を満足させてくれなきゃ許さなくてよ、興ちゃん♡」
と微笑んだ甄洛は、オレの股間に手を伸ばし、魔性の女の本領を発揮するのであった。
-◇-
一時間近く腰を振り続け、弾切れになってようやく甄洛から解放されたオレは、あんなこと言うんじゃなかったと後悔しながら船室を出ると、甘寧がニヤニヤしながら近づいて来て、
「抱いた女の香の匂いをプンプンさせながら歩くんじゃねーよ!」
と耳元で囁く。オレが慌ててクンクンと自分のにおいを嗅ぐさまを見ると、
「バーカ。鎌かけただけだっつーの!まんまと引っかかりやがって」
と大笑いした甘寧は、
「そっかぁ。ついにチビちゃんも童貞を卒業したかぁ。しかし、最初にチビちゃんを落とすのが甄洛さんだったとは、舞姫さん(=関平君のお嫁さん・劉舞)の読みどおり、さすがだわ。おっと、いかん。一人前の男になったチビちゃんのことは、もう“チビちゃん”って呼べねえな。で、若。どうだった?」
「もうコリゴリだ。しばらく女は要らないかな」
オレは正直に今の心境を語った。甘寧の目が妖しくキラリーン☆と光り、オレの股間に手を伸ばすと、
「フッフッフ。だから言ったろう、女なんかやめて俺の花郎になれって」
オレは甘寧の手をパシッと叩き、
「アホか!甄洛に絞り取られて弾切れなんだ。変態イケメンのおまえに抱かれる気なんかねぇよ」
「くっ、そこまで初心者のおまえを女体に溺れさせるとは、魔性の女め!俺も甄洛さんに一度そのテクニックを伝授してもらいたいものだ」
やめとけ、不敬罪で首が飛ぶぞ。
「ま、何はともあれ、鴻杏ちゃんにフラれて落ち込んでいた若が立ち直ったのなら、あの魔性の女に感謝せねばならんのだろうなっ!」
と言うと甘寧は手をヒラヒラさせながら去って行った。




