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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第六部・哀惜師友編
202/271

185.関興、魅了される

気を利かせた甘寧が急いで馬を四頭調達してくれ、オレは(しん)(らく)(それに抱っこした赤ん坊の曹叡)と,そして甘寧と()妃,徐蓋(じょがい)と曹林,張虎と曹(こん)に分乗し、急ぎ上蔡の港に向かった。周瑜の話どおり、劉馥(りゅうふく)の遺児で今は正式に関羽軍閥に仕官した劉靖が待っていて、オレたちを快く船に迎え入れてくれたけれど、残念ながらその船は孫紹の軍船ほど大型ではない。


「すみません、若様。個室はあいにく二部屋しかありません……」


と恐縮する劉靖。


「かまわないよ。母上・曹林・曹(こん)様で一室と、(しん)妃様・曹叡様に一室を与えてやってくれ。オレたち野郎どもは甲板でザコ寝でもするさ」


そう返事して、オレは食事も摂らずに横になる。


「秦朗……」


()妃が心配そうに声を掛けて来たが、オレは振り向きもせず横を向いたまま黙って寝たフリをした。


「ごめんね。私たちがあの仮面の男に捕まったばっかりに……」


「あーもう、うるさいな。放っといてくれ!」


()妃はしばらくそばにいたようだが、オレが相手をしないと分かると悲しそうに去って行った。

酒に酔って陽気になった甘寧が、


「失恋したチビちゃんはそっとしておいてやろう(笑)」


とか抜かしやがる声が聞こえ、イラッとしながらふて寝していたオレはいつの間にか本当に眠ってしまったようだ。


ふと目を覚ますと、船はすでに淮河上流の桐柏(とうはく)ダムの畔に停泊していた。辺りは真っ暗で夜空には無数の星が瞬いている。排気ガスによる曇りとネオンの灯りに慣れた前世の日本では、空にこんなにたくさん星があるなんて気づきもしなかった。


固い甲板の上で寝ていたせいか、身体の節々が痛むオレは、ゆっくりと起き上がって大きく伸びをした。グーッと腹の虫が鳴る。やれやれ、落ち込んでる時でも腹は減るんだな。飯が残ってないか探すとするか。

オレがランプを灯すのを見計らったかのように、(しん)(らく)が個室から出て来て、


「興ちゃん……」


と声を掛けた。


「なんだよ?あんたも謝りに来たのか?ウザいから、そういうのやめてくれないかな」


口を開く前に釘を刺された(しん)(らく)は、悲しそうな目でオレを見つめる。


「あのさ。オレは(こう)(あん)ちゃんが身代わりで人質になると名乗り出てくれた時、正直ホッとしたんだ。ああ、これでこの場は上手く収まる、と。最低だろ?

 孫紹に非難されるまでもなく、オレの正体は、自分に利があると思えばガールフレンドすら売り渡すような、ゲスなクズ野郎なんだよ。

《私を救出したばかりに、興ちゃんばっかりひどい目に遭ってかわいそう》とか自分を責める必要なんかないぜ。オレはこのとおり反省の色を見せるでもなく、開き直って誰かれ構わず八つ当たりするような、可愛げのない奴なんだから」


「…………嘘」


「なに?」


「興ちゃんの嘘つき!

 いつだってそう。どうして悪人ぶって自分を傷つけるの?本当は(こう)(あん)さんに申し訳ない気持ちでいっぱいで、こんなに苦しんでるくせに。()妃様や私に負い目を負わせたくないと憎まれ口を叩いてるけど、そんなセリフ、誰が信じるものですか!」


「……」


「ねぇ知ってる?私、あなたにはもう三度も救われてるのよ。嫌われようとしたって嫌いになるわけないじゃない!

 興ちゃんがゲスなクズ野郎なら、私はいったい何?

 曹丕殿下と董桃さんが発した断罪イベントから、身を挺して庇ってくれた興ちゃんを置き去りにして沖様に乗り換え、その沖様が戦死しても後を追わず女々しく生き長らえる。曹麗皇后に(かくま)ってもらった恩を忘れて、さっさと自分だけ安全な場所に逃げ出し、自ら人質に名乗り出た(こう)(あん)さんの不幸を踏み台にしたあげく、また性懲りもなく興ちゃんの世話になろうとしている寄生虫のような女よ!」


「あ、あんただって自分を(おとし)めようと……」


「私の場合は事実だもん!

 私の経歴を思い出してみてよ!最初に嫁いだ袁煕は首を斬られ、次に婚約した曹丕殿下は太子の座を廃され、ようやく見初められて今度こそ幸せになれると思ったのに、その曹沖殿下までも戦死したのは、全部事実。

 今は沖様の忘れ形見である叡を守り育てるためって言い訳を免罪符にして、周りの人を次々に犠牲にし不幸に巻き込んでいく。きっと私は魔性の女なの!」


「違う!そんな風に自分のせいだと思い込むのはやめろ。あんたの付き合った男が不幸な目に遭うのは、ただの偶然だ」


「偶然?言ってくれるじゃない!?

 なら、興ちゃんが私を(めと)ってくれる?

 女はね、男に縋って生きて行くしかないの。沖様が死んだ今、私が頼れるのは興ちゃんだけ」


そうして(しん)(らく)はずいっと顔を近づける。


「好き……」


(しん)(らく)はオレの唇に自分の唇を重ねた。二年前の冗談交じりのファーストキスの時とは違い、舌を絡めた濃厚なオトナのキスだ。


「ウッ…フゥッ……じ、冗談はやめろ!」


「冗談?私は本気よ。今の私にできるのはあなたにこの身体を預けることだけ。興ちゃん、私を抱いてちょうだい」


妖艶に微笑む(しん)(らく)はオレの手を取り自室へと誘った。オレは魔性の女に魅了されたのか、抗うことができなかった。


(しん)(らく)のことが好きになれないと感想いただきましたが、

すみません、俺、(しん)(らく)みたいな女性がタイプなんです。 m(_ _)m

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