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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第六部・哀惜師友編
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129.青い霹靂

長らくお待たせしました。いろいろ悩みながらの投稿です。

第五部の乙女ゲーム編をすっ飛ばしても話が繋がるように(オレはお勧めなんだけどな・笑)、ちょっとクドい導入編の物語を書いてみました。

●建安十五年(210)一月 荊州・唐県 ◇関興


年が明けて、建安十五年(210)。

刺史の関羽のおっさんをはじめ、御曹司の平兄ちゃんに妹の蘭玉、それに甘寧・龐統・魯粛らの頼れる配下武将と新年の挨拶を交わしたオレは、畏まる従者の鄧艾にニヤニヤにしながら、


「鄧艾よ。華さんとの初体験が叶わないままついに二十歳を迎えてしまったなぁ。クックックッ。つまりおまえは魔法使いになってしまったのだ!

オレ様が【鑑定】したところ、おまえの魔法属性は土。「出でよ、アースウォール!」と叫んでみろよぉ」


「誰のせいで俺が童貞のままだと思ってるんですか?!若、あんたが面倒な仕事を押しつけなければ、俺だって……」


「いいじゃないか、一回叫ぶくらい減るもんじゃなし。さぁ早く「出でよ、アースウォール!」と呪文を唱えるんだ。ご主人様の命令だぞ」


傍若無人な魔王のごときオレのくだらない命令に呆れた鄧艾は、ハァと溜め息をついて、


「やればいいんでしょ、やれば。まったく馬鹿馬鹿しい。出でよ、アースウォール!」


すると、とたんに地響きがゴゴゴと唸り地中から背丈ほどの高さまで土壁が出現した。


「な、なんですかーこれは?!まさか俺、本当に魔法使いに……」


鄧艾がわなわなと震える。まさか鄧艾が本当に魔法が使えるようになるとは思わず、素に戻ったオレも唖然として、


「カ…カッコいいんじゃないかなぁ、鄧艾君。土魔法が使えるなんて羨ましい(棒)」


「嫌ですよっ!俺、普通の人間に戻りたいです!」


と涙目になる鄧艾。


魔法か。そう言えば、オレも前世では彼女いない歴=年齢の24歳で童貞のまま死んじゃったし、転生したこの世界での11年(お子ちゃまだから当然マス〇ベーションすら未経験)を足し合わせれば35歳となって、前世基準では立派な魔法使いなんだよな。


あっ、そうだ。オレは女神様から【雷天大壮】とかいう名前だけはカッコいい転生特典を追加で貰ったんだっけ。

た、試しにちょっと……


(とどろ)けっ、雷天大壮!」


とか厨二ワード(笑)をつぶやいてみる。しーん。


「ハハッ。やっぱり何も起こらないや」


安堵の反面ちょっぴり残念な気持ちでいると、急に雲に覆われて空が暗くなり、しんしんと白い雪が舞い降りて来た。そして稲妻がピカッと光ったかと思うと、ゴロゴロドドーンと直下に雷が落ちてしまった。


「ぎゃああぁーっ!やっぱりオレも魔法使い確定じゃん!そんなの嫌だよぉ」


しかも時は極寒の一月。雪が降り積もった土壁はたちまち凍り、強固な(とりで)のような立派な防御施設が出来上がった。

なんだっけ?どこかで見たような……。


ああ。たしか建安十六年(211)に勃発する潼関(どうかん)の戦いの際、馬超軍の猛攻に手を焼いた曹操は、渭水のほとりに騎馬隊を防ぐための(とりで)を築こうとしたんだ。だが、なかなか材料となる岩や大石が見つからない。すると終南山に住む仙人の婁子伯(ろうしはく)がふらりと現れて、


「閏八月とはいえ、わしが秘術で寒波を呼び寄せてやった。今、土壁を造って水をかければ、寒さで凍り一晩で強固な(とりで)が完成するわい」


と伝授したため、曹操はこの教えに従って(とりで)を築き、馬超軍の猛攻をしのいだという伝説が三国志演義に見えるんだったな。


それはともかく。


「若……」

「鄧艾……」


オレたち何故かモテない自称イケメン二人組の主従は、互いに見つめ合いゴクリと唾を飲み込む。


「こうなったら、若のケツで脱童貞を…いいだろ、花郎(ファラン)


何故そうなる?!普通は街に繰り出して健全に女の子をナンパしようとか、不健全が望みなら二人で娼館ののれんを潜ってアハンウフンとかだろう?


「ま、待て。早まるな、鄧艾!」


「若……俺はこないだ風呂で洗いっこした時から、若のことを…」


鄧艾はもう我慢できないとばかりに袴を下ろすと、いきり()ったチ〇コをモロ出しにして鼻息荒くオレに襲いかかって来た。


「ぎゃああぁーっ!どこ触ってるんだ?!やめろォォ!オレは筆下ろしより先にア〇ル喪失なんて嫌なんだー!」



――はっ!なんだ、夢か。


やれやれ、なんちゅう初夢だ。縁起でもない。


そもそも鄧艾は許都に残ったままで、今はオレの側にいないのに。

実はオレが帝立九品中正学園に通っている間、鄧艾は兵法の学問所に通わせていたんだ。長年の念願だったらしいからな。


オレが曹操の勘気に触れ学園を退学させられた後も、鄧艾は荀彧の書生兼使用人として屋敷に住まわせてもらい、許都に残って兵法を学んでいる。曹操の世継ぎが曹沖に確定した今、さすがに襲われることはないと思うが、念のために劉舞の護衛も兼ねてな。


そうしてオレはひとり淋しく荊州に戻り、内政に明け暮れた。まずは都督荊州諸軍事の軍権を持つ曹仁に兵一万を提供させられ、総兵力数を制限された荊州の防衛力を強靭化するため、県城に城壁を築き、敵迎撃用の霹靂車と連弩を設置することから始めた。


この霹靂車、ただの投石車なんかではないぞ。当時まだ無名だった馬釣(ばきん)という天才発明家を許都から破格の待遇で招聘して、従来の3倍の威力を持つ投石機として改良したものなのだ。


史実では、秦朗は馬釣(ばきん)の発明を小バカにしてあざ笑ったと記されるが、オレはそんな失礼な真似はしない。ローテクがまかり通る時代に、飛距離1.5倍・積載重量2倍・起動時間2分の1の性能を持つ投石機を造るなんて、神技以外の何物でもない。


さらに馬釣(ばきん)は諸葛亮の発明した連弩を見て、


「たしかに素晴らしいが、自分ならさらに5倍の性能を持つように改良してみせる」


と豪語したらしい。馬釣(ばきん)が発明した高張力バネと足踏み式の歯車(自転車のペダルのようなもの)を使えば、威力の増強と連射が可能になるそうだ。


まずはオレが領主を務める唐県で試してみたが、遠巻きに城を包囲する敵陣は霹靂車で崩し、城下に押し寄せた敵兵は連弩で狙い射ちにする。これを城壁の四方八方に配置すれば、まさに難攻不落の城が完成するのだ。


この仕掛けを見た関羽のおっさんや甘寧は驚嘆し「ぜひ我が城にも設置したい」と述べ、今後二年かけて霹靂車と連弩を増産し、江夏と江陵の防衛力を強化する計画を立てた。


そのための資金調達先として、我が荊州軍の誇る真っ黒軍師の龐統は、益州の劉璋に狙いを定めたらしい。史実どおり張松や法正らに(そそのか)された劉璋は、北方の防衛力強化のために劉備を軍事顧問に招いてしまった。乗っ取り常習犯の劉備は、もちろん北方の防衛なんてそっちのけで、益州を奪うタイミングを虎視眈々と窺っている。


一方、何故か史実と異なり我が荊州軍に仕官した龐統は、笑顔で劉備の乗っ取りに協力すると握手しながら、裏では劉璋に劉備の危険性を煽って防衛力の増強を勧めている。同盟相手のいない劉璋に親切心を装い、兵器や兵糧・油、そして益州には特に必要とも思えない中古の軍船を高値で買わせる阿漕(あこぎ)な商売で荒稼ぎしているそうだ。ひどいな。


まあ、あいかわらず贋金作りや孫権の貨幣改鋳益の一部を盗み取って大儲けしているオレも褒められた行為ではないが(苦笑)。


こうして、戦乱もなく平和で富裕な荊州には、河賊が跋扈する豫州や戦乱が起こりそうなきな臭い益州から逃れて来る流民が激増し、人口は往年の二百万人に届きそうな勢いだ。正直、徴兵を行なえば兵十万は固い。が、都督の曹仁に総兵力数を抑えられているせいで(兵数を増やしても軍権を持つ都督の曹仁に取り上げられてしまう)、関羽のおっさんが治める江夏や甘寧・魯粛が治める江陵では、河川の運送を担う水夫を育成すると称して、秘かに水軍兵を増強しているようだ。


うーむ。やはり関羽のおっさんは、虎視眈々と天下を狙っているのだろうか?


あまり欲をかき過ぎると、孫権に不覚をとった麦城の悲劇を迎えてしまうかもしれないので、オレは自重して欲しいんだけどなぁ。


>やはり関羽のおっさんは、虎視眈々と天下を狙っているのだろうか?


関羽のおっさん「俺も平も、興が曹操に負けぬ英傑として天下に君臨することを、心待ちにしている。おまえが成長するまで雌伏して時間を稼ぎ、荊州を足掛かりに戦力を養っておこう」(第54話)

だってさ。


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