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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第五部・学園離騒編
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127.追放

本日3話目!頑張った!

●建安十四年(209)十二月 学園にて ◇関興=秦朗


一方。

(しん)(らく)への公開プロポーズ(?)中に、曹沖にまさかの“待った”をかけられ、告白相手を(さら)われて独り取り残されてしまったオレは。


「え、えーと……」


どうしよう?曹沖に「後はよろしく」なんて軽く言われたが、いったいこの場をどう収めればいいんだろう!?

するとピンク頭の董桃が大げさに噴き出して、


「ぷっ、あはは!あーおかしい。せっかく(しん)(らく)に救いの手を差し伸べたのに、あっさり袖にされ逃げられるなんてね。さすがパッとしないモブ。

 ねぇ、次はどんなスベリ芸であたしを笑わせてくれるの?」


とオレを嘲笑する。その時。


「おい、そこの女。主君が道を外れた行ないをした時に、臣下がなす諫言のどこがおかしいのだ?」


「えっ?」


声のした方を振り返ると、クラスメートの荀粲(じゅんさん)に連れられた荀彧と曹操の姿があった。どうやらメガネ優等生の荀粲(じゅんさん)が騒ぎを聞きつけて、すぐさま父親の荀彧に連絡し、そこから曹操に話が伝わったようだ。


曹操は怒りを抑えた声音で、


「丕よ、これは何の騒ぎだ?」


「ち、父上!実は生徒会副会長の(しん)(らく)が、ここにおります董桃にいじめを繰り返しており、それを咎めて婚約の破棄を申し渡しましたところ、沖めが……」


曹操に無断で処分を下し、自分に都合の良いように事実をねじ曲げ事後承諾を得るつもりだった曹丕は、まさかの曹操本人の登場に青ざめ、言い訳がましく答える。


「ふん。おまえはわしの決めた相手が気に入らぬと申すのか?」


「い、いえ。決してそういうわけでは…」


「ならば、そこの女を側妃に据えればよいだけのこと。愛妾を作ってはならぬという法はないのだから、公衆の面前でかように大騒ぎするまでもない」


「し、しかし!」


「おまえは認識がずれておるようだな。(しん)(らく)をおまえの正妃と定めた理由は、秦朗が縷々述べたとおり。おまえは危うくわしの覇業を台無しにするところだったのだぞ!

 丕よ、赤壁の敗戦はある意味わしの失敗をおまえ一人に押し付けた面もあり、自ら進んで泥をかぶってくれたおまえにわしは感謝した。それゆえおまえに再起のチャンスを与え、反省して立ち直ってくれればと期待しておったのだが、完全にあてが外れてしまったようだな。

 今回の騒ぎは完全におまえの浅慮が招いた失態。自分のケツは自分で拭く以外にない」


「ですが、悪いのは俺を(ないがし)ろにした(しん)(らく)であって…」


「黙れ!事の重大性がまだ分からぬようでは、おまえは上に立つ者としてふさわしくない。丕よ、おまえを無期限の謹慎処分とする!」


「……」


がっくりとうなだれる曹丕。


「麗、後で沖にわしの元へ来るように伝えよ。大事な話があるのでな」


「畏まりました。でもお父様、沖には(しん)(らく)副会長としばらく甘い時間に浸るくらいの猶予はお与え下さいましね!」


それは曹操の後継者が曹沖だと決まった瞬間でもあった。


「そして、女!我が息子を(たぶら)かし、道を誤らせた罪は重い。処分は追って沙汰を下す。牢に引っ立てい!」


近衛兵に捕らえられた自称ヒロインことピンク頭の董桃は、牢に投獄されるまで、


「ちょっとぉ、放してよ!こんなバッドエンドなんて聞いてない!あたしはこの世界のヒロインなのよっ!近い将来皇后になって、金と権力を手に入れて贅沢三昧な暮らしを楽しむはずなの!それにあたしは皇帝陛下の実の娘なんだから……」


などと意味不明なことを口走っていたらしい。おい、それ以上口が滑ると不敬罪で首を刎ねられるぞ。


 -◇-


「さて、秦朗。久しいのう」


曹操が(ひざまず)くオレに声をかける。


「曹丞相におかれましては、お元気そうでなによりでございます」


「フン。危うく道を踏み外すところであった丕を、おまえが真っ先に諫めてくれたことには感謝する。だがのう、おまえはもう少し上手くやるべきだったな」


「と言いますと?」


やれやれとばかりに荀彧が口を挟み、


「君は肝心な所で抜けているね。そこが君の憎めないところなんだけど。

 あのまま君と副会長の(しん)(らく)が本当に婚姻すれば、雁門関の(しん)(いつ)将軍と荊州の関羽殿が手を結び、天子様のおわす許都を南北から挟撃できる。それが曹丞相にとって脅威となり得ることには考えが及ばなかったのかい?」


「……あ。」


荀彧の言うとおりだ。オレは曹丕と董桃に売られた喧嘩を買うことに夢中になって、軽率に(しん)(らく)へ行なったプロポーズが、曹操への謀叛を疑われても仕方のない状況に陥ってしまうことを失念していた。


「秦朗。喧嘩両成敗という言葉がある。

 おまえの才気走った諫言には頷かせる物があるが、わしの大事な息子の丕を(おとし)めその将来を傷つけたことには我慢ならぬ!」


「!! じ、丞相。お待ちを!」


あまりの剣幕に、荀彧が慌てて曹操をなだめる。曹操は(うるせぇな。分かっておるわ)とばかりに顔をしかめて、


「本来なら不敬罪で爵位の返上・領地没収を命じたいところだが、おまえのこれまでの功績と荀彧の顔に免じて、秦朗は帝立九品中正学園を退学処分とし、許都からの追放で我慢してやる。二度とわしの前にその姿を現すでないっ!」


オレは平伏して、


「……畏まりました。丞相の寛大な処分に感謝いたします」


こうしてオレの短い学園生活は、追放エンドであっけなく幕を下ろしたのであった。


曹丕の取巻きだった夏侯楙(かこうぼう)や何晏らも謹慎の上、廃嫡されました。

次話で第五章・学園離騒編はラストを迎えます。


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