(1) 黑淵(くろぶち)
【お題】憂鬱、晴れ、十字架
子供は、生まれる両親を選べない。
ただそれは相手方も、二人がそれぞれ生まれた時も同様だった筈だ。……そう考えが更に
過去へと延びた頃、僕はいつしか責める加害側を失った。
誰もが大なり小なり理不尽を背負って生まれ、生きてこざるを得ないというのなら、そも
そも何故こんな繰り返しを強いる? 理性のある振りをしていても、理屈が頭に入っていて
も、所詮は一時の熱にすら勝てない猿に過ぎないのか。
『──おい、救急車呼べ! 救急車!』
『畜生! ドアがへしゃげてやがる……! ビクともしねえ!』
あの日、僕の日常は突然壊れた。猛スピードでぶつかってきた衝撃と共に、何もかもが暗
転し、気付いた時には何もかもが失われていた。遠い、過去の出来事になってしまっていた
ような記憶がある。
幼心に、嗚呼自分は死ぬんだと思った。
運転席の父さんと、助手席の母さん。二人の背中がぐったりとしたまま、グチャグチャに
凹んだ天井に挟まれてピクリとも動かない。色んな破片が刺さっている。生温かい液体が垂
れてきているらしく、視界もぼんやりと歪んでいる。
遠くから声がしていた。何人かの男の人達、女の人も交じっていたかもしれない。視線を
向ける余裕すら、僕にはもう無くなっていたのに……妙にあの時の必死なおじさん達の声色
が、今でも記憶の端っこに遺ったままで消えないんだ。
『ちょっと退いてろ』
『!? おい、そんな強引──』
『目の前で親子連れが死に掛けてんだぞ!? みすみす放っておけるか!』
直後のことだったと思う。外でまた血の気の多いやり取りがあった後、おじさんの一人が
赤い棒──バールか何かで僕達の車の窓ガラスを叩き割り、父さんお母さん、そして僕を皆
と一緒に引っ張り出した。
どうっと地面に、アスファルトの冷たくゴツゴツした感触に擦り付けられる。朝方の靄が
まだ寝惚け眼で、辺りはひんやりとしている。ぶつかって来られたまま、引っ張り出された
まま、僕は地べたに転がっていた。霞む視界のすぐ傍で、おじさん達が父さんと母さんを囲
んで息を呑んでいる。
『……ど、どうだ?』
『分からん。だが、脈が無い。気がする。目をかっ開いたままだし、多分──』
『! お、おい! こっちの坊主はまだ息があるぞ! まだ生きてる! おい、大丈夫か?
俺達の言葉が分かるか!?』
なのに……どうしてなんだ? どうして僕だけを、あの場所から掬い上げてしまったんだ
ろう? 諦めてくれなかったんだろう?
やっぱり動き出す様子のない父さんと、母さんの仰向け。うつ伏せ。暫く二人の手首を触
っていたおじさん達の内の一人が、僕の存在に気付いて、捲し立てるように叫んでいた。他
のおじさん達もバッと弾かれたようにこっちに振り向いて、近付いて来て、また囲む。まだ
掠れるように息の漏れていた僕に、何度も何度も呼び掛けている。背中に腕を回して、起こ
そうとしてくる人もいる。
『お、おい。あんまり揺すったら……』
『こういう時って、どうすればいいんだっけ? 安静にさせた方がいいのか?』
『いや、それよりも先ず、救急車が来るのを待った方がさあ──?』
『……』
知らない人。多分偶然近くに居たおじさんやら、おばさん達。
でも知っている人は、父さんと母さんは動かない。霞んで歪んで、暗い色彩のフィルター
が掛かったようなセカイの端で、二人はすっかり“二の次”にされていた。半ば放り出され
るように、僕の方へと集まっていた。
どうしてなんだ? どうして僕だけが、あの場所から助け出されてしまったんだ?
生き残るべきではなかったんじゃないか? 本当はあの時、僕もまとめて──。
***
「──ちゃん! お兄ちゃん、起きてよ!」
「んぅ……?」
どうやら、また嫌な夢を見ていたらしい。そう気付きをくれたのは、寝覚め一番にそう僕
を手荒く揺さぶってくる、義妹の静久だった。
まだ朝も早い内、カーテンの隙間から差し込む朝日が煩わしい。それでも尚、あくまで布
団に潜ったままの僕を、静久はむすっとした表情で見下ろしていた。頭の下にあった枕をこ
れまた手荒くすっぽ抜いて、腹の上に放り投げてから言う。
「痛い……」
「何度も起こしたのに起きないからでしょうが」
「休みの日ぐらい、ゆっくり寝かせてくれよ……。まだ早いだろ……」
「休みの日だからこそ、です~。お正月に行かなきゃ初詣にならないでしょ? お父さんも
お母さんも、もう支度し始めてるよ? お兄ちゃんもさっさと起きて、ご飯食べて支度済ま
せて」
嗚呼。言われてようやく僕は思い出していた。そう言えば年末に、皆で初詣に行こうとか
そういう話が出ていたっけ……。折角の正月休みなんだし、もっとこうゴロゴロと。
忘れていたとはいえ、そうアバウトに目論んでいた僕の寝正月は、かくして妹の襲来によ
って台無しになった。「起こしたからね? すぐ降りて来てよ?」念を押しながらビシッと
指差してきた後、静久はそのまま僕の部屋を後にしていった。ぱたぱたと階段を降りる音が
遠退いてゆく。下であいつと話し始めたのは……養母さんか。結局妙に目が醒めてしまって、
渋々僕は着替えを済ませた。何時もの、黒縁眼鏡も忘れずに。
そう言えば静久の奴、さっきも気持ちめかし込んだ格好だったような? まぁいいか。
「おはよう。随分とのんびりだったね。朝ご飯、もうお前だけだぞ?」
「本当なら今日も、おせちを囲んでといきたかったけど……。一旦出掛けるなら、あまりお
腹いっぱいにするのも何でしょう?」
「うん……」
既に余所行きの格好に着替え終えた養父さんと養母さんが、静久と一緒に、台所に降りて
きた僕を迎えて声を掛けてきた。ぼんやり、ぽわぽわ。とりあえず顔を洗って、さっさと軽
めの朝食──トーストと作ってあった目玉焼き、コーヒーを胃の中に流し込んで支度を急ぐ。
養母さんはあまり急かずとも良いといった風に苦笑っていたが、実際忘れていたのは僕の
方だ。あと、行くなら行くでさっさと済ませてしまいたい。
「──よし。皆、戸締りも全部オッケーだな? 行くぞ」
あの日、僕を置いて逝ってしまった実の両親は、後で聞いた所によると周囲の反対を押し
切って結婚した間柄らしい。ちょうど僕という一人息子が生まれたか、生まれると判ってか
らの出来事でもあるようなので、少なくとも一因であることに間違いはないのだろう。
突如、独りぼっちになってしまった幼い日の僕を、両家の実家や親戚筋は誰も引き取りた
がろうとはしなかった。ただでさえ生前、二人は実家とは対立したまま──いわゆる駆け落
ちのような格好で出て行ったため、わざわざ“引き取ってやる”義理なんて無いと言われれ
ばまあその通りか。僕自身、それまで顔も知らなかった祖父母に孫と呼ばれるのは違和感が
あったし、向こうも警戒心バチバチな自分を見て似たようなことを思ったのかもしれない。
坊主憎けりゃ何とやら。結婚・出産の段階で血縁を“敵”に回していた時点で、僕達一家は
“詰み”だったのだ。
『──だったら私が引き取ります! 七歳かそこらの子供を、大人の面子に巻き込むな!』
結論から言えば、そんな折に手を差し伸べたのが養父さんだった。
彼は生前、父と親しくしていたらしく、僕が例の事故でただ一人生き残ったこと、その後
の引き取り手を巡って親族同士が牽制し合っていたことを聞き付けると、まるで我が事のよ
うに義憤って僕を“息子”として迎え入れた。つまり彼、養母さんと二人の実娘である静久
と僕の間には、血の繋がりは全く無い。にも拘らず、今日まで三人は、僕のことを本当の家
族のように扱ってくれた。育ててくれた。
まあ、義妹に関しては……あんまりその辺の記憶はなさそうではあるけれど。向こうは当
時、まだ二つ三つぐらいの歳だった筈だし……。
「着いたぞ。周りの車に気を付けて降りろよ?」
普段初詣へ行く、最寄りの神社への道中、僕は終始無言で車の後部座席に座っていた。
運転は養父さん、助手席は養母さん。僕の隣には静久。かれこれもう十年。車に乗る、走
らせることぐらい出来なければ、日常生活にだって支障は出ようが……つい思い出しそうに
なってしまう。道すがら、ハンドルを握りながら話す養父さんも気持ち、僕のそうした事情
を汲んで積極的に話題を──気を紛らわそうとしていた風にもみえる。結局肝心の僕の方が
ずっと黙っていたので、絵面は只々家族のドライブ風景になっていただけだが。
そうこうしている内に、通りを抜けて小高い丘の駐車スペースに陣取ると、養父さんは僕
達に振り向いて言った。既に同じく初詣目的で集まってきた、他の家族連れや友人グループ
などの車両の間を縫い、僕らは参拝の人波へと進んでゆく。
「お~。今年も結構多いねえ」
「そうねえ……。神社やお寺は他にもあるけれど、やっぱり此処は交通の便が良いから」
新年早々、まだ外気はしっかりと冷たいぐらいに。
時折静久や養母さん、他の参拝客らの息が宙に浮かんでは消えるのを視界に映しながら、
僕達はゆっくりめのペースで順路を進んでいった。正面の赤門を潜るとやや坂道になって延
びる左右に、食べ物系を中心とした露店が軒を連ねる。これから参る人や、先に参って来た
人達がすれ違ってうねうねと動線を作り、時々そこにリードで繋がれた犬がいたりいなかっ
たり。
「うん。早めに出発して正解だったな。帰りはもっと混んでくるぞ。母さん、静久、慎弥。
くれぐれもはぐれないようにな?」
「は~い」「ええ」
「……ん。分かってる」
中学二年の義妹は、まだ養母さんと手を繋いでも恥ずかしがる感じではないお年頃。とい
うか同性の母子って、最近だと結構仲良しだとか聞く。まあ、それだってケースバイケース
だろうが……。僕は二人と養父さん、僕らを先導するように歩く背中をぼんやりと眺めなが
ら、一歩退いた位置をキープして歩いていた。何時もそうだ。何時だってそうだった。私服、
スカジャン、時々着物。参拝に訪れている人達が皆、思い思いの装いで集まっている。人
波、人ごみを作って本堂へと連なっている。
「……」
よほど信心深い、或いは暇な人間でもない限り、基本“初”詣はその年の最初で最後のお
参りとなる。そんな単純な、至極ミーハーな動機で参った所で、神様が僕ら一人一人の願い
事なんて聞いてくれやしないんじゃないか──? 人ごみの中、もっと子供だった頃から僕
は、この手の恒例行事を冷めた目で見ていることが多かった。所詮はそういう存在を騙り、
ぼろ儲けしている仕組みが許されているからなんだろう? 周りの大人達だって、本当はそ
の辺など分かった上で乗っているのだとばかり思ってきた。
だって、神様が本当にいるんだとすれば──僕にとっては“仇”だからだ。
周りに反対されていても、結婚に踏み切った末に死ぬのが両親への天罰だったのか? 僕
が一人生き残るのも、シナリオの内だったのか? ご利益も糞もあるか。
勿論、誰も彼もが僕の過去を、事情を知っている訳でもないことは分かっている心算では
いる。ただこうも周りがヘラヘラと、新年という空気に絆されているのを見ていると、沸々
と黒い感情が湧いてくる自分を否定出来ない。なまじそれらが“許されない”ことだとも解
っているからこそ、その行き場だってずっとずっと失うんだ。じっと独りで呑み込み、時間
を掛けて消化して、あくまで“普通”の一人として振る舞わなくちゃならない。
(どうして……)
父さん、母さん。どうして貴方達は、僕を産んだんですか? 仮に僕が生まれたことで、
実家との関係が二進も三進もいかなくなったのならば……一番罪深いのは僕だ。あの時、誰
よりも先に死ななければならなかった。少なくとも貴方達が生きていれば、もっと別の未来
を描き得たかもしれないのに。やり直せたかもしれないのに。
生き残るべきは、僕じゃなかった筈なのに。
「はい、静久。お賽銭」
「大丈夫~、自分で出せる~」
「はは。母さんは過保護だなあ。ほら、慎弥。こっちに」
「……」
ぼうっとしていた。人ごみの稜線から足元へ。周りの動きに合わせながら、ゆっくりと石
段を登っていた。
養母さんが静久に、自分の財布から小銭を渡そうとしている。だが当の本人はツンと意地
を張り、自前で取り出して本堂前の賽銭箱へと投げ込んでいた。養父さんが苦笑って手招き
してくる。横並び。……後ろも押している。言われるがままに隣へ。それぞれに賽銭を投げ
て、四人で一緒に暫し祈る。何を考えているかなんて分からないけれど、多分僕のようなモ
ヤモヤとしたそれではない筈だ。
(……もしかしなくても、養父さん達も解ってたからなのかな)
あと一年。もう丸一年経てば、僕は十八になる。高校を卒業すれば、すぐにでも就職して
この家を出ることが出来るだろう。流石に進学は……これ以上負担を掛けさせたくない。僕
の精神がもたない。引き取ってくれてから十年。養父さんと養母さん、静久には良くして貰
ったけれど、申し訳ないという気持ちの方がずっと強かった。遠慮してきた。そういう思惑
が、何時しか透けて見えてしまっていたのなら恥ずかしい──静久の受験も考えれば、こう
して四人で落ち着いて参拝出来るのは、今年で最後になる可能性が高い。だから養父さん達
も、少々ゴリ押しする形であっても僕を連れ出そうとしたのか。
(ごめん……)
だけど、僕は。
「さて、っと……。じゃあ、後はおみくじでも引いて帰ろうか。二人は、帰り何か食べたい
ものでもあるかい?」
異変が起きたのは、ちょうどそんな時だった。
最初はまだ遠く、ずっと人ごみの向こう側。暫く黙祷を終えて養父さんが目を開き、僕達
にそう訊ねながら、本堂の帰りルートへと踵を返し始めていたその最中の出来事だった。
『──?』
何か、向こうがざわついている。周りの人達も石段を上がりながら、或いは降りながら、
ちらほらと視線を向けている。
ようやく理解が追い付いてきたのは、そこから十数秒ほどしてからだった。
にわかに方々へと散ってゆく人ごみの向こう。その中に、分厚い折り畳みナイフを握った
男が、よく分からない言葉を吐き捨てながらずんずんと歩いて様子があった。逃げ惑ってい
る。すぐ近くの他人びとの行動理由に想像が及ぶ。実際何人か、既に男に斬り付けられた参
拝客がいたようだった。身なりの良い壮年の女性や若い親子連れ、カップルといった面々が
青褪めた表情で震え、その場に膝をついている。脇腹や首、腕──それぞれに遠巻きではあ
るものの、衣服の一部に赤い染みが広がっていた。つうっと垂れながら、滴っていた。
「へへへっ! ど、どいつも、どいつもこいつも……!」
「にっ──」
『逃げろォォォーッ!!』
境内は、瞬く間にパニックに陥っていた。それまで比較的秩序だって形作られていた人の
導線が、誰かの悲鳴を皮切りにぐちゃっと崩れる。あっちへこっちへ、皆がめいめいに逃げ
出してゆくものだから、周囲では追突事故が立て続けに起こった。それでも慌てて起き上が
り、悪態を吐き、一分一秒でも早くこの場から離れようとする。
本堂周りとその上下動線。ちょうど男の現れた筋へと降りて交差するラインに居合わせた
僕達は、そんなリアルタイムの犯行を期せずして目の当たりにすることとなった。
「ひっ!?」
「よりにもよって……。お前達、急いで離れ──」
「……」
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!? 何処行くの?!」
養父さんも養母さんも、それに静久も、同じように冷や汗を掻いて逃げ出そうとしていた
筈だ。なのに僕は──この時ふいっと一歩“前”へ進み出ていた。後ろから義妹の声がした
のは何となく聞こえていたが、それよりも僕の意識は思考は、瞬間ある一点の可能性の側へ
と雪崩れ込んでいたように思う。
殺るのか? お前は殺ろうとしているのか?
だったらそこへ。ついでに僕のことも死なせてくれ──。
『往くな!』
なのに何故だろう? 次の瞬間、後ろからガツンと、よたよたと進んで行こうとする僕を
止める声があった。強く凛としていて、明確に聞こえた意思。僕は思わず弾かれたように振
り返ると、そこに本来あり得ない筈のものを見ていた。幻だと知っていた筈なのに、歩みを
止めてしまった。チャンスを、失ってしまった。
(父、さん……? 母、さん……?)
まだ混乱している人ごみの中、養父さんや養母さん、静久達じゃない。
その更に後ろ、まるで後光を纏っているように眩しい反射加減の中に、実の両親が並んで
立っている姿があった。とうの昔、あの日、正面から突っ込まれて殆ど即死に近い状態だっ
た筈の二人が僕の方を──。
「慎弥!」
嗚呼。だから失敗した。次の瞬間ガバッと、養父さんが僕を羽交い絞めにして後退させて
いたのだった。ハッと我に返った時にはもう、あの不自然に眩しい光は無くなっていて、勿
論死んだ筈の両親の姿も無くて。只々暫く、僕らは他人びとが逃げ惑う現場の中に放り込ま
れている状態だった。
荒くなっていた呼吸をゆっくりと、徐々に整える。養母さんも静久も、恐る恐る、未だ恐
怖した表情でこちらに歩み寄っていた。人ごみの向こうで暴れていた男、巻き込まれてしま
った何人かの人達などの様子を見遣っている。
「刃物を捨てなさい!」
「離れて! すぐに此処から離れて!」
誰かが通報していたのだろう。数分もせずに、神社敷地内に詰めていた警察官が数人、や
がて男の下へと駆けつけるとことを包囲。取り押さえていた。凶器の折り畳みナイフはその
手から引き剥がされ、本人は警察官達に組み伏せられ、後ろ手に縛られていた。周囲は尚も
騒然とはしていたものの、これで一安心──それまで無秩序に広まっていた混乱も、同時に
彼らの誘導もあって少しずつ収拾を見せ始める。
「……はあ、はあ、はあ」
「つ、捕まったみたいね?」
「は~、良かったあ~。心臓が縮むかと思ったあ~」
「──」
後日、事件はニュースとしても放送された。その内容によると、犯人は仕事をクビになっ
た末に住んでいたアパートも追われ、進退窮まってあの騒ぎを起こしたのだそうだ。
警察の取り調べで語ったその動機は、いわゆる自暴自棄──『どうせ死ぬなら、幸せそう
な奴らが多そうな場所で道連れにしてやろうと思った』と。
(了)




