Kのこと
そんで俺たちは喫茶店から出て次の目的地へと向かっていた。
「うえええ……もう食べられない」
「ああ、美味しかった! また来ようね!」
と<リトルネロ>が言った。
また来ようねって……俺はこいつの、なんだったっけ?
パフェの底にあった紙切れには、ただ次のように書かれていた。
K
と。そう、それだけ。
Kって、やっぱり「あいつ」のこと……だよな。
いささか唐突ではあるが、俺は、人混みは苦手っちゃ苦手。
でも、すべての人を呪うほどの勇気は、ぼくにはない。
Kは違った。
Kは……どうすればそんなことができるのかわからないが、すべての人を呪い、別の次元へと行ってしまった。
俺は最初、次のように思った。
Kは幼い頃、一緒に遊んでいても、よく
「一抜けた!」
なんて言うやつだった。
そして、遊びじゃなく、現実のことでも、
「一抜けた!」
を、やってしまった。
こう言ってしまえば、単純な話だとも言える。
だからなんでもないことなのだ……最初は、そう思ったものだった。
ところがそれは言葉のトリックにすぎない。
自分を安心させるための。
だけど、「自分を安心させる必要がある」ということそれ自体が、やっぱり、なんだかおかしいことだ、ということを、物語っているじゃねーか。
K、君はやってしまった。君はやってしまったんだなあ。