ヒロイン、新たな従者と護衛を持つ
ゼルエルとマリーダは離縁になった。
僕の出生を暴露しながらもマリーダは抵抗していた。どうやらリリスの父親であるルークって人に学生の頃から好きだったらしく、元々は実家は子爵家で身分の恋〜などと妄想的なのが膨らんでいた。
『あの女が!私とルークさまを引き離すから!!』
あの時マリーダの表情は般若の如くだった。
だが、二人がそういう仲と言うのは聞いたことがなくリリスの母親であるアイリスと相思相愛らしく側から見てもラブラブだったらしい。
やはりマリーダの拗れた妄想だとして片付けられる。
マリーダは離縁と共に国の裁きをキッチリ受けるために、王宮が管理をしている難攻不落な監獄棟に収監される事に。
ブーダも伯爵家の血筋を引いていない為、身柄をどうしようかと悩んでいたが緩んだ思考と思いあがりを引き締める様に淑女の令嬢達が泣いて怖がると言う噂の、ベルエッダ修道院に身を預ける事となった。
そして、僕はと言うと・・・
「リリス、ちょっといいかな」
「はい。何でしょうお父さま?」
未だに体調不良とかが起こり、リリスは養生をベッドの上で簡単な運動や本を読んでいたりしていた。
近くにあった小さな椅子をリリスのベッドの方に持って行き、隣に置いてゆっくりと座り目線をリリスに合わせる。
「リリス。司法省でも話した通り君は私の子ではない、我が友人であるアリシア王女とルーク王太子の子でもある・・・ただ、この二人はとある理由で君を私に託した。託されたのに、領地ではあの様な事となっていたなんて・・・本当に、申し訳ないっ」
ガバッと頭を下げる。
僕としてはもう少し早く【リリス】を助けて欲しかった。そうすればこの子が傷つく事もなく過ごせたのではないかと思いながら、心の奥底の【リリス】はそんなに怒っていない様で。
震える手をそっと包み込み、リリスはゼルエルへありがとうと告げる。あのままだったから自分もまた、死んでいただろう。
あれからゼルエルの行動が怖い。
ベッドで本を読んでいたリリスの元にゼルエルの執事であるガイと護衛の一人、ジョエルが沢山の箱を運んできたかと思うと。
「リリス!ぬいぐるみや可愛らしいドレスに綺麗な小物とか揃えてみたよっ気に入ったのがあるかなぁ?」
「・・・・・え」
親バカ爆発。
ガイとジェイクも呆れながらも何処かゼルエルと同じ様な。ブーダがああだったからかな、僕は少し困惑しながらゼルエルからの贈り物を受け取る。
「ん?リリス、この指輪は・・・」
胸元ら辺にキラリと鈍く光る指輪。これは確かアーサーが宝物だから大事に持っといてと言われたのだったよね。
リリスはこれをゼルエルに説明すると、へらへらの笑顔がスッと冷たい表情に変わり僕もビクッとしてしまう。
「そう。そう言ったか・・・あの小僧は」
「お、お父さま何故怖い顔をされてるのです」
この指輪はもうゼルエルに話をしない方が良いなと思い、この屋敷にいる人のことをもっと知りたいと言うとゼルエルは先ず隣にいる老執事から紹介。
ガイ。
ゼルエルが幼少の頃より仕えていた執事。先代とは何やら固い結びがある様で、笑みを絶やさないのだが何処か怖い気がする。
ジョエル。
ゼルエルの護衛。本人とは学友兼親友でもありジョエルの家系は平民だが、身分は関係なく気さくにしているらしい。
「はじめまして・・・リリスと申します」
ペコリと挨拶をする。
他にも王都にいるメイド長さんや今後、リリスの世話をしてくれるメイドさん達と挨拶を交わす。
「ゼルエルさま、そろそろあの件をリリスさまに伝えた方が良いかと思います」
「うむ。リリス、よく聞いてくれ」
司法省でのやり取りでの話を。リリスは高貴なる血筋の御子なのでこれからは色んな人物に狙われる事になる。
良い人も悪い人からも。
なので、リリスには新しく護衛と従者をと。
ガイとジェイクの後ろから現れたのは、将来有望そうな青年二人と大人しそうな女性一人。
「はじめましてお嬢さま。貴女の執事となるカイムと申します、至らない点等が御座いますが宜しくお願い致します」
にこりと微笑みながらリリスの手を取り挨拶を交わす青年。
「護衛を命じられましたリゼグです!」
ビシッと背筋を伸ばし緊張した面影で挨拶をしてくれた少年。
「こんにちわ、お嬢さまの身の回りの世話をするビビです」
年は40〜50代前後の体格の良さそうな女性。
うう・・お父さま。
僕は出来れば一人の方が気が楽になるしましてや、【リリス】では無いのでボロが出そうです。
とほほと思いながら三人にニコリと微笑みながら挨拶は終了する。