表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/8

ヒロイン、お時間です

 


 あぁ・・・熱い。怠い気持ち悪い体が痛い。



 何処を説明すればいいのか分からない、けれど僕の記憶が戻る前の【リリス】が悲鳴をあげている。



(今日は何時になく・・・痛いっ)




 無理をして体をベッドから降りようとすると、ズルリと床にストンと伏せてしまう。かなり限界がきているみたいだ。

 と、屋根裏部屋の扉が開いて現れたのはブーダとマーシャの二人だった。


「あら、もうへばったの?ワタクシとってもつまらないわ・・・ふんっ、マーシャ!此奴を地下牢に放り投げといて」


「で、ですがっ」


「なに?ワタクシ言う事が聞けないっての、あんたも同じ様な目に合わせるわよ」


 ジロリとブーダはマーシャを睨みつけ渋々肩に手をやり屋根裏部屋から二人は出る。その様子にブーダはニヤニヤと気持ちが悪い笑みを浮かべていた。

 地下牢に着くとそこには虚ろな表情をしたマリーダが待っており両手首に両脚に錆びた鎖を付けてリリスを牢の中へ放り込む。


「あんたに協力していたのはキチンと始末するから・・・暫くはあんたは牢に居な」


 熱も出ているんだ。ぼぅとする中でリリスは協力してくれたタローとシャル、そして偶に愚痴を言いながらも助けてくれたマーシャの事を思い出す。

 瞳が閉じる中でリリスは思った。もう一度ゼルエルさまに会ってお会いしたかったと。









 ふわふわする・・・あったかくて、とってもいい香りがした。この匂い・・知ってる気がする。


「んっ・・・ぁ・・」



 《・・・・・リス!・・・起きて、・・・》



 この、声は。

「お父・・・さ、ま?」



「リリス?!リリスリリスっ!あぁ精霊王さま有難うございます、綺麗なペリドットとアメジストの瞳がもうっ・・二度と見れないとなったら私は・・・私はっ!」


 ボロボロと流れ落ちリリスの頬に当たっているのは涙の雫。ぼやぁ〜としながらも何故ゼルエルが此処に居るのか不思議で堪らなかった。

 王都で仕事をしている筈だったのでは。

 ゼルエルの側に執事服を着た青年が声をかける。


「旦那さま・・・そろそろお嬢さまをお連れした方が。上の階から奴らが来ます」



 リリスはゼルエルによってお姫さま抱っこの様に抱えられ、領地にある以上の馬車には数人の使用人と護衛の人達が沢山。

 真夜中の伯爵家ではそれぞれの部屋ごとの魔法石が入ったランプの灯火が部屋を明るくし、伯爵家のみが暗い世界を明るく光らせていた。


「チッ・・・もう気付いたか。ジョエル」


「はっ!ここに、ご命令下されば直ぐにでも」


「私はリリスと共に王都へ行く。あとは・・・分かってるな、絶対に取り逃がしたり自害をさせるなっ」



「「「「「ハッ!!!!!」」」」」




「お、父さ・・ま・・・一体、何を」


「こんなに窶れてしまって、愛しいリリス・・・もう大丈夫だ。全ては悪夢なのだから・・・・・お休み」


 リリスの白銀色をした髪を優しく優しく撫でながら嬉し混じりな泣き顔でこちらを見る。僕はそのまま瞳をゆっくりと閉じる所をゼルエルが何かを指示していた。

 だけど。それを聞く気力も無いまま深い深い闇に落ちていくのを感じたリリスだった。





















 〈毎日、毎日とこの石碑に綺麗なお花を添えてくれる少女を見つめていた。



 その子は髪は白銀色をして光に当てるとキラキラと世界を輝かせる様にし、瞳は    で私のココロが揺れ動いたのだ。





 あの子が欲しい。


 笑顔も、声も、瞳も・・・全て。全て全て、手に入れたいと思いながらソッと遠くで見守るしかなかった。〉








 パチッーーーパチパチ。


 ここは、何処だろう?確か僕、マリーダ夫人によって地下牢に鎖に繋がれ入れられて・・・ズキリと頭が痛みを伴う。

 キョロキョロと寝ながら辺りを見渡すと、水差しに水を入れていたメイドさんと目が合いゆっくりと笑みを浮かべると。


「誰か!旦那さまをっ、お嬢さまが目を覚ましましたわ!!」

 ザワザワザワッ



「リリス!?」


 ぎゅっといきなりゼルエルに抱き着かれ理解が追いつかないリリス。どうやら僕は地下牢から脱出後、ゼルエル達と共に王都へ向かったが懇々と5日ほど眠っていたらしい。

 傷が癒える間、僕はベッドの上で養生しながらゼルエルから今後の事を聞かされた。



 もう僕は領地では無く、ゼルエルと共に王都で一緒に住む事になる。領地にある伯爵家に居る使用人たち全員を解雇する事。


 リリスを監禁していたマリーダはどうやらお縄になって現在は牢の中にいて、ブーダは捕まえる時に大暴れをして鎖をグルグル巻きにして鎮静剤や催眠魔法を掛けている。


「あ、あのっ・・・タローとシャルやマーシャは」


「彼らの事か?三人とも無事だし、今は領地の屋敷でしっかり働いてるからね。それに、私の弟が代わりに領地の方を手伝ってくれているし」


 ゼルエルに弟なんて居たっけ?リリスは首を少し傾げながらあの三人が生きていたことにホッとする。

 二週間くらいしたら僕はゼルエルと一緒に司法省へ行かなくてはならないらしい。マリーダが行ってきた数々の罪による証言者の一人として出廷させるとか。

 シーツをぎゅっと掴み僕は視線をうつむかせた。やられた恐怖は中々、元に戻るものではない。


 その事に気付いたゼルエルはリリスの手を握りしめ優しく諭す。お願いだから。

 だから僕は・・・・・








「静粛に!静粛にせよ!!」

 カンカンカンッ



 二週間経った僕は今、ゼルエルと共に司法省のとある一室に居た。僕だけではない。

 他の貴族や司法士官らがズラリと顔を揃えており真ん中には鎖で繋がれたマリーダの姿。

 その姿は以前の様な、ハリのある肌や艶やかな髪は薄れ前に自分と同じボサボサと整えない髪型に肌は荒れてかさかさしていた。

 その隣には娘のブーダも居た。



「えー・・それではゼルエル伯爵からの告発による審議を行う。罪状はマリーダ夫人による“使途不明金使用の罪”及び“不義罪”である」



 ゼルエル側からはマリーダが関与したと言われる証拠を次々と提示し、司法士官たちを納得させるものだった。

 マリーダの方はそんな訳が無い!と喚き散らかすがその証拠を裏返すものは何一つ無かった。ブーダは泣き喚く母を見てゴクリと唾を飲み込み、この状況に置いていかれてるのか理解できていない。



 お金は領民たちが納めた税金。


 これを自身の欲望に使っている事にゼルエルは怒ったらしい。最先端の流行モノや美容に使ったり宝石なんかに消えていくのが堪らなく嫌だったらしいのだ。

 税金はキチンと必要な分は道路とかの整備や水田に農作物等の設備、教会や医療従事者への寄付金にもしもの災害の時に起きた時の備蓄や積立金をするものだと。



 ゼルエルの娘とされるブーダ。


 彼女はゼルエルともマリーダとも似ていない。

 かと言って二人の家系を見てもそれらしき容姿は居なかった。ゼルエルも結婚当初は義務として一回だけ閨をしたのみ。それ以降は共にしておらず、月数を数えても合わなかったのだ。


「な、なにをおっしゃるのですか!ブーダは正しく旦那さまのお子なのですよ!わ、私が他の男と不義をする筈が御座いませんっ」


「シラを切るかマリーダよ。元使用人からの証言をお聞き下さい」


 ゼルエルが魔法を使い小さな球体の水晶を光らせると、領地の屋敷にいたメイド長が真っ青な顔をして喋り始める。

 ゼルエルと閨を共にした翌日。とある子爵の男性と頻繁に会っていて、二人と数人の使用人しか知らない秘密の小屋で耽っていたらしい。その子爵の容姿はブーダを似せた様な姿をしており、その家系も大体はその様な容姿の者が多いとされていたらしい。


 子爵の男性と言われた人物は部屋に通される様に現れ、その容姿に皆が息を飲み込んだのだ。

 子爵の容姿とブーダの容姿が似ており、性別や背丈、髪や瞳の色くらいを抜かせばほぼ一緒。それを見たブーダはショックを受け、母親に詰め寄った。


「お母さまっ!ワタクシはこんな子爵の子では無く、お父さまの子ですよね?だってだってワタクシはっ!!」


「残念だよ。君は元々私の子では無いが、リリスと一緒に切磋琢磨してくれればと思っていたが・・・」


 冷たい視線をブーダに向ける。

 ブーダはガタガタと体を震わせながら泣き出す。

 信じていたものが全てなかった事になるのだから。伯爵の血筋を持つものでは無く、子爵の況してや不義の子として生まれてしまったのでブーダのプライドと存在価値が無くなるのだった。




 アハ・・・・・ッ


 アハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!

 ア゛ハハッア゛ハハッア゛ハハッ




 ブーダは壊れたラジオの様に泣きながら笑い声しかあげない。彼女の心は壊れてしまい無気力なものとなる。


「え〜何々?“王族を暴力と監禁した罪”となっているがどう言う事なのか説明してくれ、伯爵よ」


「分かりました。リリス、此方においで」


 ゼルエルに促され僕は証言台の方へと足を向けると方々からため息やら何かを話している声が聞こえる。

 緊張をしていたがゼルエルがリリスを抱き寄せる様に包み込み、司法士官が言った罪状の意味を述べる。



「この子はある理由で我が家の娘となっているが、血筋は今は亡き【アドリアナ国】で春の女神と謳われたアイリス王女と【シャイン帝国】で太陽の騎士と言われた王太子ルークの御子であるリリス・フェルトゥ・ラ・シャインさまになります!!」



 ザワリと部屋の中が騒がしくなった。

 マリーダも苦味を潰した様な表情になりリリスを睨みつける。


『あのね、主人公のリリスは今は滅亡したアドリアナ国の王女さまと今は鎖国状態なシャイン帝国の王太子との子供になるの。血筋から見ればどの国よりも尊きもので、しかも!アドリアナ国の血を引いてるって所がポイントかな?』

 得意げな妹の声が聞こえてきた気がする。


 周りの貴族はリリスの事を希少なのという事で好奇の視線がザクザク刺さる。司法士官もいきなりの事でわたわたしていてその証拠は?とゼルエルに言うと、ゼルエルは司法士官の方へと歩き出し一枚の紙を見せ顔色を一転させた。



「さぁマリーダよ。全てのしょうこは揃った・・・何か言い残す事は無い?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ