【閑話】ヒーローは激怒する
少し短めです。
その頃の王都で伯爵は何をしていたか
リフェル王国にある王都“フラワーレイン”
貴族たちが住まう王都用の屋敷の一つ、そこで事件は起こった。
「な、な、なんだとっ!?もう一度言ってみろ!」
ワナワナと怒りを露わにし、反対側にいた使用人らしき人物が怯えながらもう一度ゼルエル伯爵に伝える。
「ど、どうやら・・“使途不明金の流用”と“不義の件”は誠らしく・・・他にも全てマリーダ夫人さまが、関与しているかと」
「して、証拠は揃ったんだな」
「勿論で御座いますっ!ただ・・・」
領地に居る使用人の三人からの報告書によりますと、それだけでは無くリリスさまに対しての暴力や他の使用人達による虐めも横行していると。
使用人が言い切りチラリと、ゼルエルの方を見やれば顔を真っ赤にさせ社交界でも一・二を争う綺麗な顔が崩れていた。
ヒイッ!と使用人は小さな悲鳴をあげゼルエルの次の言葉を待つ。この時間はかなり辛い。
「まさか・・・ブーダも、では無いだろうな」
「は、はい。ブーダさまも率先してリリスさまをイジメていらっしゃいますし、領地にロナンド共和国から来ていたアーサーさまがご滞在以降苛烈になっています」
「ハァ・・・あの二人が此処まで愚かだったとは」
「如何致しますか?旦那さま」
扉の近くに居たいかにも優秀そうな老執事が一歩前に出てゼルエルの様子を伺う。その隣には同じ様に執事服を着こなした青年と共に。
「直ぐに馬車の用意をしろっ。それと司法省に行ってマリーダとブーダを伯爵家から出す手段を整えろ・・・私はもう、我慢ならん」
手に持っていたペンを置き、近くにいた別の使用人にコートを取らせ歩き始めた。
向かうのは我が領地である伯爵家へと。