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ヒロイン、攻略者の一人と出逢う



 とりあえずタローとシャルからは食材と薬草は手に入った事だし。運動は急には出来ないから軽くラジオ体操から始めよう。

 頑張るぞぉ〜。


 それからリリスはタローから貰った食材で栄養満点な料理を作って体力を作り、シャルからお裾分けして貰った薬草を使って髪や肌にしっとり潤いを保つ美容に心がけ。

 ラジオ体操から始まって今では軽いランニング的なのまで出来るよう健康面に気を使っている。














「ちょっとブス!早く来なさいっ!!」


「はぁーい、お嬢さま今すぐに」


 決意してから数ヶ月経った頃。リリスは劇的に変わっていた。

 きちんと食事を取っているおかげでヒョロヒョロのガリガリだった体は少しだけふっくらと肉つきが良くなり、薬草で調合してカサカサのボロボロだった肌は玉の様にうるつるとなってきめ細やかに。

 髪の手入れも怠らずにしていたらパサパサからサラサラ艶やかな綺麗な白銀色の髪が光り輝いていたのだ。



 初めに驚いたのは使用人達。


 大体はヒョロガリな自分しか知らなかったらしく、特に男どもはリリスが通るに何度も振り向いてボケっとしていて女たちは悔しそうに睨みつけている。

 自分たちもキチンと手入れすれば綺麗になれるのに。


「遅い!ブスのセンスに頼るのもヤダけど、この髪をくるくる巻いて。あとドレッサーから勝負ドレスを出して、あぁマーシャ!ワタクシにとびきり美人になれるメイクを施しなさいっ」


「「はいっお嬢さま」」


 マーシャと呼ばれたブーダ付きのメイドと共にオークからゴブリンに変身したブーダ。どうか足掻いても、無理。

 リリスとマーシャは微妙な表情をして。


「ふんっ、まぁまぁね」



「ブーダちゃんあらあら可愛くなっちゃってぇ〜、これで彼の方もメロメロになちゃうわよぉ」


「お母さま!と、当然ですわよ。この美貌でメロメロにさせてみせますわっ」


 可愛いって・・・目は大丈夫か。

 僕もしかして美醜逆転の世界に来たのか??

 まぁ、我が子可愛さってのもあるし。この屋敷の使用人たちはぎこちない笑みでブーダを持て囃してたし蝶よ花よと。


 蝶よ花よでは無く、蛾よラフレシアよの方が似合ってるかもしれん。げっそりとしながらマリーダ夫人が言っていた彼の方とは誰のことだろうと隣にいたマーシャに聞いてみると、怪訝そうな顔をしながら数ヶ月前に来たお偉いさんの更に雲の上の人物が伯爵家を避暑地代わりとして訪れるらしいのだ、今日。

 あぁ・・・だからタローが憔悴しきってたのか。



(いい?リリス、今か来る雲の上の人物はロナンド共和国の嫡男さま来るから粗相しないでよねっ)



(はいはいロナンド共和国の嫡男さまが・・・!?)



 ちょっと待って。ロナンド共和国の嫡男。

 て、もしかしてもしかして。












「初めまして。ロナンド共和国から来ましたアーサー・ロナンドと申します、短い間ですがよろしく」


 ピコピコと頭の上で動くもふもふな耳。


 仄暗い灰色の短い髪に小麦色の肌、濃い藍色の瞳を輝かせて微笑んでいたのは【七つの国と精霊の乙女】に出て来るメイン攻略者では無いか。

 外見的から見るとまだ幼さがあるし、多分僕と同じ位だろう。でもゲームではアーサーがリリス・・・伯爵領に来るだなんて聞いていない。


 もしかしてストーリーが少し変わったのか?




「まぁまぁ遠い所から遥々ご足労頂きまして至極恐悦でございます。ゆるりと休まれていってくださいまし、娘を紹介しますわっ」


 マリーダ夫人はオークからゴブリンに変身をしたブーダを紹介しロナンド共和国の使従者は顔を引きつっており、当のアーサーが笑顔が張り付いたままである。

 僕もとりあえずマーシャの近くでメイドとしているので頭を下げているが、視線を少しあげると彼らの様子が分かる。うん、なんて表現すればいいか困ってるんだろうな。

 と、アーサーの瞳とリリスの瞳が合った様な気が。

 気のせいだろう。



「・・・・・」



「若?」


「あの、アーサーさま?」


「あ、いえ・・・綺麗だなと思って」


「まぁ♡」


 視線が明後日の方に向いている。

 それに気付かないブーダとマリーダ。


 執事に案内される様にアーサーたちとマリーダたちは応接室から出て行く。もうため息しか出てこない。

 アーサーが出る間ずっと視線が此方に向いていた様な。









「ぷぅ・・・今日も洗濯物が沢山あった」




 パンッパンッと洗濯物を綺麗に伸ばしながら籠の中へと仕舞うリリス。マリーダ夫人はロナンド共和国の従者と雑談し、ブーダとアーサーはシャルたち庭師が作った庭園を散策中。ここならアーサーには会わないから良いかなと思い思いっきり背筋を伸ばす。


「ちょっとアンタ、これも片付けといて」


「あ、私のもー」


 次々とメイドたちがドサドサと洗濯籠に入れて何処かへと行く。この空いた時間をお茶やお喋りに花を咲かすんだろう。

 ハァと小さくため息を漏らしながら大きな大きな洗濯籠に手をやると。




「お手伝いしようか?」


 ん゛ぅ???!

 な、ななななななななっ何で此処にアーサーさまがいらっしゃるの!?

 びっくらこいた様な画風になりながらリリスは心臓がドキドキと脈をうっていた。だって。だってだってアーサーと言えば、このピコピコと頭の上で動いている狗の耳にワイルドな性格にして主人公に愛を囁く時は『誰かのモノになる位なら掻っ攫ってやる』とこれは妹談なのだが。

 目の前にはワイルドになる前のショタ王子がいる・・・て、僕もリリスは今はロリっ子か。


「だ、大丈夫でっしゅ(噛んだ)」


「僕がやりたいだけだから、ね?」


 無言になりながら再び二人は洗濯物を片付け始める。そう言えばアーサーはブーダと共に庭園を散策中な筈と思い汗をかきながら彼を見やるとニコリと微笑む。

 こりゃ多分途中で護衛の人に任せたんだ、可哀想と思いながら洗濯物を最後にパンッ!とシワをなくす様に伸ばすリリス。

 ちらりと隣を見れば洗濯物なんてやってなさそうなイメージだったアーサーがきちんと綺麗に畳んでいる姿を見て驚く僕。


「応接室でも会ったと思うけど、僕はアーサー。アーサー・ロナンドって言うんだ。貴女の名前は」


「リリス。ただのリリスです」


 へにゃりと笑いながらアーサーに向ける。

 ゴクリと何かが鳴る音が聞こえた。

 此処には僕とアーサーしかいない、もしかしてお腹でも空いたのかなと首をかしげると突然アーサーがリリスの両肩に手を置く。

 そして・・・


「ねぇリリス。君から何故甘い匂いがするの?」


「へ?甘い・・・匂いですか、私は別に」



 特段に匂いはしない。


 アーサーはブツブツ言いながら何か考え事をしていたが僕はその場でペコリと頭を下げて直ぐにリネン室へと向かう。洗濯物が終わったら次があるからね。

 と、運良くちょうどブーダらしき声がした。

 アーサーを探している様で。


(甘い匂い・・・これも何かのイベント関連なのかな?あーもう、妹にもうちょっと聞いとけば良かった)


 妹が【七つの国と精霊の乙女】の話をすると多分、半日は費やすだろう。そして布教をしながらいかに自分推しのジークフリートが素晴らしいか懇々と綴ってるな。













「リリス。リリスリリスリリスリリスリリス・・・うん、覚えた。あの子絶対・・・・・」



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