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ヒロイン、状況確認し行動する

 

 ブーダ嬢にネチネチと嫌味を言われながら朝ごはんを用意してやった。それも蜂蜜を何時もの3倍掛けて。

 本人は気にした様子は無く、バクバクと汚い食べ方をしながら貴族でもある夫人もそれを咎めることもしないで可愛いわねブーダと、微笑んでいた。

 マリーダ夫人は目でも悪いんだね。

 これはマナーが悪いって話ではないような。



 再び屋根裏部屋に押し込まれたリリス。

 どうやら今日この屋敷にお偉い貴族が来るとかで、絶対に出てはいけないと念を押される。

 別に用はないからいいか。


「その間に【七つの国と精霊の乙女】について整理しようかな?」






 このゲーム原点は『全年齢対象』PC乙女ゲーム。

 そこからスマホゲームやらテレビゲーム等に移植を繰り返しながら進化していった。その中でも売り上げを押しまくったものがある。

『18禁対象』PC乙女ゲームである。

 原点のゲームは確かに甘々なものやちょっとしたRPG的なのが入って健全に終わるシステムだった。

 それを禁対象は全てを塗り替えた。

 甘々な内容もあればシリアス的な雰囲気もあったり猟奇的なのも色々と含まれており、当時の乙メンたちは驚愕したとか。


 僕ことリリスはそのゲームの主人公兼ヒロインとして操作する。

 妹曰く、絶世の美少女。イケメンほいほい。




 乙女ゲームなので勿論、攻略対象者がいる。


 ①ジークフリード


 ②アーサー


 ③ランスロット


 ④レオハルト


 ⑤ダレス


 五人以外にもサブ攻略者や隠し攻略者もいるらしい。ダレス以外の四人はそれぞれの国の王子で、ゲームキャラらしく色んな闇や悩みを持っているのでそれを解決していくと好感度アップやイベントをこなして行き最終的に結ばれるエンドや、失敗するとバットエンドなども盛り沢山。


 鏡に映るリリスの姿はゲーム開始の頃の様な少し大人びた少女では無く、本当にまだ幼さを残した少女に近い。


(パッケージの真ん中に居た、滅茶苦茶な美少女がこんな髪の毛パサパサで少し汚れているだなんて誰もが思うはず無いでしょ)


 あまり食事を与えられていないのか、リリスの体はひょろりとしており艶のない髪はパサパサとしていた。






【リリス】ってこんなにも酷い扱いをされてたのか。

 僕はそっと胸元に手をやって【リリス】の心を撫でる様に見つめる。決心をした。こんなボロボロなリリスの姿から絶対に変えてやる・・・と、誓いを立てる僕。


 ならばっ。


 健康で美容に良い食べ物や運動などすればいいんだ、僕が。そうと決まったら早速、調理場で少しづつ食材をチョロまかしてくか。

 リリスはベッドから立ち上がりソッと扉をゆっくり開ける。歪な音をしながらも音を立てない様にマリーダ夫人やブーダ嬢、使用人達に気づかれないために。

 ゆっくり。ゆっくりゆっくりと、屋根裏部屋から下りてそのまま更に一階に来てキョロキョロ辺りを見渡し調理場へ。




 そこは戦場だった。

「ホロホロ豚焼き上がりましたっ!」

「ちょっ、アーマード塩はどこよ!」

「バッキャロー!!そのソースは最後に入れるんだろーがぁ!」


 バタバタと調理人達が忙しそうにしている。マリーダ夫人が言っていた。今この屋敷にはお偉いさんが来ていると・・・あ、あそこに居るのってタローではないか。

 リリスの記憶の中でゼルエルの次に優しかったのが調理見習いのタロー。茶色の髪と瞳に鼻の辺りにソバカスがあって愛嬌がある人物。


(タロー・・・タローってば)


「?!?!?!」


(シー・・・)

 ちょいちょい。



 戦場から離れ、リリスはタローと食材庫ら辺でコソコソと会う。呼ばれたタローは頭に被っていた帽子を脱ぎ、いきなり呼ばれた事にドキドキしていた。


「ちょっ、リリスお嬢様いま俺忙し」


「お願いですタロー。このリストのを僕にくれ」


「ぼ、僕?え、お・・お嬢様ってば男言葉」


「い・い・か・ら、お願いっ」


 ぎゅっとタローのゴツゴツした手を握り締めお願いと心から頼む。その様子に驚きつつもタローはパチクリさせながら少し考えて。

 出来ることならと、仲間をゲット。

 リリスはそのままタローに抱き着きありがとっ!と満面の笑みを浮かべて次の人物の所へ忍者の様に走り去った。

 ぽつんと残されたタローは後に、顔を真っ赤にさせた。



(ふふふっ“食材”はゲットしたし、次は〜)





 パチン…パチン…

 鋏で何かを切る音が聞こえている。多分、今居るのだろうあの人が。広大な庭には沢山の花やハーブ等が植えられており、麦わら帽子を被った人物はとある植物を剪定していた。


「シャル!」


「・・やぁお嬢様、今日は調子が良さそうだね」


「うんありがとっ。あのねあのね、シャルにお願いがあるの・・・この“薬草”リストが少しづつ欲しいんだけど」


「・・・・・お嬢様のお願い。うん、良いよ?けれどあまり沢山は持って行けないけど」


 タローと同様にリリスはシャルに飛び付き抱きつくと、シャルは背中を撫でる様にあやす。シャルの匂いってなんだかカモミールの良い香りして落ち着くんだよね。

 少し整った容姿に灰色の髪と濃いエメラルド色をした瞳。他の令嬢やブーダにメイドが放っては置かない筈なのに本人はのらりくらりとやり過ごしているらしい。

 勿体無いと心の中で思ってしまった事に驚く僕。


「そうだお嬢様。僕の特製ハーブオイルをあげるよ、その代わり僕からのお願いがあるんだけど・・・いいかな?」


「あ・・え?もしやシャル、ブーダ嬢が好きとか」


「それは無いよ」

 ズバッ


 それ専かなと言ってみたら真顔で否定した。

 謝りながらシャルの願い事聞こうとしたら奥の方からガヤガヤと大人数の予感が。

 ビックリしながら僕はシャルに別れを告げてそのまま屋根裏部屋に直行!ふぅその間に誰にも会わなかった事に奇跡を感じる・・・神さまありがとう。




「よぉ〜し、今日から“リリスちゃん大改造”計画開始だっ!僕が何時か消えてリリスに戻った時に君を綺麗にしてあげるから、ね」

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