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ヒロイン、前世を思い出す




 あ、あ・・・・・あぁ。

 喉・・・渇いた、なぁ。お水・・・欲しい。





 《・・・・・ス、・・・》



 ダレ?誰が私を呼んでいるの。

 ボンヤリする視線の先に居たのは・・・・・

















「・・リス!リリスッ!!」


 金切り声に近い声に叩き起こされた僕。

 今日ってシフトは空けておいたはずだから分かってる筈だよね、お母さん。


 僕は、眠たいのよ。

 もぅ・・・体が怠くて怠くて、疲れたん。



「起きろっ!!こんのぉブス!!!!!」

 ガヅンッ!



 ガッ?!・・・な、なに?


 重たい瞼を必死になって開けるとそこに居たのは、ド派手なピンク色のドレスを着たオークであった。

 状況が飲み込めずパチクリさせながら豚を見つめていると君が悪い様な視線を送りながらかなり憤慨している。


「何時まで寝てんのよこのブス!ワタクシの日課である蜂蜜いっぱいに浸したトーストにオレオンブーのカリカリベーコン、それに」


 ベラベラと喋る豚を余所に、ズキリと頭が鈍器の様に殴られた痛みを感じてナニか色んな情報が川の様に流れ込んでくる。

 これは・・・・・?









『今日から此処が君のお家だよ。私の家には君と同じ位の年頃の子が居るから仲良くして欲しい、それに私も王都で忙しいので中々会える機会が無いが私をお父さんと思って欲しい』


 ニコリと優しそうに微笑む男性。

 その声を聞くと心がポカポカしてくる。



『アンタの母親が居なけりゃ私は今頃は皇妃になっていたものを・・・その美貌が忌々しい奴にそっくりだ。あぁ!!アンタなんか、アンタなんかぁっ!!』


 鬼の形相をしながら鞭で躾という名の折檻を繰り返す女性。

 この人は嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い痛いから。



『ふぅ〜ん容姿は不細工ね。・・名前?あぁアンタはブスね、それとワタクシと同列にしてもらいたくないから・・・そうだわ!此処は人手が足りないから使用人になって貰いましょう♪』


 興奮してボヨンとお腹から音が出ている少女。

 私の物を盗ったり暴力をふるったり。



 男性が居る時は皆が優しくしてくれたのに。

仕事で王都に暫く居ないと彼女らは本性を現す。女性は早速、私を虐め抜き人と思わない所業を繰り返し気がすむと何処かへ行ってしまう。


 少女も隣の部屋では無く屋根裏部屋の様な場所へ私の髪を引っ張りながら連れて行き、ドンッと押してその場がブスの部屋よ!と嘲笑う。


 他にも使用人は居るのだが、夫人が仕切っているので自然と私を蔑ろに。大体の仕事を押し付けて怠けてる。私付きのメイドは居るのだが、なにもしてくれない。孤児院にいた頃から一人でやる事はしてきたから少しは平気だったが、ご飯は一日に一食でお腹・・・空いたなぁ。


 辛い。けど、私に戻る所は無い。


 この屋敷を追い出されでもすれば私は飢え死にするか、奴隷狩りにあって奴隷落ちする。

 一生懸命になって少女や女性の機嫌を伺いながらやりくりしていたんだけどある日。



 この屋敷で盛大なパーティーがあった。


 なんでも。あの少女の11歳の誕生日らしく他の偉い人たちが来て賑わっていた。あんなに美味しそうな食べ物を食べたりして私のお腹がクゥと鳴ってしまった。

 恥ずかしくなり途中で庭の方へと駆け込み、私は空腹を耐えかねる様に丸くなってしゃがみ込みジッと耐える。耐えて耐えて耐えて。

 それでもお腹はクゥと鳴り続ける。







「あの・・お腹でも痛い?」



 暗い中。相手の顔は見えなかったが声色からすると男の子っぽい。私はすぐ様ふるふると首を振りながら違うと意思表示。


「あ、もしかして」


 ごそごそと男の子がナニかを探ってポケットから取り出したのは丸い物体が三つ。私はこれが何かは知らなかったが、男の子がえいやっと口の中に入れ込んだ瞬間に甘い味が口いっぱいに広がる。


「美味ひぃ」


「良かった。まだまだあるから食べてね?」


 暫くは男の子と居て、甘い物でも腹は多少膨れお礼を言おうとしたその時。空に掛かっていた雲からサァッと月の光で庭が照らされ自分の姿と顔が見えなかった男の子の姿がハッキリと分かる。

 男の子の頬が月光に照らされながらも真っ赤に染まり、リリスを驚く位にジッと見つめて真っ白な細いリリスの手を絡めて。



「              」



 なんて言ったか聞こえなかった。


 ザワザワする中と風の騒めきによって男の子の言葉が遮られる。訳も分からずコクリと頷くと男の子はリリスの額に軽くキスを付けた。



「約束・・・だよ?」







 少女の誕生日から一夜して。


 上機嫌な夫人は珍しく折檻などなかった。

 びくびくしながら私は昨日の事がバレないかどうかでいっぱいだったから。それから最近体の調子がおかしい・・・熱もあるかも?

 暫く眠りたいと言っても誰も聞いてはくれない。辛い、けどまた男の子に会いたいな。



 そこでブツリと映像の流れが止まる。


 頬に冷たいナニかが流れ落ちる。

 ポロポロ。ポロポロと・・・これは、涙?




「はぁ?何泣いてんのよブス!さっさと用意しろっ」


「・・・・・」


「チッ!!!とにかく準備はしてよねっ」


 ドスドスとマナーがなっていない足音を響かせながら少女は部屋から出て行き、その際に壊れる位の音でバンッ!と扉を閉める。















 そうだ。


 僕はーーーーーーー死んだーーーーーーーー

 死んでこのリリスになったんだ。


 僕こと、名前は・・・忘れちゃったけどフンワリと覚えてる。周りからは渾名なのかヒヨって言われてた。



 もう一つ思い出した事がある。


 此処は・・・妹が嵌っていた乙女PCゲーム

 《七つの国と精霊の乙女》だった事に。

 そして先程の沢山の記憶の中で流れ込んできた僕は、そのゲームの主人公にしてヒロインなんだと判明した。

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