誘う女
第二話
「誘う女」
久しぶりに食事に誘ってみた。
そう言えば自分から誘うのは、これが初めてな気がする。
軽い食事とワイン、色んな会話をして笑い、楽しく時間を過ごした。
二件目は、ピアノのあるラウンジへ、私はマティーニ、彼女は、モヒートを呑み二盃目をと思った時、突然彼女がピアノの方へ、聴いたことのある曲だけど、曲名は思い出せない、というより、彼女がピアノを弾けるとは思わなかった。
「何ていう曲?」
「忘れたは。」
「それにしては上手い。」
「勝手に指が動いたの。」
「そう。」
私は、退屈な時間を持て余し、食事と酒、いかれた精神のリハビリの為に彼女との会話。
彼女は、タダでの食事と酒、give-and-takeだ
若い頃は、このままで満足出来なかっただろう。
彼女の店に行き始めて何年になるだろう、時々初めての発見をする。
だから長続きする。
何となく好きになると、その人のことをもっと知りたくなる。
知ることによって、傷つくこともある、人間の心理は、複雑でミステリアスだ。
「もう一軒行く?」
「もう、大分呑んだよ!」
「いいじゃない、私のこと欲しいんでしょ!」
どうしてこんなこと分かるのさ?」
「だって、さっきから私の胸元を見てるじゃないの。」
「それだけ強調していたら誰だって見るだろう。」
「何、想像していたの?」
「こんなこと云えるか!」
自然に会話が進む。
家族では出来ない会話、リラックスして肩に力が入らず進む。
「行きたいくせに。」
「行こうか。」
まだ彼女には、私の知らない面がいっぱいあるだろう。
「ところで、さっき何考えていたの?」
「いやらしい妄想!」
「私のこと。」
「そう!」
「うれしい。」
私達は、店を出て歩きながら腕を組んでいた。」
「夜が来る」が聴こえてくる。
「夜が来る」この曲を聴くと、何故かウイスキーが呑みたくなる。
そしてセンチメンタルになる。