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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【九話】欲念と自戒。
83/269

(83)猛毒の花にご注意

「よーし決めたぞ。へへへっ。楽しみだぜ。アイシャの奴の歪んだ顔を——」


鈍い音とともに、ザックの言葉はそこで途切れた。


「ぐへぇ⁈」

「……⁈」


短剣を持ったザックは、向きはそのまま、前に吹っ飛んだ。

何が起きたかわからず、必死に周囲を見渡すと、立っていたのはアイシャだった。


「ア……アイシャ⁈ 無事か? 何ともないのか?」


——必死に言葉を紡ぐ。


「うーん、今のユウよりは大丈夫、かな」


……言ってくれる。


「ほら、行くよ」


立つのにアイシャの肩を借りてしまった。


「情けないな……本当。アイシャに救われてばっかりだな、俺」

「そんなことないよ。こうして、助けに来てくれたでしょ? 自分がこんなにボロボロにされて。あの大きい四人組だって倒してくれた。私があいつらに襲われたら、勝てなかっただろうし」


——っ‼


「それで思い出した! アイシャ!」

「な、なに?」

「大丈夫か? 襲われてないか? あっちの意味で! あいつらはそれを目的に——」

「ふふん。私はまだ、穢されてないよ。本当だよ? 試してみる?」


——正直、確認したい気持ちもあったが、それはそれでマズい気がして思いとどまった。


「よかった……」

「言ったでしょ? 私はユウの女だって」

「よかったよ、本当に、よかった」


帰ってきた「幼馴染」を、抱きしめた。

情けないことに、半泣きで。


「……もう」

「そうだ、これ」


ミラが拾ってくれたアイシャの髪飾りだ。

ポケットに入れていたが、どうやら無事だったようで一安心。


乱れたアイシャの髪。

それを手でとかし、いつもつけているところに戻した。


「……へたっぴ」

「悪かったよ」



 その後、クリスとミラのところに戻った俺たちは

今日あった事をそっくりそのまま教官に報告した。


どうやらアイシャが監禁されるところを

目撃した人がいたらしく、教官たちも動いていたようだ。


だが彼女は自力で脱出し


「あんなので私を閉じ込めたつもり?」


と言っていた。


——末恐ろしい。


 事件を起こしたザックと四人組、警備にあたっていた仲間は

いったん停学処分とし、上層と話し合って今後のことを決定するそうだ。


 四人を攻撃した俺と、警備をボコボコにしたアイシャだが

状況からして、致し方無い「防衛」行為であったとして、処分は下されなかった。


あの脅迫状が、十分な証拠となったようだ。

 


 その事件から時間がたっても、アイシャへのナンパが無くなったわけではない。


何度「怖くはないのか」と訊いても

帰ってくるのは「私がかわいいから仕方ない」というおちゃらけた答えだけ。


俺としては心配でたまらないのだが……。


かといってナンパ防止策があるわけでもない。

する、しない、はする側の意志だから俺にもアイシャにも、どうすることもできない。


故に、俺は結局、こうやって納得することにした。


——ああ、アイシャがかわいいから仕方ないな‼


——と。





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