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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【零話】空と記憶。
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(4)結婚式会場の下見

登場人物

ユーリ:ストロングホールドに住む、ごく一般的な少年。

リーズ:ユーリ宅の向かいに住む少女。将来はユーリとの結婚を望んでいる。

その他

「ごめんごめん」

「ユーリ! 心配しちゃったよ、何かあったの? 騎士さんが沢山いるけど……」

「いや、何でもないって。クラウズお兄さんが言ってた」

「そう? ならいいけど」


嘘をついた。リーズに悲しい顔をさせたくなかったから。

おばあさんの事は、いずれ彼女にも伝わる。

だから今でなくても良い。そう思った。


「今日は何しよっか」

「結婚式会場の下見!」

「気が早いよ、リーズ……。結婚できるようになるまであと九年もあるんだよ?」


リーズは昔から、将来はボクと結婚するのだと言っている。

ボクとしても嫌な気はしないし、むしろうれしいと言った方が正直なのだが、

彼女はいつでも急いていた。


「え~、じゃあ街のはずれにある教会を見に行くとか?」

「同じじゃないか」


呆れたような口ぶりで言ってしまったことを少し後悔した。

興味が無いような態度をとってしまったが、まあ他にすることもない。

なんだかんだ、彼女と一緒なら何だって楽しいと感じる。


「まあいっか。教会に行こう、リーズ」


後悔を顔や態度に出さないよう、平然を装って了承の返事をした。


「うん!」


無邪気な笑顔で頷く彼女は、とても嬉しそうだった。



 教会はリーズが言った通り街のはずれにある。

歩いていけば小一時間はかかるだろう。

そこで、一昨年の誕生日に父に買ってもらった

自転車を引っ張り出し、後ろに彼女を乗せて走った。


 目的の教会へは三〇分かからないくらいで到着した。

今までにも何度か見たことがあるが、

やはりその一帯が別世界であるかのような荘厳な雰囲気がある。

建物の大きさもそうだが、その装飾、そして何より

中から聞こえてくるオルガンの音が印象深い。

圧倒的な存在を前にしてなお心が安らぐような、そんな不思議な感覚を覚えた。


 入り口の前であれこれ喋っていると、

通りかかったシスターさんが声をかけてきた。


「もし教会に興味がおありでしたら、中をご案内しましょうか?」


一瞬リーズと顔を合わせ、

せっかくの機会だからと見せてもらうことにした。


「ではどうぞ、お入りください」

「お邪魔しまーす」


古びた木扉が特徴的な音をたてながらゆっくりと開いた。

外観とは一味違った雰囲気の空間が目に飛び込んできた。

それはまさに神秘、というやつだった。


「すごく綺麗! こんな所で結婚式が出来るなんて夢みたいだね」


リーズのセリフを聞いたシスターさんが不思議そうに訊いてきた。


「結婚式?」


……当然の疑問だ。


「そう。私たちね、大きくなったら結婚するの。今日はその下見なの」

「おやおや、そうですか。それじゃあ立派な式にしないとね」

「うん!」


 その後は建物の中を色々見せてもらった。

大昔、教会が建てられる前からあったらしい女神様の像がかなり心に残った。

それと、いくつかの昔話、神話とかの類を聞かせてくれた。

三匹のサルが出てくる話は当分頭から離れそうにない。


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― 新着の感想 ―
[良い点] サルの話が伏線になっているのでしょうか。先が気になる描きかたですね! [一言] Twitterからきました! 僭越ながら評価にて応援しました!
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