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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【三話】貪食と喜悦。
20/269

(20)予想だにしなかった朝

翌日。

俺はおそらくこの世で一番不快な音、具体的には目覚まし時計の音によって覚醒。

強い憎しみを込めてアラームを止める。その音でアイシャも目を覚ましたようだ。

昨日の疲れが残っている気がする。


「おはよう」

「……ん、おはよー」


アイシャはまだ眠たそうだ。時刻は八時半。

伝令が来るなら三十分後だ。俺たちは着替えて一階に降りた。

顔を洗い、お茶を淹れる。


リビングには誰の姿もなかったが、風呂場の方からシャワーの音が聞こえる。

たぶん朝風呂好きのお姉ちゃんだろう。


 と、早朝からの仕事がない時の魔特班はこんな感じだ。

アイシャとお茶を飲みながらくつろいでいると、呼び鈴が鳴った。


いつもより若干早めだ。


「俺が出てくるよ」

「ん」


小走りで玄関まで行き、ドアを開けると、予想通り伝令だった。


「おはようございます」

「王令である」

「はい」


その人は、きれいな鎧を身に着けている。

装飾が豪華で、きっと戦闘用ではない。


「これを」


一枚の、これまた綺麗な封筒を手渡された。


「どうも」

「本日午前十一時に王城へ。その封筒には入城手形が封入されている」

「え、王城……ですか?」


今まで王からの命令と言えば、指定場所行って魔物と戦え、というのが定番だった。

王城に来いと言われたことは今まで一度も無い。


「そうだ。内容は以上だ。何か質問は?」

「いえ、大丈夫です」

「それでは」


伝令の人は敬礼をし、足早に馬車に乗って去った。

俺も振り返り、玄関のドアノブに手をかけた。


その時。


「——っ⁉」


咄嗟に周囲を見渡す。


なにか、得体のしれない気配を感じた気がした。


人のような魔物のような……。


結界があるとはいえ、魔物が絶対に居住区に入り込んでこないという保証はない。

だが俺の眼には、走り去る馬車と一匹の黒猫しか映らなかった。

まあ、昨日の疲れが残っていて感覚がおかしくなっていたんだろう。

とにかく、今聞いたことをみんなに伝えなければ。



 リビングに戻ると、なぜかバスタオル一枚だけのお姉ちゃんが居た。


「伝令です」


まあ、もう見慣れた光景だから何とも思わないのだが。


「なんて?」

「今日の午前十一時、王城へ行くように、ですって。ここに入城手形が入ってるそうです」


伝令の人からもらった封筒をお姉ちゃんに渡す。


「王城に、ね……」


アイシャもキョトンとしている。

お姉ちゃんの表情から、先輩二人にとっても珍しい事なんだと察した。


「分かったわ、ありがとう。じゃあ着替えてリーフを呼んでくるから。二人ともリビングに居てね」

「「了解」」


お姉ちゃんは封筒を机に放る。


……入城手形ですよ、それ。


「あ、それと」


階段に向かいかけたお姉ちゃんは、何かを言おうと踵を軸に急転回。


「私のコーヒー淹れ……あ」

「あっ」

「お姉ちゃん……」


普段通りに動いたからか、お姉ちゃんの身体に巻かれていたタオルが床へ。


「もう、ユウのえっち」

「え、なぜ俺」

「……」


俺は少し遅れて視線をそらした。

その一方で、アイシャはまじまじとそれを見つめている。

というかなぜ風呂に入る前に着替えを用意しておかないのか、これが分からない。


お姉ちゃんはタオルを拾い上げ、何事もなかったかのように続けた。


「コーヒー、よろしくね」

「はーい」


そう言い残し、お姉ちゃんは二階へ。


「ふぅ、焦った」

「……おっきい」

「え?」

「お姉ちゃんの胸。見たでしょ?」


まったくこの娘は……。


「見てない……そう、見えただけ」

「自信、あったんだけど」


自分の胸を両手で触りながら言う。

そう言えば「自信あり」って言ってたな。

アイシャは結構あると思うけど確かに、お姉ちゃんの方が……


って、大きさ比較できるほど見てんじゃねえか俺は……。


悔しそうに胸を見る彼女をよそに、俺は頼まれたコーヒーを淹れる。




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