(2)朋友との離別
黒いサルとの出会いから更に時がたったころ、
三匹はこれまでの中でも一番の大発見をした。
どの山でも見たことのない、とてもとても魅力的なエサだ。
しかしそれは、どう見ても一匹分しか無かった。白いサルは言った。
《三人で分けよう。平等に食べるのがいいよ》
その発言に対して黒いサルは反論した。
《ヤダ、オレ、ゼンブタベタイ。コレ、オレガ、タベル》
《だめだよ、そんなの。君はどうしたら良いと思う》
白いサルが黄色いサルに意見を求めたが、彼はこう答えた。
《僕は……任せるよ。二人で決めたらいい》
《オレガ、タベル》
《だめだ、三等分しなくちゃ》
白いサルと黒いサルは喧嘩を始めてしまった。
口喧嘩から、次第にヒートアップしていき、殴り合いにまで発展してしまった。
やがて深手を負った白いサルは絶交を言い渡し、居なくなってしまった。
黒いサルも弱っていた。
彼がよろよろとエサに近付くと、突然背後から頭を殴られた。
意識が飛ぶ前に見たのは、石を片手に、エサを持ち去る黄色いサルの姿だった。
彼は選択を任せると言いながら、こうなるのを待っていたのだ。
戦いで黒いサルが勝てばこうしたし、白いサルが勝てば三等分か二等分は
確実に手に入ると考えた彼は、あえて意見を言わない道を選んだ。
エサを持ち去って自分の山に閉じこもった黄色いサルは、ガツガツとそれを食べつくした。
しかし、それには栄養が沢山入っており、彼はブクブクと太ってしまい、
更に、死に至る病気にかかってしまった。一人で食べて良いものではなかったのだ。
あの時。
白いサルが言った通りにしていれば。
黒いサルを説得して三等分していれば。
ああ、こんなことにはならなかったのに、と。
しても遅い後悔をして、彼は必死に生きた。
だが、過去の彼の行動は、罰という形で彼自身に降りかかった。
外界との繋がりを絶っていた黄色いサルの山に黒いサルが復讐にやってきたのだ。
彼を何とか退けた黄色いサルだが、病は確実に彼を蝕み、着々と死に近付いていた。
自分に言い聞かせた。
これは代償であると。
エサのではない。
仲間を。
大切な友達を卑怯な手で裏切り、
自分よがりな道を進んだことのである。
後悔しても。
どんなに反省しても。
彼の心に覆いかぶさった大きな闇は晴れなかった。
いつまでも、いつまでも。もはやこの闇が何なのか。
それさえ忘れるほど時間がたっても、いつまでも、いつまでも。
更なる不幸の女神が舞い降りるまで。