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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【十七話】束縛と呪詛。
189/269

(189)翼の生えた魔物

 なんとか外に出て数秒後、やっと状況を理解した。


護衛が言っていた魔物の襲撃である、と。


十四人は皆、ノエルがとっさに出したであろうバリアに護られていた。


「おお、助かったよノエル」

「一晩」

「それはダメ」


毎度のやり取りだが、視線はまっすぐ前を向いている。

その先に立っていたのは、翼の生えたヒト型の魔物。


見覚えがある姿だ。


「あいつ、王都に白旗持ってきた奴じゃねえか?」

「あの翼……確かにそうみたいですね」


リーフさんの言った通り、魔王の「宣言」を伝えに来た奴で間違いない。


《皆、気を付けろ。奴はフリューゲル。マオウに次いで危険な存在だ》

《テンマめ、余計な事を》


剣を抜いて様子を見ているが、なかなか隙が無い。


《貴様らを葬れ。そう、指示を受けている。悪いが死んでもらうぞ》

「そうは行くかよ!」


瞬間移動で距離を詰めたリーフさんが、先制攻撃を仕掛ける。


——が。


《まずはお前だ、テンマの青年!》

「こいつ……っ‼」


瞬間移動。

その道のりが見えているかのように彼の攻撃をかわし

更には、興味さえ示さずに奴を攻撃対象とした。


《おっと、危ない》


セリフの割に、余裕のありそうな声色で攻撃を回避。

その右手には、いつの間にか剣が握られていた。


《それ、お返しだっ‼》


奴が剣を振り上げると、フリューゲルはいつの間にか姿を消していた。

その場には羽が数枚舞っているのみ。

目で追うことはかなわなかったが、聞こえてきた金属音で居場所が分かった。


《甘いぞ、フリューゲル》


元帥と鍔迫り合いになっていた。


《ちっ!》


体力の消耗を懸念してか、すぐに押し合いをやめ、高速飛行を開始した。

地上での動きもそうだが、やはり追うことで精いっぱいだ。


数秒程、俺たちを惑わせるかのように飛んだ後、速度を落とし——


「まずい、狙いは頭領さんだよ!」


アイシャが警告を放つと同時、奴は超速で滑空を始め、頭領へ一直線。


《っ!》


急いで剣を出す頭領だが、おそらく間に合わない。


《死ねっ!》


が、その攻撃はなんとか防がれた。


《すまない、助かったよ》

「いえ」


ノエルの魔法陣だ。


《ほう。最初の攻撃を防いだのも、貴様だな?》

「だったら何?」

《邪魔だ。最初に殺してしまおう!》


天魔を中心に狙っていたフリューゲルは、何度も攻撃を防いでくるノエルを

厄介者と認識し、初めて人間に興味を示した。


「来るよ!」

「はい!」


おそらく、もう同じ手は通用しない。

単に防ぐだけの展開では、ノエルが危ない。


そう判断した俺は、ノエルが出した魔法陣の

内側を通ってリーフさんの方へ走った。


こっそり、魔法陣に触れて。


《同じ手はくわん!》

「アタシだって、同じ手は使わないよ!」

《!》


ノエルは、フリューゲルの突き刺し攻撃に合わせ

不意に魔法陣を蹴った。


俺が触れた魔法陣を、だ。


《ええい、鬱陶しい!》


力を反射された敵は、文句を垂れながら体をのけぞる。


「今です!」

「ああ!」


その一瞬の隙に、俺とリーフさんが背後から瞬間移動で急接近。

翼の一部や腕に傷をつけることに成功した。


《⁈》


——まだだ!


「くらえっ!」


身体を一回転させた俺は、その遠心力と、反作用を全てぶつけた。

不意打ちを続けた甲斐があって、敵は見事に地面に落ちていく。


が、こんなところで攻撃の手を休める魔特班ではない。


「覚悟!」


剣に熱を込めたエリナさんが追撃を加える。

なんとか剣で防ぐフリューゲルだったが、熱に負けた剣は融解、

左胸から右わき腹にかけて大きな火傷ができた。


さらに攻撃は続く。


着地のタイミングを見計らった

アイシャとお姉ちゃんが、シンプルな斬撃をお見舞い。


《くっ!》


フリューゲルは、たまらず距離を取った。


《なるほど、これが今のニンゲン。なかなか滅ぼせないわけだ》

「……あんまり、効いてなさそうですね」

「残念だが、そうみてぇだな」


冷静に俺たちに感心するフリューゲル。


《しかし分からないな》


十四の敵を前にして、何か考え事をするだけの余裕を見せる。


何てことだ。


コイツが魔王に次いで危険な存在だと? 


じゃあ、魔王は……。


《魔王様にかかれば、これしきの相手——っ⁉》


何かブツブツと呟いていた敵。

たった今、そんな魔物の胸を一本の剣が貫いた。


《ダメじゃないか。隙だらけだよ、フリューゲル》


何をしたかは想像できた。

おそらく、あの空間を経由して背後にまわったのだろう。

これなら瞬間移動とは違い、道中を見切ることは不可能だ。


しかし、問題はここからだった。


《マモノの力には感心するよ。けどそんなもの、知力の前では——》

《失せろ》

《っ!》


——まずい!


反射的に、フリューゲルに向かって短剣を投げた。

とっさの行動だった割には、この軌道を維持すれば奴の顔面を捉えるだろう。


……維持すれば、な。


《邪魔をするな》


短剣は素手で弾かれ地へ。

それとほぼ同時、背後から攻撃した天魔を切り裂かんとする。


《……小癪な》


だがそこに、もう奴の姿は無い。


《ありがとう、ユウ。助かったよ》


また空間を経由して、俺の横にやってきた。


「戦力が削れたら困るからな」

《おお、戦力にカウントしてもらえるなんて、光栄だよ》


……言葉でこいつを凹ませるのは不可能の域だな。





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