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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【十五話】再会と同盟。
175/269

(175)利用された能力者

 マモノとニンゲンが戦争を始めてしばらくたった頃、

我々テンマは、ニンゲンの世界に潜入者を送り込んでいた。

そんなある時、砦街に潜入していた者から連絡があったんだ。


《……なんだと?》

《言葉の通りだ。昨夜、確かにマモノの襲撃があった。だがいつの間にか、人々はそれを忘れて元の生活を送っていた》


不思議な報告だった。

起きた出来事が、そっくりそのまま、無かったことになった。


そんなことがあり得るだろうか? 


《街の現状は?》

《やはり何も覚えていないようだ。だが、街中にキシが異様なほどいる。ケンペイが多いな。襲撃で死んだ者は戻っていないのだろう》

《他には?》

《それを除けば異常はない。いつも通り、活気にあふれている……ふん、子供が二人、二輪の乗り物で通った。襲撃の翌朝とは、到底思えない平和さだ》


これには頭を抱えたよ。

ニンゲンに現象を消し去るなんて技術は確認できていないし、

第一、そんなことができるなら、マモノと戦争をしているのはおかしい。


かと言って、マモノの仕業とは考えられない。

せっかく成功した襲撃を無かったことにする理由がないからだ。


《そうか。引き続き任務を遂行してくれ》

《了解した》


夜空のような空間から、元の白い部屋に景色が戻る。


《いったい、何が起きているんだ……?》




 それから数年が経過して、潜入者があることに気が付いた。

ニンゲンが記した事件簿を盗み見ていた時の事らしい。


《つまり、襲撃翌朝の大量死事件で死んだ者のリストには無いが、それと同時に見なくなったと?》

《そういう事だ》


毎日のように酒に酔い、居住区をウロウロしていたニンゲンが居たらしい。

印象に残る人物で、よく覚えているという。

すっかり姿を見なくなったゆえ、てっきり死亡したと思っていた様だが、

その者の家にある表札の名前は、リストに一つもなかったと言う。


《つまり、その人物の近辺で何かが起きていると?》

《ああ。とりあえず、彼の家族から調べてみようと思う》

《了解。何かわかったら、また報告をしてくれ》




 さらに一年弱が経過した頃、

例の事件に関する調査は、一気にゴールへと進むこととなった。


テンマの中に、対象の記憶を読み取る能力を開花させた者が居たのだ。

これは有用だと考え、潜入者の調査に協力させた。


《頭領から説明があったかと思いますが、本日から調査に協力させていただきます》

《助かる。早速なのだが、記憶を見てほしい相手がいる》

《はい、任せてください》


潜入者が真っ先に対象としたのは、酔っぱらいの妻であった。

近しい存在の彼女であれば、何か知っているかもしれないと考えたからだ。


しかし……


《彼女の記憶では夫……父親は、息子が産まれる前に、他界したことになっています》

《そうか……》


期待していた結果は得られなかった。


《念のため、息子の記憶も見てみますか?》

《変わらないとは思うが……。念には念をだ。頼めるか?》

《はい》


潜入者はあまり期待していなかったようだが

しかし、結果は意外な物であった。


《これは……》

《どうした?》

《息子の記憶を見た結果なのですが、明らかに母親のものと矛盾します》


彼によると、少年の名前はユーリ。彼は、しっかりと父親の記憶を持っていた。

生まれる前に死別しているなら、ありえないことだ。


それだけではない。


襲撃の夜、彼が起こした現象も確認できた。




「お前らなんか……居なくなれ‼」




ユーリがそう叫ぶと、彼自身が光を発し、

街全体を包んだかと思うと、再び彼の中へ。

次の瞬間には記憶が途絶えた。

おそらく、就寝したことになったのだろう。

そう語った。


《それと……これは、憎悪?》

《憎悪?》

《ユーリは、父親が嫌いだったようです》


無理もないことだ。


《これは私の推論ですが、ユーリは、何かを犠牲にして何かを無いものとするか、封じ込める……と言ったような能力を持っているのではないでしょうか》

《今回のケースで言うと、嫌いな父親を犠牲にし、襲撃があったという事象を封じ込めた、と?》

《はい。もちろん無意識だったのでしょうが》




 そこからは簡単だった。ユーリは騎士となり、マオウ討伐任務の指揮官に任命された。


マオウ城に入った彼を導き、マオウに成りすましたテンマが、

それらしいことを言って彼に能力を行使させた。

彼自身の能力について教え、妻と子供をダシに使うことで簡単に協力してくれた。





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