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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【十四話】正義と闘争。
162/269

(162)十年前の捜査報告書

 王に会う時は違い、書庫を見るだけなら手形は不要だ。

無論、自由に出入りできるのは騎士に限るが。


 重い木の扉を開き、受付の人に、騎士の証である紋章の入った短剣を見せて通る。

過去に数回来ているが、そのスケールには毎回驚く。


「えーっと」


何が何処にあるのかを示す看板に従い、俺は目当ての報告書を探しに向かう。

報告書は大抵、奥から古い順に保管されている。

十年前のものであれば、そんなに奥まで行かなくても見つかるだろう。


「この辺りか」


端から一つずつタイトルを確認。

図書館で本を探した事を思い出す。



 舞う埃にむせながらも続ける。


——ストロングホールド 少女変死事件


「……これか」


忌々しいタイトルの報告書を持って、共用の席についた。



 ページをめくると、紙と紙の間からも埃が舞う。

俺はそれをものともせずに、内容に目を向けた。


——発生場所:ストロングホールド北西居住区

——被害者名:サラ(九)

——捜査進捗:未解決


未解決事件が解決すると、この「未解決」の部分に

二重線が引かれ、その上から「解決」の判が押される。


今、俺が見ている報告書には、それはない。


「……」


雷鳴と雨の音が頭の中でこだまする。

目を瞑れば、あの時の光景がよみがえる。

涙を流して「ごめんね」とだけ言った彼女の母。

その表情や声色までもが、はっきりと思い出される。


——被害者の部屋から、本人のものと思われる大量の血痕が見つかっている

——遺体は発見されていない


十年ほど経った今でも、この内容に変更はない。


——事件前の被害者に、これといって変わった様子はなく


「……?」


変わった様子はなく……? 


ふと、違和感を覚えた。


最後に見た彼女の表情は、

どこからどう見ても、普段のそれではなかった。


家では普通にしていたのだろうか。

もしかしたら、俺たちには気付いてほしかったのかもしれない。


自分に迫る何かに。


そう思うと、再び無力感に襲われた。





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