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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【十三話】報復と螺旋。
150/269

(150)突然のメッセージ

 翌日。コウモリ型討伐の任務を終え、馬車で王都へ帰還。


今日の戦闘では、何もできなかった。


空を飛んでいるコウモリ型に攻撃できたのは、

魔特班で唯一、遠距離攻撃が出来るエリナさんだけ。


任せっきりになってしまった。


そんな不完全燃焼な状態で、簡易報告をしに王城へ立ち寄った時の事。

秘密の話があると、応接間に案内された。


「それで、秘密のお話と言うのは?」

「君たちの報告に、言葉を話す魔物と言うのがあったな」


右腕たちに関する報告に、確かにそう記載した。


「ええ」

「つい先ほどだが、言葉を話す魔物が、王都に現れた」

「本当ですか⁈ 被害の程は?」

「まあ落ち着いてくれ、ルナ班長」

「……はあ」

「そやつは、昨晩の魔物のように出現したのではなく、北上してきたのだ」


……なんだろう、話がいっさい見えてこない。


「……白旗を掲げてな」

「し、白旗……ですか?」


言葉を話す魔物が、白旗を掲げて……?


「左様。いくら魔物とは言え、白旗を持つ相手を斬るわけにもいかなくてな」


……確かに。


「特に暴れる様子もない故、別室で待機させている。もちろん、警備つきでな」

「そ、そんなことが……」

「そこでだ。私はその魔物と、面会をしようと考えている」

「しかし、危険では……?」

「承知している。だから、君たちを呼んだのだ」


要するに、その魔物と話をするから護れ、という訳だな。


「了解いたしました。魔特班一同、警護に当たります」

「うむ、頼んだぞ」



 例の別室へ。式典とは違う、なんとも言えない緊張感がある。


「入るぞ」

「はっ!」


警備の人に会釈して、部屋の中へ。


「……っ!」


一目でわかった。確かにヒト型の魔物だ。

落ち着いた様子で、こちらをじっと見ている。


思わず剣に手をかけそうになったが、

大人しくしている魔物を刺激するわけにはいかない。


《ニンゲンの、王か?》


奴もまた、とても流ちょうに人間の言葉を話している。

昨晩の魔物を思い出してしまう。


「いかにも。して、どういった要件だ?」

《マオウ様からの玉簡を、渡しに来た》

「な、なんだと⁈」


耳を疑った。魔王が、人間に宛てのメッセージを……

いやそれ以前に、魔王はやはり存在しているのか。


《これだ》


差し出してきたのは、手紙と言うよりは、薄い石板だ。

それに、煩雑ではあるが読めるレベルの文字が書かれている。


王が受け取り、目を通している。


俺の位置からでは読めないな……。


「……な、なんだ、これは」


眉間にしわを寄せ、厳しい表情で問うた。


《マオウ様の伝言》

「それは、分かっているのだが……。君たちも読んでくれ」

「はい」


お姉ちゃんが受け取り、俺たちに聞こえるように、小声で読み上げる。


「親愛なる盟友、ニンゲンに告ぐ。私は、マモノたちの頂点に立つ者である。用件のみ伝えよう。私は、君たちニンゲンという狡猾な生き物を憎んでいる……。故に、近いうちに滅ぼさせてもらおうと考えている。これは、その事の宣言である。恐れおののき、残り少ない時間を有意義に過ごすと良い。……ですって」


「これは一体、どういうことだ?」

《書いてある通り。魔王様が、ニンゲンを滅ぼす。その宣言》

「なぜ、こんなものを……」

《マオウ様のお考えは、私には分からない。私はただ、それを運んだに過ぎない》

「我々人間への、宣戦布告と言う事か」

《違う》

「……?」

《宣戦布告ではなく、滅亡させるという宣言だ》

「ほう……」


突然の事で、その場の誰も言葉が出ない様子だ。


「他に要件は?」

《ない》

「そうか」

《確かに伝えた》

「うむ。彼をエントランスまで案内しなさい」

「はっ!」

「念のため、君たちもついてくれ」

「了解」


ここでも暴れたりせず、いたって普通に事は進んだ。

城門まで行くと、魔物は翼を生やし、南の方へ飛び去っていった。


それを無言で見送る。


……大変なことになった。


「そうか、魔王はまだ存在したか」


大騒ぎする気にもならないほどの、

巨大な絶望感に支配されている。


「これから、いかがいたしましょうか?」

「そうだな。方針としては、魔王の討伐に向けて動く必要がある」


当然だ。


人間側としても、滅ぼされるわけにはいかないからな。


「君たちや騎士団には、追って連絡をする。それまでは、いつも通りに任務をこなしてくれ。無論、今日の事は口外厳禁だ」

「了解致しました」






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